『警官の血』  佐々木譲

2009年01月06日

正月に本棚を整理していたら 思いがけず佐々木譲の本があった。
『鉄騎兵、跳んだ』の文庫本。
しげの秀一の漫画 『バリバリ伝説』 が大好きで、その頃に泉優二などのバイク小説もずいぶん読んだけど、その流れの中で読んでいたのだ。
改めて調べてみたら、これが彼のデビュー作で、文庫本の発行は 86年。
佐々木譲との出会いは もう 20年程も前だっだ。

再会したのは 昨年で、野風さんの紹介で読んだ 道警シリーズ。
そして、このミス20周年で13位にランクインした 『エトロフ発緊急電』。
最後に読んだのが この 『警官の血』。
最終戦の時にお借りし、単行本の上下巻、数日で一気に読み終えた。


テレビ朝日でドラマ化 されます。



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 以下、若干ネタバレがあります。    



警察官となった親子3代の物語。
戦後の混乱期を生き抜くために駐在所の警官となった 安城清二。身近で発生した2つの殺人事件に疑念を抱いた清二は、駐在所に隣接する五重塔が火災を起こした夜に 跨線橋から転落死する。
清二の息子・民雄も 父親と同じ警官の道を選ぶが、学生運動が盛んだった北大に 公安から潜入捜査官として送り込まれ、やがて地元の駐在となって父親の死の真相に気付いた時に 凶弾に倒れる。
三代目・和也も また警官となるが、遊軍刑事となった彼に与えられた任務とは ・・・・・


戦後の混乱期から現代まで 3代続いた警官の家系。それを貫くのは 初代・清二の死の真相。

本音と建前、表と裏、光と影、いろいろに表現されるであろう 善良な警官として生きる事と 汚れた現実との間で 折り合いを付ける事の難しさ。
清二の死の真相は早い段階で推測できてしまうから ミステリーとは言えないかもしれないが、時代のうねりや 警察組織といった大きな流れの中で翻弄される彼ら3人の生き様が、いくつものエピソードを交えながらも 無駄なところ無く 鮮やかに描かれる。  
どんでん返しなどは無い。ラストは賛否が分かれるかもしれないが、あのラストだからこそ よりリアルさが伝わってくると思う。
読み応えがあり、とても面白い作品です。







「いいか、すべて罪は相対的なものだ。」
「これまでも、いくつもの事件がそのように秤にかけられて処理されてきたようにな」


このセリフが全てです。



post by aozora

23:01

コメント(7)

この記事に対するコメント一覧

miho

Re:『警官の血』  佐々木譲

2009-01-06 23:22

読みました!(自分のブログにも書きました)おもしろかったです。ドラマも楽しみにしています。北大の中央ローンでロケをやったそうですが、土日だったため見れませんでした。今は「うたう警官」を読んでいます。次は、「笑う警官」を。これ、秋に映画化されるようですね。

青空@ジャストフィフティ

Re:『警官の血』  佐々木譲

2009-01-07 00:27

>mihoさん  面白かったですね。 テレビドラマはどうなるのでしょう? 楽しみです。 ところで、『うたう警官』と『笑う警官』は同じ本ですよ。 文庫化される時に書名が変えられました。紛らわしいですね。

ブラコン2号

Re:『警官の血』  佐々木譲

2009-01-07 09:16

青空さんもバリバリ伝説ファンですか!!! ←そこに食いつくか? あたしも大好きでリアルタイムで読んでいた。 泉優二も読んでた。…ほとんど忘れちゃったけど、今検索してみて「マン島に死す」「ラストラップ」「チャンピオン・ライダー」は確実にタイトルに記憶が…でも、きっと他のも読んでるな~。 因みにもちろん片岡義男もたっくさん読んだ(笑)。 「幸せは白いTシャツ」が好きだったような…と思って、また検索したら「湾岸道路」がとても印象に残ってる。珍しく内容も覚えてる。ということは「湾岸道路」が好きだったのかも。 …長々と失礼しました。

miho

Re:『警官の血』  佐々木譲

2009-01-07 19:29

青空さん 情報ありがとうございます。全然知りませんでした(笑)「うたう…」と「笑う…」は同じでしたか。図書館に予約していたので、ネットでキャンセルしました。

野風

Re:『警官の血』  佐々木譲

2009-01-07 19:51

吉岡秀隆の北大生役のロケ見たかったですね。 三代目和也(伊藤英明)を振って、加賀谷(佐藤浩市) にハシル永見由香(栗山千明)の三角関係が楽しみ逸脱しますが。小説の中ではそれほど和也の落胆振りはなく、由香が悪女として画かれていない。映像ではどう表現されるのか。 年末に発売初日の道警シリーズ第三弾『警官の紋章』を買いました、紀伊国屋の先週のベストセーラ8位です、7位のオバマ演説集も買っていました。火坂雅志の『天地人』を買うつもりが藤沢周平の『密謀』を買いました、おなじ直江兼告続の物語なのですが。 『警官の紋章』を読むと第一弾『笑う警官』は予告編だったような気がする。

青空

Re:『警官の血』  佐々木譲

2009-01-07 20:31

>ブラコンさん   はい、バリ伝大好きで、今も コミック全巻 持っています。  読み始めると最後まで読まないと気が済まなくなるので、段ボールに入れて 車庫にしまってあります。   秀吉のカタナを追い続ける GUNBOY、熱かったです。  「湾岸道路」は映画も好きでした。樋口可奈子が素敵に可愛かったな。   >miho さん  僕も同じような失敗を何度もしていますから (笑)   >野風さん   ドラマの配役、江口洋介は ? ですが、他は割と僕のイメージに近いです。  3代目和也の物語が メインになりそうな気がしますね。  『警官の紋章』  これも面白そうですね。

青空

Re:『警官の血』  佐々木譲

2009-02-08 16:48

>miho さん  こちらにお返事します。 昨日 Mamma Mia! を観て帰宅後、このTVドラマを観ました。 さすがに無理がありましたね。本を読んでいない人がどれくらい理解できるかな と ちょっと心配になりました。小説では最後まで伏せられていた犯人が出てきてしまいましたし、今日の後編でどのようにまとめるのか、別な意味で楽しみにしたいと思います。

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