『赤頭巾ちゃん気を付けて』  庄司 薫 

2009年11月23日

「されど~」が出たなら 次は「赤頭巾ちゃん~」だろう と予想したあなた、あなたは鋭い。鋭いけど、結構いい年令のおじさん(おばさん)です。
もう一度 読みたくなって 読み直しました。
昭和44年の芥川賞受賞作です。

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「赤頭巾ちゃん気を付けて」 「白鳥の歌なんか聞こえない」 「さよなら怪傑黒頭巾」 「ぼくの大好きな青髭」は 薫くんシリーズ4部作、或いは 色シリーズ4部作と呼ばれ、これが その第1作です。
高校生の頃に 赤、白、黒を文庫本で読んだのだけど、その後で 青の連載が始まり、文庫化されるのが待ちきれなくて 乏しい小遣いから 単行本を買った記憶があります。
従って、先の3冊は文庫で、青だけ単行本で並んでいます。




1968年に発生した東大紛争、あの安田講堂事件は1969年1月。その影響で1969年の東大入試は中止となった。
この小説は国立大学の入試願書受付の締め切りを翌日に控えた1969年2月の日曜日、灘高と並ぶ日本有数の進学校だった都立日比谷高校3年生、庄司薫くんの一日の物語です。

口語調の軽い文体で、薫くんの周囲で起こった様々な出来事、それらに対する思い、それらから連想した出来事や想い 等々が語られます。
幼馴染みの由美ちゃんのこと、兄貴の友人だった女医さんとのこと、日比谷高校の嫌ったらしい校風のこと、小林君を始めとする多くの友人達のこと、人生や社会のこと。

しかし、それは明るく健康的な 自己讃美・自己愛であったり、熱く暗い狂気のような 自己蔑視・自己嫌悪であったり、そういう風に大きくぶれる自分を 自己弁護してみたり、そうした自分を冷静に見つめ 自己分析してみたりします。

この日、薫くんが考えたことは、誰もが一度は考えた事があるんじゃないかと思える事ばかりです。
青臭いと言えば確かにそう、裕福な家庭のお坊ちゃんの妄想と言えば それも確かにそう。
でも、若い頃だけでなく 50歳を過ぎた今でも、決して楽な生活はしていないけれど、時々は考える事です。

この作品が発表された頃と時代は大きく変わったけれど、一人一人が考える事は それほど大きく変わっていないと思います。
そして、主人公の薫くんが 最後に抱いた想いは 多分 いつの時代でも変わらない想いだろうと思います。



post by aozora

17:26

本の話 コメント(2)

この記事に対するコメント一覧

雪雲

Re:『赤頭巾ちゃん気を付けて』  庄司 薫 

2009-11-23 20:10

同世代 乙 薫君は栗本の前は庄司だったよな

青空

Re:『赤頭巾ちゃん気を付けて』  庄司 薫 

2009-11-23 22:12

>雪雲さん 栗本薫の方が 先に亡くなってしまいましたね。 薫くんは 1950年生まれなので(多分。1951年の早生まれかもしれない)、今なら 59歳。 作者の庄司薫は......何をしているものやら......

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