少し疲労感

2007年07月13日

ううむ、さすがにちょっとこの落胆は個人的に大きいな。
各所では誉め称える声が大きくて、オイラもやぶさかではないが、
だからこそなおさら「逃した魚は大きかった」感が深い(汗)

2-0で先行しながら、逆に精神的に追い込まれる未熟さを
指摘する声もどこかで見たが、あいにくこれはずいぶんと
日本的な美学に近いものがあって、なかなか払拭しがたい。

関取も、下位の者が上位に挑むときにはどんな手でも使っていいが、
逆に上位の者は下位の者を真っ正面から受け止めなくてはならない。
横綱ともなれば、相手に頭を付けただけで、もしくは立ち会いに変化した
だけで「横綱らしくない」と非難を受けてしまう。

その心理の背景には逆に「下位の者が上位の尊厳を冒してはならない」
という暗黙の了解が表裏一体であるような気がする。
上位の者は正々堂々のポーズをとり、下位の者はそんな上位の者を立てる、
という暗黙の了解。社会の安定を優先し、上下関係を盤石のものにする。
(相撲の八百長が云々されやすいのも、この意識がどこかに潜んでいる
のを問題にしやすいのかもしれない)

先行して優位に立ったのに、逆に追い込まれるのは、この意識が
茶渋のように今の日本人の深層意識のどこかに残っているのかも
しれない。
その証拠に「心が折れる」という言い方をよく聞く。
「先行して得点して、相手の反撃する気力をなくせ」という応援の
しかたもよく聞く。でもそれって、本当にそうだろうか。
確かに時間制限の中で大量点を取って追いつく、というのはなかなか
現実味はないが、サッカーの強豪国はそういう発想を極力せず、
「5点取られたら6点取れ」という気持ちを作るのが上手いのでは
ないだろうか。

選手の表面の意識にはあるはずはないと信じるが、
それでもなお無意識の領域で「70分まで2-0。もう試合は
決まりなんだから、チェコはもうこれ以上先行した日本の『尊厳』
を冒さずにあっさりと分を守りな」という感覚が湧いたのではないか。
あたかも正々堂々と「胸を貸す」横綱に、幕内下位なら当然萎縮する
はずだ、という思いこみが湧くように。

だが、チェコは残り20分で、大真面目に勝利を奪い取ろうと
本気で勝ちを狙ってきた。それからの日本の「狼狽ぶり」は
あたかも「本気で金星を狙ってきた下位力士の攻めに、慌てて
うっちゃりをかけようとする横綱」の姿を思い浮かべた。

ヒエラルキーを冒す者への免疫が、日本人には無いのだなあ、
という事実をしみじみ思いながら、あの悲しいPK戦が眼前に展開した。
うっちゃりに失敗して砂かぶりに転がった横綱のぶさまな姿が重なった。
真のサッカー・プロパーなチェコの、各上も格下もない、勝利を
希求する姿勢に、どこかで階級意識が残っている日本社会の病弊を
連想した。

ほんっとうにバカバカしいレッドを最後の最後に喰らった征也を始め、
今回のU20の選手達は、大いにがんばってくれたが、最後の最後に
一勝悔やみかねないほどの苦痛を味わったはず。
その苦痛の根源を脱皮して、真の世界に比肩するサッカー選手になる
ことを、オイラは大真面目に期待する。

*ちゃんとお読みいただければわかっていただけると思いますが、
例えば相撲を揶揄したり八百長論議を煽ったりしているのでもないし
U20の選手の精神構造を「非難」しているのではありませんので
念のため。これはむしろ自分を含めた日本人共通の精神的病理の問題で
あろうと考えています。


この記事に対するコメント一覧

フラッ太

Re:少し疲労感

2007-07-14 09:28

 こんにちは。  大変興味深く読ませていただきました。  チェコ戦を見ていないので推測の域を出ないのですが、本気で追いつこうとするチェコを最初はいなしていたのでしょうけど、1点取られてかえって「慌てて」しまったのでは。  選手たちが「未熟」と言ってしまえばそれまでなのかもしれませんが、フル代表が結果として不甲斐なかったので、彼らの怖いモノ知らずの戦いぶりに「日本も捨てたもんじゃない」なんて自分に都合よい自信(あるいは勘違い?)を持ったのも事実です。  話は変わるのですが、拙のブログとリンクさせていただきたいのですがよろしいでしょうか?  長くなりました。失礼します。

FT

Re:少し疲労感

2007-07-14 21:15

コメント感謝です。 慌てだしたのは相手が長身FWに代えてきて 縦ポンサッカーをやり出してからですね。DFが ずるずる下がってしまったのが原因でした。 PKはほんのわずかの間に連続してとられたので、 このへんは文字通りに坂道を転がり落ちました。 いい薬になるでしょうか。 リンクの件は歓迎です。 好きこのんで波風を立てるウチですが、ご迷惑でなければ よろしくお願いいたします。

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