『すばらしい新世界』  池澤夏樹

2009年06月11日

池澤夏樹の娘が TV番組に出て ずいぶん景気の良い話をしているものだから、池澤夏樹ってそんなにセレブだったっけ と思いながら買ってきた。
池澤夏樹は 「スティルライフ」と 「母なる自然のおっぱい」くらいしか読んだ事がなくて (「星の王子さま」の翻訳も読んだな)、それもずいぶん前の事だから 印象は薄くなっている。


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今回 この本を選んだのは「風力発電」の話だったから。

以前から “個人住宅用の安価な小型風力発電機があれば良いのに” と思っていて、風力発電のような不安定な電源でも ロードヒーティングなら問題無いわけで、そうすると 吹雪の日はどんどん雪が融けるという ありがたいものが出来上がるのではないかと。
風の無い日に しんしんと降る雪には無力だけど、風のある日に融かせば良い。

1997年まで 新日本技研㈱ (コンサドーレの株主だった)という会社があり、そこが そんな風力発電機を作っていたような記憶がある。東橋のところにあったパチンコ店(屋上にライオンがいた店)の周囲で回っていた風車も この会社のものだったような記憶があるのだが(記憶だけで裏付けはなし)、この会社も この店も 今は無くなってしまった。


この小説は 
大手メーカーに勤務する技術者が、NGOで 環境問題に取り組む妻が持ち込んできた話が縁で、チベットの奥地の ナムリンという辺境の地に、灌漑用の小型風力発電機を設置するというお話。
物を作る喜び、ボランティアが抱える課題、ODAの問題、民族問題、宗教問題など、たくさんの問題が盛りだくさんに詰め込まれている。

せっかく風力発電機を設置しても 故障したときに修理できなければ無駄になる、という理由で、現地の若者に風力発電機の原理や修理方法を教える下り。
陸上自衛隊が イラク支援で設置した浄水器が 壊れて使えなくなっているというニュースを思い出した。
イラクだけでなく、世界中のあちこちで同じような問題が起きているらしいが、困ったものだ。


『すばらしい新世界』という書名。
オルダス・ハクスリーが 1932年に発表した小説と同じ。この小説は ジョージ・オーウェルの 『1984年』とともに アンチ・ユートピア小説の傑作として挙げられることが多いらしい。
『1984年』といえば 村上春樹の新刊 『1Q84』。
池澤の『すばらしき新世界』には オウム真理教が出てくるが、春樹の『1Q84』にも オウムをモデルにした新宗教が出てくる。
内容は全く異なるし、こんなのは単なる偶然でしかないのだけど、たまたま 『すばらしき~』を読んでいる途中で 『1Q84』を読んだものだから、ちょっと気になって書いてみた。


なんだか本の内容とは全く関係ない事ばかり書いたけど、池澤夏樹の文章はとても読みやすかった。理系の作家という印象。実際、そうなのだけど。
全体としては なんとなくまとまりの無い 楽観的なストーリー展開なのだけど、主人公の誠実で、ある意味潔い姿勢は 好感が持てる。
家族の温かさもあり、ほのぼのとした読後感でした。

もう何冊か 池澤作品を読んでみようと思いました。




post by aozora

00:34

本の話 コメント(2)

この記事に対するコメント一覧

deoh

Re:『すばらしい新世界』  池澤夏樹

2009-06-11 17:46

aozoraさん、こんにちは! >>内容は全く異なるし、こんなのは単なる偶然でしかないのだけど、~ 単なる偶然かもしれませんが、池澤 夏樹さんがデビュー小説「夏の朝の成層圏」を発表したのが1984年だそうです。 そのデビュー作しか読んだことのない私も、もう何冊か池澤作品を読んでみようと思いました^^ ママチャリレース頑張ってくださいねー!

青空

Re:『すばらしい新世界』  池澤夏樹

2009-06-11 23:19

>deoh さん  池澤夏樹の小説デビューは 1984年、そうですか。 「スティルライフ」は 村上春樹作品に雰囲気が似ているという話も聞くので、僕も 近いうちに この辺はもう一度読んでみようと思っています。 春樹と夏樹、名前も似ているし、案外と縁があるのかもしれませんね。 ママチャリレース、頑張りますよ。 良かったら、ご一緒にどうですか?

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