白旗を掲げて

2006年05月14日

それは雨が残る朝に出発した準備の一環でしかなかった。
きっと雨が残るに違いない。雨具が足りないオイラは、傘を差して
ゴル裏で立ちっぱなしも迷惑だろう、雨がひどかったら端の方で
応援するしかないから、椅子に敷くモノがあった方が良いな、と
思って、トートバッグに放り込んだのだった。

白いビニールシートを。
 
大谷地駅を出れば、目の醒めるような快晴に気分も上々。
厚着をしてきたせいで少々汗をかきながら競技場に入った。
ハルク・ホーガンのパーカを脱いでレプユニ姿になると、
涼しい風がすっと快感だった。
雨の用意は、すっかり脳裏にはなかった。
 
脚が痺れて、ノドも涸れて、それでも手拍子と歌だけは
続けたが、それも断末魔。ホイッスルが鳴って、悲惨な結果だけが
聖地と呼ばれ、オイラが先日「カムイミンタラ」と秘かに呼んだ、
厚別に残った。
 
ゴル裏に来た選手に、オイラの周辺はみなブーイングで迎えた。
ブーイングに厳しい見方をしばしば書いてきたオイラも、あの
ブーイングを否定することは出来ない。
そしてオイラは、バッグに押し込んであったビニールシートを
手にとって、両手で掲げた。
試合開始の時には、選手の健闘を祈ってタオルマフラーを掲げた
その同じ手に、真っ白いビニールシートを。
 
敗北。降伏。弔旗。死。
その象徴としての白旗として。
 
 
だが、オイラはやがて、恥じるだろう。
安易に降伏旗を掲げて、チームを否定したことに。
未来の勝利を手にするチームを讃える手に、敗北の象徴を持って
同じ選手に突きつけたことを。
 
しかし、同時に決めた。
この「白旗」は毎回持参する。
この旗を突きつけられるような戦いを選手ができないように、
オイラたちサポが支えなくてはならない。その「エッジ」ぎりぎり
であることを思い起こすために。
 
この白旗を、オイラの手が二度と掲げることがないように。


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