2010年09月28日
先日、ランダムウォーカーさんが 司馬遼太郎の事を書いていたのを思い出し、久しぶりに司馬作品が読みたくなって 買ってきました。 司馬作品は大作が多いのですが、今回は 上下巻2冊で終わる 『義経』にしました。
司馬遼太郎が 新旧様々な多くの資料を読み込み、彼なりに矛盾の無い物語や人間像をイメージした結果が この『義経』という作品なのでしょうが、紅顔の美少年・牛若丸から成長した 悲劇のヒーロー 義経という、一般的なイメージからは程遠い 義経です。 京の五条の橋の上~♪ と童謡にも歌われる 弁慶との丁々発止は無く、一の谷や 屋島、壇ノ浦の合戦の描き方も 予想を大きく裏切るもので、頼朝の追討により 都落ちして以降、奥州で果てるまでの経緯に関しては 全くといって良いほど 描かれていません。 静御前との恋愛のイメージも かなり違っていました。 司馬遼太郎は 頼朝と義経という異母兄弟の愛憎と確執、悲劇。平家から源氏、更に北条氏と権力が移っていく背景。伝統と雅を愛する公卿と 苦労して開墾した土地を守りたい武士の関係、価値観の相違など、義経ではなく この時代を描きたかったのでしょう。 この本で描かれているのは 軍事的には天才だが 政治的な感覚は全く欠けている 義経。 決して英雄伝ではありませんが、なかなか 面白かったです。 (2010.09.24 読了)