2016年04月20日
『何者』 朝井リョウ 第148回直木賞受賞作で、今年秋に佐藤健や有村架純らの主演で映画化されます。 巷は 就職活動シーズンの真っ盛りです。 この本に出てくるのは 本当にどこにでもいるような就職活動中の若者で、SNSを小道具に 彼らの日常を等身大に描くことによって、誰もが持っている 心の闇と醜さ、本音と建前、二面性、アイデンティティの確立に悩む姿 を上手く表現できていると思います。 「何者」 というタイトルも、なかなか含むものがあって 良いですね。 ただ、そこら中に溢れているストーリーで、エンターテインメント性はありません。 最終的には そこそこ面白かったけれど、文章の読みにくさもあって なかなか面白さが伝わって来ず、読み終えるのに いつもの倍以上の時間がかかりました。 SNS の代表のように Twitterが登場しますが、既に古びてきた印象は否めません。この辺は難しいところです。 さて、そうやって苦労して苦労して、やっと就職した会社がブラック企業だったとしたら・・・。
『ちょっと今から仕事やめてくる』 北川恵海 第21回電撃小説大賞 “メディアワークス文庫賞” 受賞作。 簡単に読めるライトノベルです。 やっと就職した会社は 典型的なブラック企業。心身共に衰弱しきった僕は、無意識に線路に飛び込もうしたところを 同級生を名乗る男に助けられた。彼はいったい何者で、何故助けてくれたのか? 実は 僕も最初に就職した会社は、一部上場企業の北海道販社だったのですが、殆どブラック企業でした。それでも 結婚を考えていた時期だった事もあって 辞めるに辞められなかったのですが、一緒に生活するようになり 激務の実態を知った家内も退職を勧めてくれて、早々に退職する事にしました。転職して給与は下がりましたが、身体を壊したり 事故を起こしては 元も子も無い訳で、今思えば 本当に良かったと思います。 ブラック企業でこき使われて メンタルを病んだり 自殺したり というニュースを見る度に、何故 そうなる前にサッサと辞めないのだろう と思いますが、当の本人は 周囲に対する見栄だったり 期待に応えなきゃというプレッシャーもあって、ある種のマインドコントロールに罹っているのではないでしょうか。 この本は、ささやかながら そうした状況から抜け出すお手伝い、後押しをしてくれるかもしれません。