2006年05月23日
沢木耕太郎『杯(カップ)―緑の海へ』(新潮社 ISBN:4101235163) ワールドカップまであと17日。「オレたちには札幌がある」と言いながらもさすがにそろそろ皆さんも気になりだした頃だと思いますが、今回紹介するのは4年前、日韓大会の観戦記です。 作者の沢木耕太郎は、この世代の男性の多くがそうであるようにサッカーの競技経験がありません。ですから本書での試合に対する分析も技術的な内容にはほとんど触れていません。しかし陸上競技・ボクシングをはじめとしてスポーツの観戦経験は豊富なので、チームの状態や大会の流れに関する考察には「そうかな」と思わせる部分があります。例えばジダン一人に頼るところが大きかったフランスのグループリーグ敗退から、チームの地力よりコンディションを必要とする現代サッカーの特質を説くくだり、逆に一発勝負の決勝トーナメントでは慎重に戦う相手をねじ伏せる真の力が問われるという見解など、今回の大会を見るにあたっても考えておかなければならない点が指摘されています。
ただ作者自身が「あとがき」で「観戦記であると同時に旅行記」であると述べているように、日韓大会を、それも韓国に軸足を置いて見て回った体験記である点にこそ本書の価値があると思います。とりわけ韓国における体験は、大会期間中ずっと日本にいて、しかも韓国人の知り合いを持たなかった私にとっては新鮮でした。また、旅の過程でのエピソードは、作者が日韓大会をいかに見たかということと同時に、出会った人がいかに見たか、ということも我々に伝えてくれます。 今回、ドイツ大会を迎えるにあたって再読してみたのですが、4年前のことを思い出す良いきっかけになりました。メンバー発表の時のトルシエの振る舞いや、小野伸二の病気のことなど、忘れていたことも随分ありますね。前回が地元開催だったことも、ともすれば意識の片隅に追いやられがちです。そういえばアルゼンチン-イングランド戦……の日に大通公園に両チームサポを見物に行ったなあ。試合はテレビで見てました(笑 「サッカーずれ」していない人が書いているので「素人くさい」という意見と「平易で読みやすい」という意見とに分かれると思いますが、ワールドカップのレポとしてではなく、我々と同じ「体験者」の話として読むのが良いんじゃないでしょうか。もっとも常人には不可能な、羨ましい体験ですけど(笑)。
あと、(数日前からこっそりリンク集には加えていたのですが)別荘を建てたので、ココは札幌・サッカー全般・スポーツに関する話題、サッカーに関係のあるブック・シネマレビューに限定することにしました。ですから、サッカーはちんぷんかんぷんだけれど安否確認にココを使っているという方は別荘を覗いた方がいいんじゃないでしょうか。 「本館より別館の方が立派」という温泉宿みたいなことにならないよう、こちらもきちんと書いていきますので、今後ともご愛顧の程を。ヒマを持て余している方は別荘にもおいで下さい。
noboru
Re:読書管見・沢木耕太郎『杯(カップ)―緑の海へ』
2006-05-23 21:30
ど~もヒマを持て余している拝田です。 別荘建てられたのですね。 そちらにも寄らせて頂きます。 本文読んで小野伸二の4年前の盲腸思い出しましたw
笹姐
Re:読書管見・沢木耕太郎『杯(カップ)―緑の海へ』
2006-05-23 23:31
私もこのあいだコレ読了しました~。 おなじく韓国サイドの目線がとても新鮮に思えました。 私はこのような観戦旅行記は大変好きです。 自分もその路線を踏む感じですが 現状では超劣化した沢木さんな程度wwww
tottomi
Re:読書管見・沢木耕太郎『杯(カップ)―緑の海へ』
2006-05-24 06:34
>拝田さん 盲腸ですよねやっぱり。イヤ「病気」までは思い出したのですが何だったかが確信持てなくて… >笹姐さん >韓国サイドの視線 政治的には冷えている日韓関係ですが、思えばぺ様人気など、あれから関係が変化しているのもまた事実。いろんな見方がありますが、共催も悪くなかったと私も思います。
プロフィール
性別:男 年齢:30歳代半ば 出身:兵庫県西宮市甲子園 現住地:北海道札幌市 サッカー歴:素人。たまにフットサルをやる程度 ポジション:アウェイ側B自由席 2007/12:加齢に伴い年齢を実態に即した形に書き換えました
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