2009年05月18日
昔、東京キッドブラザース というミュージカル劇団があった。 東由多加とか 下田逸郎といっても 今の若い人は知らないだろうけど、30数年前には NYのオフ・ブロードウェイで公演を行なうなど、一世を風靡した劇団だった。 柴田恭平や三浦浩一などは この劇団の出身。 この本を書いた柳美里もこの劇団員で、主宰者 東のパートナーだった。 柳と東の関係は 『命』 4部作に詳しいのだけど、 その関係に対しては いろいろと批判や意見があると思う。 相当普通じゃないから。 そんな 柳美里と東由多加との約束。 ―― 二人で 生まれてくる子どもに 絵本を残そう。 しかし、約束を果たすことなく、東は逝ってしまった。 最愛の人を失った 深い喪失感と、二人の愛の証である 幼い息子に対する希望。 その狭間で揺れ動いた柳が やっと約束を果したのが この絵本
東の死後、柳がこの本を書くまでにかかった時間が 6年間。 それは柳が 東の死を受け入れることに要した時間。 最初からそういう背景を知りつつ読んでいるので、僕なりに感じるところがあったのだけど、そういう事情を知らない人が読んでも、伝わってくるものが この本にはあると思う。
「おまえのママは、いつも悲しがっている。悲しがったら、どうなると思う?ポトッポトッ、やみがしたたりおちる。ポトッポトッ、やみがふえていく。さて、どうなると思う? うちがわから、やみにとかされるんだよ」 黒い蜘蛛は お母さんの心に 巣食っている。 ケンタロウくんは 寂しい。だけど、寂しいのは ケンタロウが生まれたのと入れ替わりに 大事な人が亡くなったからではない。お母さんが いつまでもその人の事を思って 悲しがっているから。 この絵本は ケンタロウくんが生まれてから 6歳になるまでの 冒険と成長のお話し。 ケンタロウくんが おじいさんがいるという月を見上げ、健気に頑張っている姿を見て、いつかお母さんの心にも 希望の灯がともる。 コイヌマユキのイラストが優しいです。
ドールズママ
Re:『月へのぼったケンタロウくん』 柳美里 (ユウ ミリ)
2009-05-19 23:38
青空さん、こんばんは。 コメントは久しぶりですがいつもお邪魔していました"^_^" 東京キッドブラザース に柴田恭平や三浦浩一がいたのは知っていましたが東由多加とか 下田逸郎は知りませんでした。 そして、『命』を買って読んでいたのでこの『月へのぼったケンタロウくん』はちょっと興味深いです! 『命』は私にとっては衝撃的な内容でした(*_*; 表紙、あたたかい感じがしますね(^_-)-☆
青空
Re:『月へのぼったケンタロウくん』 柳美里 (ユウ ミリ)
2009-05-23 10:09
>ドールズママさん お久しぶりです。 下田逸郎はシンガーソングラーターで、「踊り子」だとか「セクシィ」などの曲があります。独特の雰囲気を持っている人で、キッドの音楽監督をしていました。 『命』のシリーズはなかなか強烈ですよね。あれが小説ではなく、現実に即したものだというのがショックです。 この本は そうしたものを癒してくれる気がします。