『海の底』 有川浩

2011年02月06日

『塩の街』、『空の中』、『海の底』は有川浩の初期の作品群で、自衛隊3部作と呼ばれているそうです。
以前から書店の店頭に3冊並んで平積みしてあったのを見て面白そうだと思っていたのですが、なかなか購入に至らず。今回は古本屋で『塩の街』を見つけて読んでみたら結構面白かったので、『空の中』と『海の底』は書店で購入して読みました。

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3冊ともそれなりに面白かったのだけど、中でも『海の底』。
米軍横須賀基地に突如出現した謎の巨大甲殻類が 次々と人を襲うという状況の中、海上自衛隊の潜水艦きりしおに立てこもることになった自衛官と子供たち、その中で生じるトラブルと人間模様、巨大甲殻類への対処を巡る 警察と陸上自衛隊、米軍、政府の間で生じる緊張関係が、並行して展開するストーリー。
自衛隊を出動させるまでの駆け引きが なかなか興味深く面白い。自衛隊を武器を使える形で出動させるために犠牲になる機動隊。犠牲者が出ながらも自衛隊の出動に踏み切れず、グダグダと不毛な議論を続ける官僚と政治家。米軍からの外圧があって やっと決断する有様。いかにもありそうな話です。
その位置付けがあまりにも中途半端であるために、いざという時に使えないのが 日本の自衛隊。いつまでたってもそれを解消しようとしないのが日本の官僚と政治家であり、阪神大震災の時に なかなか自衛隊を出動させず、その判断や対応の遅さを批判された村山内閣を ついつい思い出してしまった。今の内閣でも きっと同じような対応しか出来ないのだろうとは思うけど。


この3作には いずれも謎の物体や生命体が登場し、それに対抗する自衛隊の活躍(?)と、それに関係する子供達の物語が Wストーリーで展開するが、適度なハードボイルドに甘いラブストーリーが絡みつつ、ハッピーエンドに向かう。登場する敵が絶対的な存在でないのも良い。
ライトノベルという 判ったような判らないジャンルがあるけれど、これを読んだら“これがライトノベルなんだ”と勝手に納得しました。


post by aozora

19:06

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