『ミヤマ物語 1~3』  あさのあつこ

2017年08月22日

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 第1部 二つの世界 二人の少年 
 第2部 結界の森へ 
 第3部 偽りの支配者


ミヤマは 深山。
緑の深い美しい山も、その懐には深い闇を抱いている。

舞台は、深い深い山奥にある小さな村、雲濡 (うんぬ) と 更にその奥にある異世界、ウンヌ。
主人公は、いじめられて不登校となり、家庭にも居場所を見つけられない小学生、透流 (トオル) と、ウンヌの世界で最下層の身分に生まれ、日々の生活にも事欠き喘ぐ少年、ハギ。
昼の世界と夜の世界、二つの世界で暮らす 2人の少年の 冒険と成長の物語です。

イジメや格差社会という現代的なテーマも織り込みつつ、基底にあるのは 自分を、仲間を信じて困難に立ち向かう勇気と、友を想う友情、親が子を、子が親を想う愛情です。

今いるここは自分のいるべき場所ではない と思い、ここではないどこかへ逃げ出したい という気持ちは 多くの人が一度は感じたことがあるはず。
しかし、どこかへ逃げても そこは決してユートピアではない。この作品でも、イジメから逃げ出した透流がたどり着いたのは 厳しい格差社会のウンヌでした。

生きて戦ってこそ、未来は開ける。
自分を変える為に、自分が住む世界を変える為に、透流とハギが手を取り合って困難に立ち向かい 戦う姿からは、子供たちに向けた作者のメッセージが ストレートに ビシビシと伝わって来ます。

もう少し深く掘り下げても良いのでは、と感じる部分もあったけれど、読みやすい文章で テンポよく進む展開は スピード感があり、小学生向けとしては これで良かったのではないでしょうか。

「バッテリー」 の あさのあつこが描くファンタジー作品。
ファンタジーを書いても あさのあつこは あさのあつこでした。





post by aozora

21:21

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