2007年10月21日
お待ちかね 村上春樹の新刊です 今回は 「走ること」 をテーマにした エッセイです 著者は エッセイというよりは メモワール (個人史) だと書いていますが 何ごとによらず、他人に勝とうが負けようが、そんなに気にならない。それよりは、自分自身の設定した基準をクリアできるかできないか ー そちらの方により関心が向く。そういう意味で長距離走は、僕のメンタリティーにぴたりとはまるスポーツだった。 (21ページ) 僕はもちろんたいしたランナーではない。走り手としてはきわめて平凡な(中略)レベルだ。しかしそれはまったく重要な問題ではない。昨日の自分をわずかにでも乗り越えていくこと、それがより重要なのだ。 (23ページ) と書く著者が 自分と 走ること 小説を書くこと との関係について 本音で 語っています 不健康な小説でも それを書くためには 健康な身体が必要だ そのために 著者は 走り始め やがて 酷暑のアテネーマラトン間を ニューヨークシティマラソンを サロマ湖100キロウルトラマラソンを 村上国際トライアスロン大会を 走ります トレーニングを積み重ねるたびに 成長が実感できた 若いころ しかし 50代も半ばを過ぎると 思うように走れなくなり 嫌でも 「老い」 を感じてしまう 著者の 「老い」との戦い方 付き合い方の 歴史でもあるな 僕自身について語るなら、僕は小説を書くことについての多くを、道路を毎朝走ることから学んできた。自然に、フィジカルに、そして実務的に。 (113ページ) 結局のところ、僕らにとってもっとも大事なものごとは、ほとんどの場合、目には見えない (しかし心では感じられる) 何かなのだ。そして本当に価値のあるものごとは往々にして、効率の悪い営為を通してしか獲得できないものなのだ。 (231ページ) 誰かと比べて 誰かに勝つことが大事なのではない 自分をきちんとコントロールし 自分に勝つことが大切なんだ こうした考え方 方向性は 著者の小説の底辺に一貫して流れているものですよね 僕は 様々な誘惑に負け 欲望に流され続ける毎日を送っているけど こういった 著者のストイックな姿勢 メンタリティには 共感できます だからこそ 村上春樹 の小説が好きなのでしょうけど 当然ながら 文章も 言い回しも 比喩の使い方も 村上春樹です 小説ではないけれど やっぱりハルキワールド 楽しく 気持ちよく 読み終えました 僕も もう一度 僕も走ろうかな と思います