2015年10月06日
今年も ノーベル賞の季節です。 昨日の医学生理学賞の大村教授に続いて、今日は物理学賞を梶田教授が受賞。 地道な研究を続けてきた方々に光が当たるのは、本当に喜ばしい事です。 文学賞の発表は木曜日なのかな。 今年も ファンや マスコミは 村上春樹の受賞を期待して また大騒ぎをするのでしょうか? 近年のノーベル文学賞は 政治的な思惑がずいぶんと入っているようですし、ご本人は さして欲しがってはいないと思うのですが・・・。 ただ、仮に受賞したとして、授賞式で どのようなスピーチをするのかは 大いに興味があります。「壁と卵」(エルサレム賞受賞スピーチ)のようなものにはならないと思いますが、どうでしょう?
さて、「職業としての小説家」 この本は村上春樹が、職業的小説家になった経緯や、自分の小説や文壇に対する思い、小説家にとしての生き方などを語った自伝的エッセイです。率直な語り口で、全体に自分がとってきた行動や姿勢を肯定する内容となっています。過去にどこかで書いていた事と重複する部分も多く、目新しい部分は限られていますが、村上春樹ファンにとっては面白いでしょう。 村上春樹は 初期の頃からいろいろと批判されてきました。それをサラッと受け流して 自分を貫いている姿が格好良かったと思うのですが、この本の中では、僕も普通の人間で、あんなに批判されると傷つくんだ、それでも頑張ってきたんだ と本音を漏らしています。彼は 結果として成功しているので、どうしても自慢話のように読めてしまうのが 残念。そうした本音を聞いて、ちょっとガッカリするのか、同じ人間だったんだ と親近感を持つのかで この本の評価は 大きく変わると思います。 僕は基本的に、音楽も 小説も 発表された作品を、どう受け止め どう解釈するのかは 聞き手や読み手の勝手で、作者は 自分の事や作品の事を語るべきではない と思っています。作者の人物像にも あまり興味はないのですが、そうした事を知りたいファンは多いのでしょうね。 僕としては あえて出さなくても良い本だったのではないかと思います。 アラーキーが撮影したというカバーのポートレイトは格好良いです。 どこか超然とした村上春樹の雰囲気を よく捉えていると思います。
5月頃から、村上春樹の作品を 初期のものから読み直しています。 間に他の本も挟むので なかなか進みませんが、鼠三部作に始まり、「ダンス・ダンス・ダンス」、「中国行きのスロウ・ボート」などの初期短編集、「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」、「ノルウェイの森」、「ねじまき鳥クロニクル」、「海辺のカフカ」、「職業としての小説家」と進み、今は「1Q84」を読んでいます。 こうして続けて読んでいると、村上春樹の世界は やはり深くて 複雑で 暗くて 面白いです。 1冊1冊の感想は書きませんが、「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」は やはり圧巻。2つの世界を交錯させながら物語が展開していく村上春樹のスタイルの 最初の完成型がここにあります。 「ノルウェイの森」は、今までは好きになれなかったのですが、今回はすんなりと入ってきて、とても良く思えました。何故でしょう? 「ねじまき鳥クロニクル」は、今を時めく芥川賞作家、又吉が村上春樹のベストに推しています。 いろいろ書きましたが、僕は村上春樹の作品が好きですし、これからも何度も読み返すと思います。