沈まぬ太陽 ~ フィクションとノンフィクション

2009年11月03日

日本航空が社内報で 「沈まぬ太陽」を事実無根だとして非難しているそうです。

それに対して 日本航空機長組合は 日本航空の労務政策-考察「沈まぬ太陽」― と題するサイトを立ち上げ、反論を行なっています。



映画でも 最後に 「この作品はフィクションだ」 と 謳っていますが、誰が考えても モデルは日本航空なわけで、その中の大きな部分が実話に即しているため、それ以外のフィクションの部分も事実なのかも と 思わせてしまうところは 確かに問題です。
山崎豊子の場合、フィクションに実話を盛り込んでいくスタイルが多いようなのですが、この作品に限らず 様々な作品で問題となっているようです。

この作品では 御巣鷹山の事故(1985年8月)は実話です。恩地のモデルとなった 元労組委員長の 長期海外勤務(1960年代後半~1970年代前半)、事故後の会長室勤務、その後のアフリカ勤務、東大法学部卒、アカ(共産党員)というのも事実のようですが、事故後の遺族との関わり方などは 相当脚色されているようです。
航空会社と政治家の癒着に関しては 全日空のロッキード事件(1976年2月)がモデルなのかな と想像するのですが、多くの人が 日本航空にもありそうな話 だと思ってしまうでしょうね。


日本航空は この小説が連載された週刊新潮を 機内に置かなかったそうです。
過去に何度か映画化、TVドラマ化の話が出たようですが、いずれも実現せず、今回が初めての映画化。
しかし、日本航空は角川に 「名誉毀損の疑いがある」という警告文を送り、水面下で激しいバトルが繰り広げられているのだとか。
日本航空や それに関わる(主に自民党の)政治家の力の衰えから 映画化の流れを抑えきれなくなったというのは、あまりにも穿った見方 邪推でしょうか。



この作品で描かれた主人公は素敵です。
しかし、それはあくまでもこの映画の為に演出された主人公像です。

何が事実で、何が事実ではないのか。
どちらかに偏ることなく、中立な立場で具体的に検証したサイトが どこかにないでしょうか。

というより、空の安全の為に何を成すべきか、何を犠牲にせざるを得ないのかを、皆が真剣に考えないといけないのでしょうね。


post by aozora

20:19

映画 コメント(4)

この記事に対するコメント一覧

OWLS

Re:沈まぬ太陽 ~ フィクションとノンフィクション

2009-11-03 23:12

原作が話題になった頃、航空雑誌のコラムに「よく日航は山崎さんを訴えないものだ」と書いていた人がいました。 活字ならほっとくけど映像ならヤバいという感覚に暗澹たるものを感じます。 本題とは関係ない感想になりました。 明日見るつもりです。

青空

Re:沈まぬ太陽 ~ フィクションとノンフィクション

2009-11-04 00:48

>OWLSさん  原作の時も いろいろあったようですよ。 それだけ事実に近い事を書いているのかもしれないですが、同じ事でも見方、捉え方によって評価は全く変わってしまうので、その辺は難しいですよね。 いずれにしても一見の価値はある作品だと思います。

観た人

Re:沈まぬ太陽 ~ フィクションとノンフィクション

2009-11-23 15:30

正直、面白くありませんでした(誉めている人が多いのは何故?どっかが組織的に動いていると考えるのは邪推でしょうか)。 何故、面白くなかったか。それは、単なる善悪二元論で描かれていたからです。それも悪役のチープさは悲しくなるほどで、必ず悪事を企む場所は料亭(笑)。「越前屋、お主も悪よのう」と言うのではないかと思った程です。 誉めそやす人は「ほとんど実話」なる言い方で誉めていますが「ほとんど」ならフィクションでしょう(そしてエンドロールでもフィクションと出ている)。相手の反論を回避しつつ、印象操作を行うやり口で、(JALの肩もってもしょうがないけど)私は不愉快でしたね。 社会制度の問題を単なる善悪二元論で矮小化し、さらにそれを、特定の個人の人格の問題由来の問題であるかのように語るやり口。これは、本来の左翼思想とは全く正反対のものです。 もし社会制度の問題点を描くのなら、大変労力はかかりますが、こつこつと丹念に事実のみを追ったドキュメンタリーを描くべきです。 なお、原作者山崎なる人物、ウィッキーによると盗作騒ぎを幾度と無く起こしている人物とか。 「ほとんど実話(笑)の山崎豊子伝」が書かれたら、山崎氏はどうするつもりなのでしょうか(やり返されないと高をくくっている?)

青空

Re:沈まぬ太陽 ~ フィクションとノンフィクション

2009-11-23 16:49

>観た人さん 全国の少なくない共産党議員さんのHPでこの映画を推奨していますよね (笑)。 仰るとおり 主人公(渡辺謙)や 会社と対立する労働組合を美化し過ぎている点、全てを善悪二元論に矮小化する点は問題だと思います。 しかし、所詮 フィクションの小説であり 映画ですから、問題点をステレオタイプに単純化しないと面白いと思ってくれない人が多い訳で、そういうものだと割り切って、事実はどこにあるのかを考えながら 観るしかないと思います。 むしろ 問題は 日常のニュースでも同じ傾向があるという事で、視聴者に受けるような切り口で報道するという事ではないでしょうか。 新聞やテレビが報道する内容が 全て公正中立で正しいわけではないです。自分が読んでいる新聞、観ているニュース番組の立ち位置くらいは知っておきたい と思っています。

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