2009年03月05日
映画『おくりびと』を観た後で、文春文庫で読みました。 第1章 みぞれの季節 第2章 人の死いろいろ 第3章 ひかりといのち 『納棺夫日記』を著して の 4章からなっています。 第1章は、著者が思いがけず納棺の仕事に携わるようになり、様々な死、遺体と接する中で、周囲の反対に遭ったり蔑まれたり、大切な人に認められる事で納棺という仕事に誇りを持てたりと、著者が経験した様々なエピソードが語られ、映画のストーリーにかなり近い内容です。 第2章では、様々な遺体を扱う中で、死の向こうにある「ひかり」を感じ、次第に宗教に傾倒していく様が描かれます。 第3章は、仏教、特に親鸞を通して死を考える内容です。親鸞や宮沢賢治を中心に多くの宗教者や科学者の言葉が引用されつつ語られますが、主題となるのは絶対的な「ひかり」で、多分に宗教的、哲学的な内容です。 “『納棺夫日記』を著して”は、最初に『納棺夫日記』を出版した後の後日談ですが、第3章に続く内容です。 納棺夫(師)は生と死の間に立ち、その二つの間にある門を守る人。 映画『おくりびと』は 納棺師を通して 生を描きましたが、この『納棺夫日記』は 反対に死を扱っています。 同じ仕事を扱いながら、そこに流れるテーマ、目指すところは正反対でした。 本を読むタイミングというのはあって、同じ本を読んでも すんなり共感できたり、思わず反発したり、その時の環境や心理状態、体調などによって、感じ方は 様々です。 この本は かなり深いテーマを扱っていて、仏教用語が多く使われていますが、文章自体は平易で分かりやすく、共感できる部分、納得できる部分、考えさせられる部分など多々あり、それなりに面白く読める本です。 しかし、生に価値を見出し、現世利益を求める 俗人の僕にとって、開幕直前で なんとなく気分が高揚している今は、残念ながら この本を読むタイミングでは無かったようです。