2014年08月27日
お盆に 近所の古本屋さんで 20%オフセールをやっていて、少しまとめて購入した事もあり、夏休みの宿題ではないけれど、ちょっとまとめての読書感想文です。
「リビング」 重松清 婦人雑誌に1年間に亘って掲載された 12の短編を集めた短編集です。 その月の特集と連動したテーマで書いたのだそうで、ニュータウンに戸建住宅を新築した若い夫婦の四季を描いた4編以外は すべて独立した短編で、夫婦の些細なすれ違い、離婚の危機にある夫婦、両親が離婚した子供の心情、子供がいながら離婚する親の心情、幼馴染みの友情、本家の小姑vs分家の嫁など、様々な夫婦や家族の日常が、さり気ない切り口で いきいきと語られます。 どの短編も気軽に読めますが、さり気ないからこそ身につまされたり、ほのぼのとした中にも切なさや哀しさがあったり、どれも余韻を残して終わります。 さすが重松清、上手いです。 読み始めてから何年か前に一度読んでいた事を思い出しましたが、今回も面白く読み終えました。
「聖女の救済」 東野圭吾 ガリレオシリーズの第5弾、シリーズ2作目の長編だそうです。 バリバリのミステリー、推理小説で、相変らずの東野圭吾、面白いです。 ですが、このトリックはどうなのでしょう? まぁ、作中でも 湯川自らが “理論的には考えられるが、現実的にはありえない、虚数解” と言っている訳ですが、さすがにちょっと無理がありますよね。 そもそも 子供を産めない身体だという事が判っている 頭の良い女性が、1年以内に子供が出来なければ離婚する と言っている男性と結婚するか という点は疑問。 自殺した友人と 自分の復讐の為だとしても、無理があるように感じます。 冒頭の一節が ミスリードを誘います。 「屋上ミサイル」 山下貴光 第7回の このミス大賞受賞作だそうですが、ミステリー的な要素は乏しいです。 軽い文体と ご都合主義的なストーリー、テンポよく展開するし、場面場面はそれなりに面白いので サクサクと読めますが、それだけです。 これで大賞? という感じです。 伊坂幸太郎作品に よく似た雰囲気があります。 「三匹のおっさん」 有川 浩 還暦を迎えた幼馴染みの3人のおっさんが 家族や地域の安全を守る為に自警団を結成し、痴漢やら詐欺やらを退治する痛快現代活劇ですが、それに孫や娘の恋愛も絡められ、いかにも有川浩らしい軽快なラブコメに仕上がっています。 正義のおっさん達は 改造スタンガンなどの武器を携えており、現実的には彼ら自身も犯罪者スレスレな訳ですし、先日のまんだらけではありませんが、私的な制裁を加えることの是非という問題もありますが、細かい事は抜きにして楽しんでください! と言わんばかりの展開で、おっさん達の活躍は爽快です。 一方で、スカッと解決とはいかない事件もあって、この辺がリアリティを添えています。 団塊の世代に向けたエールというところでしょうか。 「星のかけら」 重松 清 “小学6年生”に連載された 子供向けの小説です。 いじめや不登校、生と死など 重いテーマを扱っていますが、ファンタジー的な要素を上手く絡めて、主人公が成長していく姿を描いています。 それを持っていれば、どんなにキツいことがあっても耐えられるというお守り“星のかけら”。 実は「自分の力で歩いていく」という意志こそが“星のかけら”なのだというストーリー。 大人が読むにはちょっと物足りなさが残りますが、前を向いて生きて行くことの大切さをストレートに訴えていて、小中学生くらいの子供たちには 是非読んで欲しい一冊だと思います。