2009年10月03日
昼下がりの連続ドラマを観ているような、岩井志麻子らしくない小説。 初出は 婦人公論での連載という事を知って、半分納得。 それにしても 岩井志麻子なのだから、もう少し違った語り口はなかったものか。
大正ロマン漂う東京、一皮剥けば まだまだ旧い時代の東京を舞台に、陰と陽、外見と頭脳、妻と妾、対照的な2人の女性の生き方を、旧い世界にしばられる親や舅、姑と、新しい価値観で生きていこうとする若者の対比を交えながら、鮮やかに描いている。 優柔不断なマザコン男を巡り 対決する2人の女。天真爛漫で美しい明子の転落、優秀ながら屈折した性格の清子の開き直りと変身。ストーリーとしては有りがちなパターンではあるけれど、2つの対立軸が微妙な毒や皮肉を含んで様々に絡み合い、存外に面白い。この辺は岩井志麻子らしいか。結末はさっぱりと潔く、後味も悪くない。 外見にコンプレックスを持っているがゆえに勉学に励んだ清子。 しかし、実は目鼻立ちは整っていて、化粧をして着飾れば結構な美人だった、という設定は女性向きのシンデレラストーリー。 2人の主人公が女学生だった頃にあこがれた“自由恋愛”。気が付けば自由恋愛という言葉は古くなり、若い女性たちは“イージー恋愛”に憧れるようになっている。 時代が変わる早さは、案外と昔も今もそれほど変わらないのかもしれないな。