2016年04月08日
『炎路を行く者』 は 守り人シリーズの番外編、 タルシュ王国のラウル王子の密偵を務めるヒュウゴの若き日を描く中編 「炎路の旅人」 と、 若き日の未熟なバルサを描く短編 「十五の我には」 の 2編が収録されています。 「炎路の旅人」 あとがきによると、「炎路の旅人」 は 「蒼路の旅人」 の前に書かれたものの、この作品によって 「蒼路の旅人」 から 「天と地の守り人」 へと繋がる大河ファンタジーの構想が生まれた為に お蔵入りとなり、シリーズ完結後に 長編から中編に書き換えられて発表されたそうです。 確かに、「精霊の守り人」 から 「神の守り人」までと、「蒼路の旅人」 以降では 雰囲気が大きく変わりましたよね。 守り人シリーズ後半のキーパーソンで、どこか影のある謎の密偵ヒュウゴの誕生秘話が描かれ、番外編ではありますが、本編をより深く理解するためには必読。バルサと どこか重なるヒュウゴ、その真の姿が 明らかとなります。 ヒュウゴに限らず、守り人シリーズの登場人物には それぞれに物語があり、それは本編からも伝わってくるのですが、改めて こうした番外編を読むと、ここまで作り込んでいたんだと その緻密さに驚かされ、そうした物語の積み重ねが 作品に深さと重みを与えているのだと 再認識しました。 「十五の我には」 36歳となったバルサが、17歳のチャグムと 15歳の頃の自分の姿を重ね合わせて振り返る、ジグロに 厳しくも優しく鍛えられた日々。 十五の我には 見えざりし、弓のゆがみと 矢のゆがみ、 二十の我の この目には、なんなく見える ふしぎさよ・・・ 歯噛みし、迷い、うちふるえ、暗い夜道を歩きおる、あの日の我に会えるなら、 五年の月日のふしぎさを、十五の我に 語りたや・・・・ ジグロが口ずさむカンバルの詩人 ロルアの詩が、印象的です。
「春の光」 これは 『守り人のすべて』 という 守り人シリーズの完全ガイドブックの巻末に収録された掌編です。ゴメンナサイ、立ち読みで済ませてしまいました。 シリーズ完結後の バルサとタンダの ある一日が描かれ、穏やかに過ごす二人の幸せそうな姿に ホッとします。 そんな日々が末永く続いてくれると良いな、と 願わずにはいられません。 『流れ行く者』 も 番外編の短編集です。 11歳の 心優しいタンダが主人公の 「浮き籾」、 バルサに ススットという賭け事の神髄を教えた老女が主人公の 「ラフラ(賭事師)」、 バルサが初めて人を殺めた日、10代のバルサと ジグロを描いた 「流れ行く者」、 幼いタンダの 淡い恋心を描いた 「寒のふるまい」、 サイドストーリーも深いです。