2009年01月12日
無人化した豊浦駅に寄って列車の時間を確認した後、商店街に向かって歩いた。 この町の商店街は駅前の道から坂を下っていった所にある。 風邪をひいているため、無理しちゃいけないと思い、ゆっくりと歩を進めた。 雪はほとんどなかった。 何年か前に道路を拡張して、建物も新しくなった商店街であったが、すれ違ったのはたっ たの2人と車2台。 実はこの日は初売りの日なのである。 電気店、薬局、金融機関などあるにはあるが、看板が小さいせいで初めて来た人ならよく わからないだろう。 社会館の先に「ニューロビンス」という喫茶&スナックのお店を見つけたので、ここで昼 食をとることにした。 中の様子はわからなかったが、入り口に営業中の札が下がっていた。
中に入ったら客は誰もいず、奥の席で長袖の下着を着た初老の男性がタバコを片手に何や ら作業をしていた。 その光景が目に入っただけで「やばいなあ」と思ったけど、後戻りできなかった。 「今日はやってるんですよね」 「何しにきたの?」 「食事をしたいんですけど…」 「やってるけど」 「あの、メニューありますか?」 「そんなものないよ」 「何ができますか?」 「ピラフとか… まあ、海老ピラフかな」 「じゃあ、それとコーヒーをください」 今までマスターが座っていた席を空けてもらって、そこに座った。 座った正面にテレビがあり、向田邦子の恋物語のドラマをやってた。 しばらくそれを見ていたが、箱根駅伝の様子が気になっていたので聞いてみた。 「一度早稲田に抜かれたけど、また東洋がリードしているよ」 店の中はタバコのにおいから油のにおいに変わっていたが、焼いてる音が消えてしばらく 経っても運ばれてこない。 やっと運ばれた時には肝心のピラフは焼きすぎていて御飯がパラパラ、しかも冷たい。そ してタクアンと何故かタラコ、みそ汁は熱かったけど… 食べ終わった頃にマスターがコーヒーを持ってきてくれて、私の隣りに座った。 マスターは相変わらず下着姿のまま。 「さっきまで娘がいて、札幌に帰った所なんだ」 「下着をもらってね、どんなのか見ていたんだ」 そんな話から始まって、昔は職人をやっていたこと、このお店は40年以上前からやって いるけど、町が町だけにまったく商売にならないこと、近所の酒屋さんが国道37号線沿 いでセイコーマートを始めたことなど、30分ぐらいは話し込んだと思う。 「お客さんどこから?」 「札幌からだけど、今日帰ります」 「何しに来たの?」 「ちょっと歩いてみたくなって、ふらっと来ました」 「さっき磯に行こうとしたんだけど、小道が消えていてあきらめました」 「あそこはもう数える人しか行かないよ。無理して崖を降りてるようだけど…」 「本当はそうしたかったけど、騒ぎになったら申し訳ないと思って…」 「ハハハハ」 「帰りのことがあるから、もう少し奥まで行ってみます」 「息子が釣りをやってるはずだよ」 「それでおいくらですか?」(正直怖かった) 「700円」 なんか力が抜けた。 マスターお元気で!
rocket2号
Re:豊浦歩き vol.3
2009-01-13 10:39
下着姿のマスター、いいですね~。 わたしだったら多分見た瞬間に店を出てしまったと思いますが、 やはり故郷の香りがequipさんを留まらせたんでしょうね。 続編も楽しみにしてます。
equip
Re:豊浦歩き vol.3
2009-01-17 21:39
>rocket2号さん いやあ、体が動かなかったですね。 続編で触れましたが、ここがダメなら「しおさい」に行くしかなかったんです。 本当は「しおさい」でラーメンかなと思ってたんですが、早く風邪薬を飲みたくて目に入ったそのお店に入る展開でした。
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関東の田舎暮らしも長くなりました。 でも「住めば都」でアナログ人間の私にとってはちょうどいいのかもしれません。 正午と夕暮れの音楽が町中に流れる田舎から札幌を追いかけます。
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