2010年10月09日
昭和59年12月に公開された映画(薬師丸ひろ子主演)を 友人2人と3人で 狸小路5丁目にあった東宝プラザで観たのだけど、その数ヶ月前に読んだ小説と 全く同じと言って良いトリックを使っている事に気付いた。
その時は 原田知世主演の「天国にいちばん近い島」との2本立てで、僕はこちらの方が観たかったのだけど、盗作の話題が盛り上がってしまい、結局観ないまま出てきてしまった。もったいない話だ。
そもそも 「Wの悲劇」というタイトルからして エラリークイーンの「Xの悲劇」や「Yの悲劇」のマネ というマイナスの印象しかなく、以来、僕の中では “夏樹静子=盗作”というイメージになってしまい、その作品を読む機会は無かった。
時は流れ、先日、田口ランディの「コンセント」「アンテナ」「モザイク」という三部作を単行本(当然古本)で買ってきて読んだのだけど、この本も 一時 盗作問題でずいぶん話題となった作品という事を知り、「Wの悲劇」に関しても 原作を読んで確認してみよう (まだ読んでいなかった) という気になり、読んでみた。 盗作された方は アーウィン・ショーの「夏服を着た女たち」という短編集の 最後に入っている「憂いを含んで、ほのかに甘く」という短編。 今、改めてネットで調べてみると、訳者の常盤新平は “盗作だ”という事で騒いだらしいが、夏樹(というより角川?)vs常盤では 力の差が大きすぎたのか、当時は黙殺されてしまったようだ。今なら ネット上であっという間に話題になるだろうけど、当時は どこの出版社や新聞社も 人気作家を敵に回したくなかったのかもしれない。 今回 改めて原作を読んでみて、原作の小説と映画では 相当ストーリーが違っている事を知った。 夏樹の小説を読んだだけでは、似ているなとは思っても 盗作とまでは思わなかったように思う。 この程度のアイデア拝借は 巷に溢れているもの。 夏樹の小説を 映画では劇中劇という形にしていたのだけど、夏樹作品を劇中劇までに短く削り込む作業の中で、偶然 アーウィン・ショーの作品に似てしまった というには酷似しすぎている。 もともと 夏樹作品の根に ショーの作品があったので そうなったのではないかと思うと、やはり 盗作疑惑は捨てられない。 ただ、映画の脚本を書いたのは 荒井晴彦なので、盗作したのは 荒井という可能性もある。 そこまで言い出したら、というより どちらにしても確認しようが無い話なのだけど。 いずれにしても、今度は 映画の方も見直してみないといけないな。 25年も前に観た映画なので、記憶が間違っているかもしれないし。 今回は光文社文庫版で読んだのだけど、巻末にエラリー・クイーン(フレデリック・ダネイ)の解説が掲載されています。 夏樹静子は当時からEQと懇意にしており、この作品の構想をEQに相談し、ヒントも貰い、タイトルに関しても事前に承諾を貰っていたそうです。 そうなると 話はずいぶんと違ってきますから、今回、この本を読んだことで 夏樹静子に対する評価が大きく変わりました。 今後、他の作品も読むかどうかは まだ判りませんが。 (2010.10.08 読了)
野 風
Re:『Wの悲劇』 夏樹静子
2010-10-09 21:57
昔(昭和)。夏樹作品をたくさん読みました。 『Wの悲劇』は劇中劇だった、それしか覚えっていません。
青空
Re:『Wの悲劇』 夏樹静子
2010-10-13 08:49
>野風さん 僕は夏樹作品を読んだ記憶が無くて、多分 これが最初の夏樹作品だと思います。 最初の出会いがこの映画だったので、悪いイメージしかなかったんですよね。 第一印象を覆すのに 26年掛かりました。