組織力<個人能力 なのか

2008年02月09日

アルセウの離脱の件は、問題点が早く剔抉できてよかった、という
声が多そうだが、そういう「むしろ後で問題になるよりも」的な
言い回しが逆に問題の深さ、危機意識の裏返しであろうな、と
思わずにはいられない。

今季の札幌においてどのポジションがより重要になるかという比較は
無意味で、どこも頭一つぶん劣っていると考えて臨むべきなのであるが
正直、アルセウが埋めるはずであったMFの攻撃の起点としての位置は
J1で戦う上で昨季から最も懸念されてきたポジションだった。
芳賀と大塚が必死になって走り回り、中盤のスペースを埋めて守り抜いた
のが勝利につながってきたわけだが、逆にDFが跳ね返したボールを
確保して攻撃に起点となる力は相対的に劣り、ひたすら相手の波状攻撃
を許す弱点だった。
そこを改良し新たな戦い方の幅を広げるための補強だったわけだから
アルセウがいなくなることはその戦い方が昨季から一歩も進歩できない
可能性がある、ということに等しい。
これで悲観的にならない方がおかしい、というくらいの大問題だろう。

先日、先週末にやっていたプレミアのリバプールvsサンダーランド
を見た。
ここしばらく絶不調で、全く勝てていないリバプールのパフォーマンス
は最悪。Fトーレスを初めとする優れたタレントたちだが、やることなすこと
裏目になり、それが悪循環を起こして前に攻めかかることが出来ない。
DFがバックパスでGKに戻すシーンが頻出し、ホームサポはブーイング
までおこす不穏さ。
サンダーランドは飛び抜けた選手はいないものの、全員が必死でプレスをかけ
リバプールをほぼ完全に抑え込む理想的な展開。アウェイで勝って降格圏から
脱出したいというモチベーションも高い。
リバプールはさっぱり得点の匂いもない。とはいえサンダーランドも
なかなかゴール前に迫るシーンはない。このままだと0完封、もしくは
ぽこんと一発サンダーランドが勝ち越しでウノゼロ?という雰囲気だった。

それが、終わってみれば3-0。リバプールの完勝。
勝因は、結局個人能力の差だった。

サンダーランドが最高のパフォーマンスを見せながら完敗したのは、
ボールポゼッションがほとんどできなかったからだ。雨の中で
リバプールの凡ミスは呆れるほどに多く、そこをついて攻め込める
シーンは多かったはずだが、あまりに中盤が非力で、攻撃が単発。
結果として完璧だった守備が個人技でこじ開けられると、リバプール
のポテンシャルが復活してしまった。

札幌は、何としてでもアルセウの穴を埋めなくてはならない。
去年までの選手もいる、マーカスもいる、とは思うが、ことが
攻撃面の起点の役割、と考えると、どう考えても厳しかろう。
中盤のシステムを何らかの形で根本的に変えて解決できる
のならばいいのだが、そこはあまり期待できないから。

全員の意識を団結させた組織力しか札幌の武器はない。
しかし、その組織力をあざ笑うような個の力の突破が上のカテゴリ
にはある。克服する道は最初から険しかった。
アルセウの離脱は、さらに辛苦の道となった。


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