2008年11月04日
天下統一を目前にした豊臣秀吉が、関東の雄、北条氏の小田原城を攻めた際の、その支城である成田氏の忍城(オシジョウ)を巡る攻防戦。 攻め手は5万の大軍を率いる石田冶部少輔光成、守るは足軽・百姓合わせてわずか3000人を率いる城代・成田長親。 光成は水攻めを試みるが、失敗。 結局、小田原城が落ちても忍城は落ちず、自ら開城する。 歴史小説はこうした史実を踏まえて、様々な物語を紡いでいくものであり、そこに著者の想像力が働く。
和田竜著 『のぼうの城』 野風さんから借りて読みました。 のぼうは「木偶の坊」ののぼうで、それに敬称をつけただけ。忍城の城代、成田長親の愛称、というより蔑称なのだが、そのように城下の民からも小馬鹿にされていた長親が、どうやって城を守ったか。 全体にマンガチックなライトノベルという雰囲気で、いずれのエピソードもヴィジュアル的に 今風に描かれ、登場人物も分かりやすく、とても面白く読みやすいのだけど、如何せん 長親が皆の信頼を得ていく過程が描ききれておらず、前半と後半の差に違和感を感じ、正直物足りなかった。
風野真知雄著 『水の城 ~いまだ落城せず』 同じ忍城攻防戦を描いた作品で、本屋さんを探して買ってきて読みました。 初めて読んだ作家なのだけど、歴史小説ではベテラン作家らしい。さすがベテラン、読みごたえがある。 ここで描かれている長親も甲斐姫から「うすのろ爺い」と呼ばれるような、どこといって際立ったところのない威厳のない男であるが、なぜ城代となり、どうやって信頼を勝ち得て、どうやって皆を纏めていったのかが丁寧に描かれていて素直に納得できる。 水攻めの描写も細かいし、44歳の長親と17歳の甲斐姫との関係も、こちらの方がアリだな。 歴史小説をあまり読まない人、そもそも本をあまり読まない人にも 『のぼうの城』 は お薦めです。とにかく面白く 読みやすいです。 『水の城』 にも軽い雰囲気が漂っていますが、これは主人公である成田長親の人柄によるところも大きいと思います。きちんとした歴史小説で、これはこれでとても面白いです。 僕としては 『水の城』 の方が面白かったかな。