2011年01月29日
西洋古典文学の最高傑作とも評される ダンテの 『神曲』。 タイトルは広く知られていても、全篇を読んだ事のある人は 少ないのではないでしょうか。 僕も若い頃に 岩波文庫の『神曲』にチャレンジした事があるのですが、難解な文章に負け、地獄篇の半分も進まずに挫折した記憶があります。
この本は、ダンテの『神曲』の抄訳本ですが、ギュスターヴ・ドレの挿画が 134点収録されていて、本を開くと ほぼ全頁で 左がドレの版画絵、右が文 という構成になっています。 タイトルが示すとおり、ドレの版画絵がメインで、それに合う抄訳が載せられているという雰囲気で、さながら 版画絵本版 『神曲』というところでしょうか。 詩人であり政治家だったダンテが 生きたまま 地獄、煉獄、天国を旅する長編叙事詩を、谷口江里也が訳していますが、欄外で その背景を解説したり、抄訳に載せられなかった部分を補足してあり、全体の雰囲気が掴みやすくなっています。 『神曲』自体も 想像していたよりずっと深く面白い内容のようで、今度は完訳本にチャレンジしてみようか という気にもなりました。ただ、訳者は予め充分に調べて選ばないと また途中で挫折しそうな気もしますが。 これを読んで 『神曲』を読んだ気になるのは おこがましいですが、入門編としては とても良い本だと思います。これで1500円は かなりお買い得ですよ。駅前通の丸善の店頭で手にした時、購入をちょっと躊躇ったのですが、買って良かったです。 振り返ると、小学生の頃に読んでいた世界の文学全集などは 全て子供向けの抄訳本ですよね。 あの時に読んだままで 完訳本を読んでいない作品のいかに多い事か。 改めて完訳本を読むと、印象や感想がガラッと変わる作品も多いかもしれません。 『神曲』の前は 馳星周の 『不夜城』シリーズ3冊と 『漂流街』を 続けて読んでいました。 あまりの落差に 自分でも苦笑いです。