2010年05月04日
ご想像の通り、タイトルだけで購入しました。 いま28歳の著者が、平成14年、大学在学中に発表したデビュー作。 収録されているのは「ハニィ、空が灼けているよ。」「青空チェリー」「誓いじゃないけど僕は思った」 の3つの短篇。 表題作の「青空チェリー」は「女による女のためのR-18文学賞」読者賞受賞作だそうです。
「青空チェリー」 “だってあたし十八歳。発情期なんでございます。” と始まるプチエロ小説。 この展開に共感する子は どれくらいいるのかな。 レディスコミックが あれだけ流行っているのだから、面白い と言って読む子は多いだろうけど、あくまで小説の中の話なのであって、現実の世界でこの展開は 引くだろうね。 でも、ストレートな表現は 男が読んでも結構エロいし、面白い。 「ハニィ、空が灼けているよ。」 日本人の平和ボケが叫ばれて久しい昨今、危機感の無い庶民の姿が 妙にリアルで面白い。 現実世界にあって これだけの情報規制は不可能だろうけど、自分の身の回りに起きる小さな変化に気付かず、或いは 気付こうとせず、自分だけは大丈夫と思う 庶民の姿は決して笑えない。 そうした無関心な庶民に突きつけられる現実が、戦争で精神を病んだ同級生であり、電報で届く赤紙であるわけだが、こうした近未来小説的な展開は 好きだな。 ただ、それらを底辺に恋愛模様が描かれるのだけど、その三角関係は みな優しすぎて面白くない。 「誓いじゃないけど僕は思った」 中学生の時の片想いを 今でも引きずっている大学生の物語。 きちんと告白できなかった片想いって 結構引きずるものだ。ここまで引きずるとちょっと異常というかかなり執念深いのだけど、時間の経過に伴って 思い出は美化されていくし、自分の中の想いも純化されていくからなぁ。 という事で 彼の気持ちには理解できる部分も多々あるのだけど、どこかで片想いを精算しないといけない。その積み重ねで、みんな大人になって行くのだから。 草食系男子は共感できる小説ではないかな と思いました。 ところで、親本となる単行本には「青空チェリー」「ハニィ、空が灼けているよ。」「なけないこころ」の3作が収録されていて、文庫化されるに当たって大幅に加筆、改編されたそう。それによって格段に進化したとの事だが、親本の方も読んでみたいものだ。特に、同じテーマでストーリーから全て書き直したという「なけないこころ」は読んでみたいな。