2017年07月11日
家内は 人が大勢亡くなる映画は観たくない というので、先日のメンズデーに 札幌駅の上で 一人で観て来ました。17:30という微妙な上映開始時間もあり、4番スクリーンは 20人弱という寂しさでした。 第二次世界大戦末期の沖縄、アメリカ軍が首里へ侵攻する際に最大の難関となった前田高地での激戦が舞台です。 沖縄本島南部の高台が激戦地となった事は知っていましたが、ハクソー・リッジという地名は知らず、映画を観るまで沖縄戦が舞台だとは気が付きませんでした。 当時、浦添城址一帯の丘陵地は、日本軍は 「前田高地」 と呼び、米軍の攻撃正面となる北側の険しい断崖は 米軍から 「Hacksaw Ridge (弓鋸のような尾根)」 と呼ばれていたそうです。日本軍は その頂上まで登ってきた米軍兵を待ち構えて猛烈な攻撃を浴びせる戦術をとった為、米軍はなかなか攻め落とせず、退却する際には 多くの負傷兵が取り残されました。 その負傷兵を、自らの命を顧みずに救出したのが デズモント・T・ドスで、この映画は彼の活躍を描いています。 以下、長文、ネタバレあります。
彼は セブンスデー・アドベンチスト教会の熱心な信者で、信仰上の理由から 一切の武器を持たず、戦うことを拒否するのですが、周囲や友人が国の為に戦っているのに 自分は何もしないという事に我慢できず、家族や周囲の反対を押し切って、人を助けるために 衛生兵として志願します。 衛生兵であっても 武器の取り扱いを含めて一通りの訓練を受けないといけないのですが、彼はその訓練さえも拒否する為、周囲からは いじめの様な扱いを受け、上官からは 強く退役を勧められます。 戦場ではお互いに命を預け合う為、一人のミスが全員の死に繋がりかねない訳で、彼が配属された小隊の同僚が、足手まといになりそうな彼と一緒に戦場へ行きたくないという気持ちはよく理解できます。 その後、紆余曲折があって彼は衛生兵として従軍する事が出来るようになるのですが、当時の日本軍ではありえない判断でしょう。 ここに米軍と日本軍の大きな差があるように感じました。 ここまでが前段。後段ではハクソー・リッジでの厳しい戦いが描かれます。 ハクソー・リッジ (前田高地) における日米両軍の戦闘は実に激しく悲惨なものだったようです。 当然ながら戦死者は多く、この映画でも、爆弾に吹き飛ばされてバラバラになった身体、蛆が湧いたり鼠に齧られる死体、飛び出した臓物など、リアルを追求するためなのでしょうけれど かなりハードでグロテスクな映像が続き、ちょっとキツイです。家内は観なくて正解だったと思います。 この作品では直接描かれていませんが、浦添村では 住民の 44.6%、4112名が戦死、その中でも前田地区は戦死率 58.8%という高さで、多くの民間人が犠牲となりました。沖縄でも有数の激戦地だったという事が容易に想像できます。このような戦闘が沖縄の各地で行われていたという事実は 決して忘れてはいけません。 そうした中で彼は、まだ意識の有る兵士を捜しては 一人、また一人と 後方へ運び、断崖の下へと降ろします。 暗闇の中、敵である日本軍兵士の姿や攻撃に怯えながら、「神様、あと一人助けさせてください」 と祈りながら孤軍奮闘する彼の姿は感動的であり、圧倒され、手に汗を握りながら応援したくなります。 第二次世界大戦では 日本とアメリカは敵同士であり、この映画では 当然ながら日本軍が敵として描かれているのですが、このような姿の前には敵も味方も関係ない。 実際、彼は 75名の兵士を救出したそうなのですが、その中には 2名の日本人兵士もいたそうです。人を助けるために衛生兵を志願したという 彼の信念の証ですね。 「世界一の臆病者が、英雄になった理由とは――」 というのがキャッチコピーです。 「戦闘に勝利するためには スキルだけでは足りない。そこには ラッキーが必要だ」 と言われます。 彼の強い信念と無私の行動が ラッキーを呼び寄せ、同僚からの信頼を得ました。 「信念を曲げたら生きていけない、信念を曲げたら僕が僕でなくなる。」 まさしく己の信仰を、信念を貫いた人でした。 彼は、沖縄戦の前にはグアム島やレイテ島でも活躍したそうで、戦後、良心的兵役拒否者として初めて米軍最高位の名誉勲章(メダル・オブ・オナー)を受賞しています。 しかし、戦争中の怪我や病気が原因で身体に重い障害が残り、残された人生は決して恵まれたものではなかったようです。 戦う国の間に勝ち負けはあっても、戦闘に参加させられた国民に勝者はいない。 やはり戦争は、決して繰り返してはいけない狂気だと思います。
ひぐまさん
Re:【映画】 ハクソー・リッジ
2017-07-12 10:05
もう2回見ましたwww。つまらん映画製作にダボハゼのようにカネを出すKノ(札幌のシアターキNとは無関係)の配給にしては非常によく出来た作品だったと思います。 戦闘シーンについてメル・ギブソン監督はよくリサーチしていましたね。実際の沖縄戦でも最後は両軍入り乱れてまさに肉弾戦の様相だったとか。CGだとわかっていても女子供には見せられないですよねwww。ただ、実話か創作かはわかりませんが、最後に日本軍が米軍をだまし討ちにするような描写がありましたね。あれはどうなんだろうと思います。 個熊的には主演のアンドリュー・ガーフィールドはもちろんなんですが、親父さんを演じたヒューゴ・ウィーヴィングも素晴らしかったと思います。ああいった非戦場のシーンを丁寧にかつ繊細に描いていたからこそ芯のしっかりした物語として成立したのだろうなと思います。 夏休みは子供向けの作品ばかりでちょっと映画も休憩気味なんですが、9月の「ダンケルク」が楽しみですね(^^;;;
青空
Re:【映画】 ハクソー・リッジ
2017-07-12 22:14
>ひぐまさん アンドリュー・ガーフィールドには デズモンド・ドスの面影もあり、ヒューゴ・ウィーヴィングと共に良かったですね。 おっしゃる通り、前段で衛生兵となるまでの過程をきちんと描いてこその後段で、彼の信念がストレートに伝わって来ました。良い映画だったと思います。 日本軍の描き方として気になったのは、多分 日本兵はもっと痩せて全身ボロボロだっただろうという事。あのだまし討ちのシーンもそうですが、切腹のシーンも賛否が分かれるでしょう。 こういう映画は、観た後で咀嚼して理解するまでに時間が掛かります。