2019年11月03日
あの日頬を伝った涙の理由を探している。 後半アディショナルタイム。ラストプレーで深井のヘディングシュートがゴール右隅に突き刺さった瞬間に溢れた涙は歓喜の涙だとはっきりと分かる。 PK戦にもつれ込み、進藤のシュートが川崎GK新井にキャッチされ沸き立つアウェイゴール裏を呆然と眺めながら零れた涙。 翌日札幌の自宅に帰る山手線で、快速エアポートの中でコンサドーレの健闘を讃える記事を読みながら零れた涙。 悔しくないと言ったら嘘になる。だが断じて悔し涙ではなかった。 達成感?準優勝というクラブ史上に残る偉業達成。だが負けは負けだし、札幌はまだ道半ばだ。 あの日から1週間以上たち、だんだん冷静になるにつれ感情の整理がついてきた。 そこでようやく納得する答えに辿り着いた。 そうだ、嬉しかったんだ。 エレベータークラブと揶揄され、満足な人件費を用意できずに有望選手の引き留めもままならない。 その中で先制ゴールを決めた菅、同点ゴールを叩き込んだ深井、縦横無尽にピッチを駆け回った荒野、残念ながら最後のキッカーとなってしまった進藤。 北海道に生まれ、コンサドーレのユースで育ち、そして決勝の舞台を踏んだ宝物達。 それだけじゃない。決めれば優勝となる5番目のキッカーとなった石川直樹。 キャプテンを任せられる人材がいなかった当時のコンサドーレで、柏からのレンタルの身ながらその重責を担った直樹。 その彼が晴れて完全移籍となり赤黒のユニフォームを身に纏い、このクラブの節目にあのような役回りを担ったのだ。 ここまで来れた。「あの」コンサドーレがここまで来れたんだ。 この嬉しさが溢れ出した涙だったんだ。 涙の数だけ強くなれるよ アスファルトに咲く 花のように 岡本真夜の名曲「TOMORROW」の1節だ。 そう、やっとコンサドーレは分厚いアスファルトの裂け目を突いて蕾を付けたところだ。 もう少し、あと少しで花が咲くところまで来た。 だから「明日は来るよ 君のために」 コンサドーレに関わる「君」たち。 新しい景色を見に行く旅は終わらない。
2016年08月24日
ミラーゲーム。両チームが同じフォーメーションで対戦している状態のこと、そのような試合のこと。京都サンガ石丸清隆監督は首位北海道コンサドーレ札幌相手に前節の4バックから3バックを採用し、全体がマッチアップする形で試合に挑んだ。これにはある一定の成果があり、京都MF本多勇喜も「今日はほぼミラーゲームだったので、一対一で負けなければ問題はなかった。そこはやらせなかったと思う」と手ごたえを口にしている。石丸監督としてはこの試合の入り方に対し、「札幌が)先制点を取ると90%以上勝っているというデータからすると、初めのうちに失点するとかなりしんどくなる。ゲームプランとして「やられない」というところからスタートした。」とまず主導権を奪われないようにと安全運転を心がけたと試合後のインタビューに答えていた。
とはいうものの、石丸監督の手ごたえとは別に試合の主導権はコンサドーレにあったように思われる。特に前半のシュート本数はコンサドーレ4本に対し、サンガは2本。ボールポゼッションはサンガ42.9%に対し、コンサドーレは57.1%とコンサドーレがボールを保持する時間が長かった。しかし、この時間を無失点で凌ぎ切るというのがゲームプランだったのだろう。…あくまで石丸監督の。
先ほど引用した本多勇喜のコメントには続きがある。「そこはやらせなかったと思うが、手応えがあるのはそこだけ。」エスクデロ競飛王はもっと辛辣だ。「前半を0-0でいけたのはいいけど、後半はもうちょっと「点を取りに行くんだ」という気迫が必要だった。追越しが遅かったり、3人目の動きが全くなかったりとか……。僕とゴメ(堀米 勇輝)で崩している時も、もっとほかの選手に絡んでほしい。後ろが(失点)ゼロで抑えていることは評価に値すると思うけど、サッカーは守るだけじゃない。攻撃しないと勝てない。」と攻撃に関してチームの連動性がないことを嘆いている。ゲームプランを遂行しようと選手が心がけた結果が5バックでは情けないではないか。勝ち点差12離れているとはいえプレーオフ圏内の5位に位置するチームだ。まして相性のいいコンサドーレ、そしてホーム西京極。もっと積極的に攻めても良かったのではないかと思ってしまった。首位から勝ち点3を奪うことができれば、勝ち点差も9に縮まり波に乗り切れなかったチームにも勢いが付く。石丸監督は「引き分け狙いではなく、その中で勝機は絶対にあると思っていた。」と逃げ腰で3バックを選択したわけではないと弁明に追われた。だが、こうも口にしている。「(札幌の)3トップがかなり強烈なので、うちの4バックのスライドと前線からのプレッシャーが間に合わないかなというところで、3バックを敷くことを選択した。」これは明らかにチームの力不足を認め、クリンチ寸前のミラーゲームを挑まざるを得なかったと監督として責任を認めていると見て取れる。
5バックを敷き、スプリンターがいるわけでない京都攻撃陣は脅威が半減していた。3バックの中心として対応した増川隆洋は、相手のカウンターに対応できたかという質問に対し、「そこは注意していたし、僕の役割はそこがメイン。周りの選手が上がる傾向があったし、ボランチと連係してリスクマネジメントすることは常にやっていた。」と守備連携の深まりを感じさせた。そのうえでキーマンとしてエスクデロ、堀米、イ・ヨンジェの名を挙げ、守備陣のリーダーとして上手く対応できたと胸を張った。エスクデロの感じたチームの問題点が露呈した格好だ。
この京都に対し無失点で終わってしまったことは改善しなければならない。決して驕りではない。これは横浜FC戦で手痛い敗北を喫してしまったことの延長線上にある。再び増川のインタビューから引用すると、「後ろから見ていると、(攻撃で)最初のボールは入るけど、そこからのつながりはなかなかうまくいっていなかった。」「向こうのファーストディフェンスはそんなに来なかったので、後ろではゆっくりとボールを持てたし、配球もできていた。」そう、ベタ引きに対しどのように崩していくべきか。これがこれからの課題になる。
京都戦は山瀬功治や堀米勇輝といった両サイドアタッカーに対応するため、攻守両面にバランスの良い堀米悠斗や荒野拓馬をスタメンに起用した。しかし、5バックを敷く京都に対し裏への抜け出しが持ち味である彼らでは、局面を打開するには至らなかった。事実、後半開始から投入されたマセードは自分のポジションである右サイドにこだわることなく、中央に切り込み配球役も務めて見せた。この交代策は四方田修平監督も狙い通りだったようで、「後半はマセードを入れて組み立てのところでボールが動くようになり、少しチャンスを作れるようになったと思う。」「後半の内容に関してはポジティブにとらえている。」と前を向いた。Football LABのデータを見たところ、枠内シュート率以外はコンサドーレの指標が良かった。にも関わらずアタッキングサードと呼ばれる30mライン進入に関してサンガ34回に対し、コンサドーレ38回と大差がなかった理由をコンサドーレ宮澤裕樹主将の言を借りて述べるとすれば、「ミスからの自滅が多かった」この点に尽きるだろう。たびたび引用している増川は「サイドからどうやって入り込めるか。勢いがあるときはいいが、引かれたときに難しい。それができる選手が揃っているのであえて言いたい。まだまだこんなレベルじゃ満足しちゃいけない。」と危機感を口にしていた。
そう、まだまだ足りないのだ。2位松本山雅FCと勝ち点差6しかない現状ではまだ足りない。J1昇格を一刻も早く手中に収め、天皇杯を来シーズンの予行演習にするぐらいの余裕と打開力を身に着ける必要があるということだ。…意訳しすぎかね?しかし、もどかしい試合であったことは確かだ。サイドプレーヤーにはより一層の奮起を期待したい。特に奮起を促したいのが、燻ぶっている神田夢実だ。独特の感性で突っ掛けるドリブルは荒野や堀米には無い武器だ。6失点しアウェイに乗り込んでくるロアッソ熊本は、相手に合せ様々なシステムを併用してくる変幻自在なチームだ。今節もミラーゲームを挑まれる可能性は充分ある。無論、中1日という強行日程で27日に天皇杯1回戦があり、神田としてはそこをラストチャンスと捉えコンディションを整えているかもしれない。だが、今のメンバーに割って入れるような練習でのアピールを期待している。熊本戦に向けてどの程度メンバーを弄ってくるのか。四方田監督の手腕が問われる連戦が続く。
引き分けで勝ち点1を分け合ったのは残念であるが、日が沈んでも30℃を超える蒸し暑いコンディションの中よく戦ったと選手たちを褒めたい。上位陣がコンサドーレに付き合ってくれたおかげで、熊本戦の結果次第では2位松本に勝ち点差9を付けJ2優勝に向けて独走態勢を築くことが視野に入ってきた。あわよくば首位から勝ち点をと自陣に引きこもるチームは今後も増えるだろう。そこをいかに崩していくか、目を離すことができない暑い夏は終わらない。
2016年07月06日
思わず声が出てしまった。予定が合わず函館での現地観戦は見送ったものの缶ビール片手のテレビ観戦。2点目のヘイスのゴールだ。荒野拓馬の左サイド突破からゴール前で待ち構えるヘイスにグラウンダーのクロスが飛ぶ。これを一度DFに寄せてからトラップし反転、落ち着いてゴールに流し込んだ。確かに荒野が左サイドを突破した時点でゴールのチャンスは限りなく高まっていた。とはいえヘイスの技術の高さには目を見張るものがある。1点目のジュリーニョのミドルを呼び込んだゴールへ向かい相手選手を惹き付ける動き‐相手選手が寄せていればシュートは防げていたとは思うが‐や、惜しくも南雄太に防がれてしまった後半のこぼれ球に反応したシュートなど自分の色を出せるようになってきた。開幕時より10kg近く身体を絞り、ここ5試合で3点と波に乗ってきた。そのうえで、ジュリーニョと近い距離でプレーさせるように腐心した四方田修平監督の手腕も見過ごせないだろう。
チーム得点王の都倉賢を出場停止で欠く中で5得点というのは文句のつけようがない。2失点については反省材料だが、4-0と試合の大勢が決まっていたので守備意識が甘くなってしまうのは仕方がなかったのかもしれない。なんにせよ4連勝で首位をキープした。下位に取りこぼさず上位3連戦に臨む事ができることを喜びたい。
3番勝負の先陣を切るセレッソ大阪は山口蛍が加入し、これを名将大熊清がどうチームに組み込むか手腕が問われている。直近のロアッソ熊本戦に5-1と大量得点で勝ち点を積み上げ、これで連勝は5に伸びた。思いも寄らぬ相手にぽろっと負ける「意外性」を持った今年のセレッソ。付け入る隙はまだまだあるはず。熱い夏はこれから始まる。
2016年06月21日
逃れようと、もがけばもがくほど纏わりついて来る蜘蛛の巣のようだった。なんのことはない。ギラヴァンツ北九州の「ドン引き」ディフェンスのことだ。首位のチームに対抗するには正しい対処法と言えよう。まず守備を固め、ホームということで攻勢をかけてくるなら隙を突いてカウンター。池元友樹、原一樹という強力2トップは数少ないチャンスをモノに出来る優れたスコアラーだ。この彼らの術中に嵌ってしまい、コンサドーレは難しい試合を強いられることになる。
個人的に試合中、注意している点がある。この展開が増えると「嫌な展開」「攻めあぐねている」というチェックポイントがあるのだ。それはCBを起点とした攻撃構成。いわゆるロングフィードだ。この試合で言えば増川隆洋が攻撃の起点となる展開が多かった。ギラヴァンツの素早い帰陣の結果、コンパクトな陣形を保つため最終ラインがセンターラインまで上がってしまったコンサドーレ。DFライン裏のスペースも埋められているうえ、狭い陣内に総勢20名の選手が押し合いへし合いしている所に効果的な楔を打ち込むのは試練の技だ。その大役を担う破目になった増川には同情を禁じえないが、どうしてもコンサドーレが攻めあぐねる展開は河合竜二や増川の「どっせい」フィードが目に付く。あくまで個人的に呼んでいるだけで意味はない。ただ、河合の某Dダックのような大きな足で蹴り上げると「どっせい!」って声が聞こえそうじゃないですか?気のせいですか?そうですか…。
引かれた場面における展開力については四方田修平監督も懸案事項として捉えている様で、試合後の会見で「相手が守りを固める中で、どう自滅せずに戦うかというところをテーマにしていました。うまくいったところもありましたが、ピンチを作ったところもありましたし、引かれた場面の崩しの質をもっと高めていく必要があると思います。」と反省の弁を口にしている。
ただ、この試合について実際にピッチに立つ選手たちは「無失点」というところにこだわりを持っていたようだ。今季初ゴールが決勝点となった宮澤裕樹は「決勝点となった得点については、素直にうれしい。今季初得点だったが、取るのであればチームが苦しい時に取りたいと思っていた。」と得点について喜びつつも「無失点で勝てたことも大きい。」と語った。その上でチームが好調の理由を「やはり今のうちのチームは、良い守備から良い攻撃に移るというところがベースになっていて、チーム全体で良い守備ができていたことも勝利の大きな要因だと思う。」と分析して見せた。その守備を預かるDFリーダー増川隆洋も「ここ最近は失点も増えていて、それも先に取られることが続いていた。やはり先制を許してしまうと、そこから逆転をするのは簡単ではないので、やはりまずはしっかりとした守備をするというところから試合に入った。」と守備的に試合に入ったことを認めている。最近の試合と比べてパススピードの遅さが目に付いた北九州戦だったが、安全策を取ったがうえに招いてしまった結果だったのかもしれない。
気になる点をあげればキリがない。都倉賢、内村圭宏の2トップのシュートが0本であるとか、ヘイスが我を押し過ぎてトップ下としては物足りない出来だったとか、守備に軸足を置き過ぎて櫛引一紀とマセードの連携が合わなかったとか。反省材料が得られることは良いことだ。だが久しぶりに「なんとなく」勝ったからこそ、勝って兜の緒を締めよ、だ。
次週は長崎、北九州に続き、またしても下位に沈むザスパクサツ群馬が相手。今年のコンサドーレは「強きを挫き、弱きを助く」と揶揄された下位への取りこぼしは鳴りを潜めている。とはいえやはり油断は禁物。梅雨時の関東地方は不快指数がうなぎのぼりだ。ねっとりと纏わり付くぬるい湿気が選手たちの体力を奪っていくことは想像に難くない。いかに先制点を奪い、アウェイの地で逃げ切ることが出来るか。群馬戦はそこがキーポイントになりそうだ。
2016年06月10日
「ボランチ」。ポルトガル語で「ハンドル」、「舵取り」を意味するこの戦術用語はいつの間には市民権を獲得し、「ゲームの司令塔として攻守の切り替えや絶妙なパスを送る役割」だと理解されつつある。彼もしくは彼らのパフォーマンスが試合の趨勢を左右し、ゴール裏から声を嗄らす僕らの喜怒哀楽までもコントロールする。それゆえ松本戦に宮澤裕樹が出場できなかったことが悔やまれる。たらればで発言する愚をあえて犯す。宮澤主将が出場していたならば、試合結果はどうあれ前半は最悪でも1失点で終わっていただろう。
なぜこのように考えるのか。前節の千葉戦では稲本潤一の負傷交代からバランスを崩したのは、中盤でボランチ堀米悠斗が落ち着きを欠いたからだと考えている。勿論フォローするべき上里一将がいささか観念的主観的ではあるが、ふがいなかったからだと断じることも出来よう。実際上里自身が試合勘を欠いていたと認めているのだから。それでも自身の果たすべき役割を見失い、どっちつかずの対応を取り、DFラインの前にスペースを与えてしまったのは「ボランチ」の責任である。これは松本戦でも繰り返された。この試合を動かしたのは松本FW高崎寛之だった。前半23分、コンサドーレDF進藤亮佑が与えたファウルによりFKのチャンスを得ると、ペナルティエリア角の手前でキッカー宮阪政樹からのクロスをニアサイドでフリーになった高崎寛之がうまく頭で流し込み、札幌ゴールを揺らす。コンサドーレのセットプレーにおける弱点を衝いた、ある種松本のスカウティングの妙が色濃く出た素晴らしいものだった。ファウルを与えた進藤は「クリアなど大人のプレーをしないといけなかった。(FKは)ゾーンDFの盲点をつかれた」と反省を口にする。高崎はセットプレー開始時点からフリーであり、セットプレー時にはゾーンで守るというのが今季のコンサドーレの方針であるのは重々承知だ。だが、「もし」マンツーマンであれば増川隆洋あたりがビッタリとマークし自由にさせなかっただろう。その結果別の選手がフリーになるなど弊害は勿論あるが…。また、都倉賢やジュリーニョが近くにいたが、彼をマークするまでは至らず、あっさりと他の選手に釣られフリーにしてしまった。キック直前GK金山隼樹が一声かけてチェックを促していればと思うが、映像からは金山がどのように対応したのかうかがい知ることは出来ない。昨年よく見られたセットプレーの守備という弱点が顔を出した苦い失点となってしまった。
2点目も狭い局面で押さえられず、サイドチェンジを許し後手後手を踏んだ結果の失点となった。後半セットプレーから都倉の2得点で追いついたものの、ゴール前で2対2の局面を作られるなど松本の攻撃の理想形を体現してしまった。その結果力尽き2-3で敗戦。無論、四方田修平監督は「後半追いついた後に引き分けでOKとはせずに、3点目を取りにいく戦いをした。(相手に)素晴らしいゴールを決められて負けたが、積極的に戦ったことに悔いはない。」とある程度リスクを承知で選手たちを送り出したと認めている。その上で。「局面で勝っていたこと、都倉が2点を入れて同点にしたことを評価したい」と試合を総括した。開幕から13試合で6失点だった札幌がここ3試合で6失点である。2試合連続で前半に2失点しているのが気がかりな上、サイド攻撃を起点とした失点が多く、GK金山も「クリアした後を奪われて失点している」と課題を口にしている。2試合連続で先制点を奪われ嫌が応にもリスクを取らざるを得ない状況に陥っている。どのように守備を改善していくのか、DFラインをまとめる増川はこう口にする。「苦しい時期は必ずある。こういうときに崩れないチームが強い」。失点にばかり目が行くが、攻撃陣は好調で3試合で7得点だ。決して悲観することはない。どのようにリスクマネージメントをし、最高の結果を得るか。今年のコンサドーレはこれが出来るチームだと思っている。勝利をもぎ取った松本山雅FC反町康治監督は試合後の会見で、J1で戦った昨季開幕戦を例に引き「昨季の開幕戦(名古屋戦)もこんな感じの展開で、向こうもなりふり構わずやってきて苦労したわけですが、そう思うと札幌さんはすでにJ1に値するチームだなと感じましたね。」と上から目線なのが鼻に付くところであるが、一定の評価をコンサドーレに対し与えている。古くはアルビレックス新潟、湘南ベルマーレと戦術家として率いたチームをJ1に送り込んできた彼からの評価はありがたく受け取りたい。
次の相手はV・ファーレン長崎。策士高木琢也監督はおそらく松本の戦術を参考にし、コンサドーレ対策を練り上げて札幌ドームに乗り込んでくるだろう。正念場が続くが、まだ首位である。しかも1試合少ないのも関わらずである。目の前の試合を着実に乗り越え、最高の結果を掴んで欲しい。
2016年06月07日
札幌ドームが悲鳴に包まれた。その視線の先には苦悶の表情を浮べた背番号17が居た。5試合ぶりの先発出場は6連勝の始まったセレッソ大阪戦以来。前節で退場になってしまった深井一希と軽い肉離れを発症した宮澤裕樹が欠場したことで巡って来た先発の機会。同じく先発でのボランチ出場は久しぶりである堀米悠斗と共に、千葉のパスコースをことごとく潰していく。というより、堀米にリードを付け千葉オフェンスを狩の如く追い込んでいったという印象だ。調子が良かったがうえに起きてしまった事故だった。右膝前十字靱帯断裂、全治8ヶ月。ベテランの域に足を踏み入れてしまった稲本潤一にとってあまりにも痛すぎる怪我での離脱。前半14分という早い時間に守備の要を失ってしまったコンサドーレは、この動揺を収めるまでに授業料として痛い2失点を喫してしまうことになる。
稲本に代わってボランチに入った上里一将。「コンディションは整えてきた。」と強がったが、「試合勘が戻らないところは修正していきたい」と反省を口にした。コンビを組んだ堀米とどちらがスペースを埋めるかといった役割分担が上手くいかず、そのスペースを使われてしまうといった点が散見された。ここを埋めていれば阿部翔平のゴラッソは防げたかもしれない。痛い授業料だったと言えよう。試合勘が戻らず、視野が狭いという印象を受けたこの日の上里。右サイドのマセードがオーバーアクションでボールを要求していたが、彼の望むタイミングでフィードが渡ることは終ぞなかった。その代わりに生き生きとサイドを抉ったのが石井謙伍だ。千葉の右SB多々良敦斗は片翼を担う阿部が攻撃の起点となる一方で、守備的な役割を果たし危ういバランスの千葉ディフェンスを支えていた。これがこの試合は裏目に出て、一気呵成に仕掛けてきた石井を止めることは出来なかった。このドリブルでの突破がコンサドーレに勢いを与え、前半のうちに内村圭宏の4試合連続ゴールで1-2として折り返す。そして待ちに待ったヘイスのゴールだ。持ち前のフィジカルの強さでボールを収め、都倉賢にシンプルにはたく。斜めに走ったヘイスはその都倉からの折り返しを受け左足を合わせた。…言いたいことは分かる。だがここは素直に、ヘイスの来日初ゴールでコンサドーレが同点に追いつく。同点に追いつかれたジェフはFWエウトンに替えてDF大久保裕樹を投入し、守備を固め引き分けでの勝ち点1を狙う。同点となった時間帯からコンサドーレがボールを保持する時間帯が増していく。カウンター合戦となったが、後半アディショナルタイム2分過ぎにコンサドーレが得たCK。福森の左足から放たれたクロスにヘイスが反応するも、枠を捉えることなく結局2-2のドローとなってしまった。
なってしまった。と書いたが、タイトルどおり「もぎ取った勝ち点1」である。稲本の怪我での離脱に動揺はしたものの、今季初の2点差を追いついての引き分け。先制され試合の主導権を奪われたところから、見事盛り返して見せた。ここで得た勝ち点1のおかげで2位町田ゼルビアに勝ち点2差をつけることが出来た。仮でも負けることは考えたくないが、もし順位が入れ替わったとしても勝ち点差を1で追いかけることが出来る。この勝ち点1はコンサドーレにとって非常に大きな1点になった。一方2点差を追いつかれたジェフ千葉。勝ち点2を失ったと考えざるを得ない。その中で2枚目のカードとしてFWに替えDFを入れるという交代策は、私には弱気に映った。6試合無敗という結果は残したものの、内訳は2勝4分。2戦連続のアウェイ、6連勝中で首位に立つチームが相手。そう考えれば引き分けという結果は充分かもしれない。だが、2点先行しても勝てないというのはJ1昇格を目標とするチームにとって由々しき事態、ある種の格付けが成されてしまったと考えなくてはならないのではないか。「知らず知らずのうちにチームが守備的になっていくこと」これを危惧していたのは株式会社コンサドーレ社長、野々村芳和だ。果たして関塚隆監督は気付いているのだろうか。誤ったメッセージがチームに伝播していくことを。人の振り見てなんとやら。この試合を見る限り、コンサドーレの用兵術・戦術に弱気なところは見られない。稲本の長期離脱という最悪の事態が発生し、さらに最大の難関が水曜日に迫っている。松本山雅FC。目下3連勝中。得点20、失点9で3位まで順位を上げてきている。その彼らのホームに乗り込んでどこまで闘えるか。シーズン前半戦最大の山場だ。現地に飛ぶことは出来ないが、心は共にある。折必勝、コンサドーレ!
2016年05月30日
あっという間の45分だった。久しぶりに選手が目の前で躍動する姿に目を奪われ、気がついたら前半が終わっていた。面白い。今年のコンサドーレのサッカーは面白い。増川隆洋を中心としたDFラインはボランチと連携し、常にコンパクトに陣形を保っていた。そして統率する増川自身も機を見て攻め上がり、都倉かな?いや増川だ!?とグラウンダーのクロスに滑り込むシーンが見られた。某田中さんの相棒を務めていたのは伊達ではない。山口のキーマンである庄司悦大に仕事をさせず、インターセプトからショートカウンターに移れたのは彼の果たした役割も大きいだろう。
また、この試合は山口にとって「アウェイの洗礼」を浴びせるものでもあった。羽田空港の滑走路が事故のために閉鎖された影響で、北海道への到着が試合当日となってしまうアクシデントが起きてしまったのだ。新千歳空港に到着したのが午前11時とキックオフの3時間前。長時間の移動で選手たちの疲労もあっただろう。それに重ねてこの日の札幌ドームは通常よりも芝が長めになっており、早いパスワークを身上とする山口にとって不向きなピッチコンディションとなっていた。「なかなか芝生に慣れることができなかった」と上野展裕監督も悔やむように、まさにアウェイの難しさを体感した試合となったようだ。
戦前の予想とはことなり3-1と思わぬ大差がついたこの試合。守備面での貢献は増川だが、攻撃面ではやはりジュリーニョの果たした役割が大きい。ダメ押しとなる3点目のループシュートも見事だったが、やはり先制点につながるペナルティーエリア内でのドリブル突破は彼ならではのものだった。前線でタメを作り攻撃の起点になる。古き良き時代の10番がしばらくコンサドーレには不在だった。小野伸二を獲得したものの、怪我が続き彼をチームの中心に据える事は出来なかった。その中で彗星のように現れたのがジュリーニョだった。実績十分のヘイス、右サイドの職人マセードの影に隠れ、スキンヘッドが小野と見分けがつかねぇよと口の悪い一部サポというか自分に言われていた彼。あれよあれよという間にトップ下に定位置を獲得し、いまやコンサドーレの中盤に君臨している。遊び心溢れる独創的なテクニックと大きなサイドチェンジで相手ディフェンスを翻弄し、チャンスを生み出していく。都倉賢7点、内村圭宏5点、そしてジュリーニョ3点。チーム全ゴール20点のうち実に75%を彼ら3人で生み出している。1点しか取れないと嘆いていてもなんだかんだ20点はJ2で4位の成績であり、決して今年のコンサドーレは守り勝つだけのチームではないのだ。
ジュリーニョの活躍について述べてきたが、早いプレスと独創的な攻撃センスを持つ外国人が攻撃を牽引するチームが前にあったなぁと記憶を辿ってはたと気がついた。2007年J1に旋風を巻き起こした柏レイソルだ。この年J1に昇格してきた柏レイソル。石崎信弘監督体制となって2年目となったこのシーズン、石崎監督らしい4-2-3-1を基本とした堅守速攻を武器に一時首位に立つなど台風の目としてJ1を席巻した。ボランチの山根巌とCBの古賀正紘を中心とした守備陣は安定しており、無失点試合は14を数え総失点36は3位タイと着実に勝ち点を積み上げていくことができた。この堅守をベースに仕掛けたショートカウンター。この攻撃陣を牽引したのが「魔術師」フランサだ。ポンテ、ベルバトフとともにレバークーゼンで「デンジャラス・トライアングル」を形成したブラジル人テクニシャンは、1TOPとしてポストプレーをこなすだけでなく、中盤に下がって惚れ惚れするようなボールタッチで相手DFを翻弄した。そこで攻撃のタメが出来ることにより、2列目以降の菅沼実・李忠成・鈴木達也らがDFラインの裏を狙って飛び出しゴールを奪うことができた。総得点こそ43点で下から数えたほうが早いが、李の10ゴールを筆頭にフランサ8、菅沼6など前線のキーマンに得点が生まれていた。
このフランサの役割を今年のジュリーニョは果たしているのではないかと思っている。コンサドーレは近年プレスからのショートカウンターという戦術が基本になっていた。その基礎となるのが守備陣でセットプレーの守備を除けば、おおむね堅守といって差し支えない安定した陣容を誇っている。一方攻撃陣に目を転じると、ゴールハンターは居るものの、ゴール前での精度や攻撃アイディアを欠き。社長就任から3年目を迎える野々村芳和もこの問題を懸案事項として捉えており、選手の成長を促すために小野伸二や稲本潤一といった世界を知るベテランたちを獲得してきた。そして今年、ついにすべての問題にケリがついた。全員守備、全員攻撃。攻守に連動した素晴らしいチームに進化したのだ。
唯一つだけ不安な点を上げるとすれば、怪我である。2008年の柏はフランサの怪我での離脱から成績を落としていった。天皇杯で準優勝したものの、2009年にはガラスのエースとなってしまった彼への依存度の高さから16位でJ2に降格してしまった。これからシーズンの折り返し地点、そして夏が始まる。チームとして乗り越えなければならない正念場に無傷で彼が立っているか否か。心配御無用といえるような選手の台頭が待たれる。
…長々と書いてきたが勝てばええんじゃ。勝ったから悲壮感もなく臆面もなくこんな記事が書けるんじゃ。魔術師ジュリーニョ。もっと俺らを躍らせてくれ!!アレ!ジュリーニョ!!
2016年05月24日
「撃てば入る!」かつてこう豪語した男がいた。あの日、昇格を決めた喜びそのままに道内TV各局を行脚した札幌イレブン。昇格を決定付ける2ゴールを決めた背番号13番は、初めてのビール掛けに目元がトロンとなりながらも言い切った。「撃てば入る」と。その男の名は内村圭宏。6戦4発。エースの帰還だ。
過去4戦未勝利だった「鬼門」讃岐戦。試合立ち上がり早々、高木和正のFKからゴール前フリーになったエブソンに狙い澄ましたクロスが上がる。これはエブソンが上手くミートし切れず枠を大きく外れたものの、あわやというシーンを作られてしまった。ファーサイドでエブソンをマークしていた宮澤裕樹が、外に流れてきた永田亮太に釣られてしまい、スルッと抜け出したエブソンにボールが渡ってしまった。昨シーズンはセットプレイからの失点が多かったので、今後も「兜の緒を締めよ」ではないが、しっかりと反省すべき点は反省してもらいたい。
なぜこのシーンを細かく上げて反省を促したか。開始3分という一番集中していなければならない時間という点もあるが、…この場面以外特に危ない所がなかったからだ。確かに後半は風下に立ち、サイドを抉られゴール前の混戦からシュートを撃たれるシーンもあった。とはいえ讃岐の枠内シュートは試合を通して1本のみ。「J1はこんなもんじゃなく一瞬の隙が命取りになる!相手に助けられた。今回も運良く勝てただけ。」このような意見も勿論あってしかるべきだ。
だが、先取点はコンサドーレに入った。綿密なスカウティングを活かし、それをプレーとして実現して得たゴールという結果。これはチームの成長以外何物でもない。飛行機を乗り継ぎ、気温28℃湿度40%というアウェイの地。このタフなコンディションの中、ジュリーニョの創造性溢れるパスワークを活かしワンタッチでボールを繋いでいく。宮澤のワンツーや都倉賢の反転からシュートは精度こそ欠いたが、ゴールの匂いを感じさせる見ごたえのある崩しだった。そして産まれた内村のゴール。これはどうすることも出来ない、非の打ち所のないゴール。讃岐GK清水健太は不運だったとしか言いようがない。
「後半はボールを動かしながら無理はしない、しかし2点目を取りに行こうと入った。」と四方田修平監督は安全運転に終始した。小野伸二やヘイスといった攻撃的な選手を投入したが、より攻撃的にいくのならば交代の順番は逆だっただろう。分かりやすいメッセージはヘイスという「ストライカー」を投入した上で、小野伸二という「プレーメイカー」を中心に「攻撃のギアを上げる」。ただ、ヘイスのプレス技術に関して不安が残るため、バランスを意識した上で小野の投入を先にしたのだろう。あくまでも素人考えなので、当たるも八卦なところで聞き流していただいてかまわない。
「竜二さんが入って引っ張ってくれたので、移動の疲れがある中、踏ん張れた。」とは3バックの中心となり獅子奮迅の活躍をしている増川隆洋の弁だ。後半34分、堀米悠斗に替え河合竜二が投入されたことでチームの意思は統一された。前節とは違う「この試合勝つぞ」という強烈なメッセージだった。アディショナルタイムを含めた残り15分。足を止めることなく「最後はよく体を張って頑張ってくれた。」
9年ぶりの5連勝。すべて1-0での勝利だ。宮澤キャプテンはこの連勝に手ごたえを感じており、「勝ち癖がついている。しっかり点を決めきって守り抜ける。攻守の切り替えもよく、球際も100%の力で戦えているので負ける気がしない」と口も滑らかだ。追加点が取れないのが課題と見えるが、試合の主導権を奪い完封勝利を続けていることは素直に評価するべきだろう。1試合少ないながらも2位ファジアーノ岡山に勝ち点4差をつけての首位に立っているのだ。先はまだまだ長い。油断はできないが、更なる成長を遂げたコンサドーレの姿を楽しみに今シーズン共に走って行きたい。
2016年05月18日
まさに会心の勝利だろう。試合後の四方田修平監督の口は滑らかだった。「勢いのあるチームとの対戦でハードな戦いになると予想していた。前がかりに来る相手を凌ぎ、前半から怖がることなくチャンスを作ることが出来た。後半も押し込み続けこう対戦選手もいい働きをした。」このようにゲームプラン通りに試合を進めることができたことに満足げだった。その上で、「これまでの1-0とは違う成長を感じた。」と手ごたえも口にしていた。
これまでとは違う「成長」とはどの部分に見ることが出来たのだろうか?ヒントになると思われるのは次の質問、「4連勝を監督はどのように捉えているのか?」これに対し四方田監督は、「それぞれ内容が違うので一概に言えないが、チームで一丸となって高い守備意識を保ち、気持ちのところでも一つにまとまっていることが結果として顕れたのだと思う。」と答えている。各選手がコメントの中で「ハードワークする」という意気込みを述べているので、前節からの成長という点には当たらないだろう。ではどこが・・・。おそらく「気持ちのところ」。精神論に近くはなってしまうが、ここで内村圭宏の決勝点をアシストした堀米悠斗の試合後コメントを引用しよう。「伸二さんが入って、ちゃんと勝つんだというのが伝わってきてスイッチが入った。」
意図のない選手交代はない。ピッチに残る10名はこの意図を読み取り、プレーとして具現化しなければならない。ハーフタイムのミーティングでベンチからの指示は無論あっただろう。だが、アウェイの地。無理に攻めにいった結果失うかもしれない勝ち点1。他チームの勝敗によってはプレーオフ圏争いの泥沼に片足を突っ込みかねない状況。着実に勝ち点を積み上げるという選択肢を選ぶ選手も出てくるだろう。この迷ってしまう時間帯。この流れを内村圭宏、小野伸二という交代策を用い、チームの意思統一を図った。送ったメッセージは唯一つ、「この試合勝ちに行く」。
内村の投入だけでは、この意図は伝わり切らなかっただろう。疲れた水戸DFラインの裏を取り、ラインを押し下げる。勝ち点を確保するという目的しか伝わらなかったと思われる。そこでボランチ深井一希に替えて、小野伸二を投入する。これで四方田監督のメッセージは明確になり、内村がDFラインを押し込んで生まれたスペースを小野が活用しタメを作ることで攻撃の起点となった。その結果生まれた決勝点。監督の意図を読み取り、守りきるだけではなく泣き所となっていた後半での得点を奪い再び首位に立って見せた。これが成長の証だ。
殊勲の内村は言う。「去年はいい流れからでも、いきなり失速した。」勝って兜の緒を締めよ。油断は禁物である。腰に不安を抱える彼がジョーカーとして機能している現状は、故障離脱のリスクを減らすという面から考えるならば、ある程度満足のいくものとなっている。だが、やはり内村は90分プレーすることで進化を発揮する選手だと思う。コンサドーレの真の泣き所。後半の得点不足、追加点不足は先発メンバーにおける内村の穴を埋める存在の有無。これに尽きるのではないだろうか。この試合は前節から4人変更して臨み、4連勝という最高の結果を残すことが出来た。誰が出ても同じチームパフォーマンスを発揮する。今年のコンサドーレは層の厚い良いチームになりつつある。そのなかで誰がゴールゲッターとして台頭してくるのか。その切磋拓馬、もとい琢磨こそがJ1昇格への原動力になる。私はそう信じている。
2016年05月01日
まさに粘りがちだ。8:7、これはコンサドーレと徳島のシュート数比較だ。事前の予想通り中盤におけるボールの奪い合いとなったこの試合。前半20分に生まれた内村圭宏の「らしい」ゴールで先制し、主導権を持ったままいい形で前半を終えることが出来た。「相手の裏を意識することで、背後を取れていたところと、相手が下がったときにボールを動かしてサイドから崩すというところに関しては非常に良い形が作れていたと思いますし、そこから得点が生まれたのも大きかったと思います。」と四方田修平監督もゲームプランどおりに進めたことに関して手ごたえを持っていた。
しかし後半徐々に押し込まれる場面が増えていく。徳島のキーマンとなったのが藤原 広太朗と交代で入ったキムキョンジュンだ。前節まで出場2試合、プレー時間も7分・5分と決して多くない。そんな彼が今まで機能不全を起こしていた徳島オフェンスを牽引していく。スペースへ抜ける動きを繰り返し、対応するコンサドーレDF陣のスタミナをボディーブローのように削っていく。「思っていた以上に相手が攻撃的に、前からボールを奪いにきたり、攻撃の場面でも工夫しながらボールを動かしてきて、予想した以上にお互いが攻め合うような展開になったと思います。」「後半はある程度守備のところをしっかりやって、自分たちから奪いに行くということをやりながら追加点を狙っていこうと話して入ったのですが、途中から少し消耗が激しくなり、攻める時間が少なくなって押し込まれてしまいました。」と四方田監督も反省を口にした。消耗という点を目に見える形で示したのが後半32分の福森晃斗の途中交代だ。セットプレーのキーマンは無念、足の痙攣でゲームを後にした。ここで四方田監督は櫛引一紀を投入し、1点を守りきるという選択を取った。荒野拓馬、上原慎也と追加点を狙う交代策を取っていたものの、本調子でない荒野が徳島ディフェンスを押し込むことが出来ず守勢に回る一因となってしまった。言い方は悪いが怪我の功名とも言えるタイミングでの交代となった。後半シュート1本と追加点が取れなかったことは反省材料であるが、しっかりと勝ち点3を奪った。この勝利はチームの成長の証と捉える事が出来るだろう。
「強きを挫き、弱きを助く」。近年のコンサドーレはこう揶揄されるような試合結果が多かった。特に下部リーグからの昇格組に弱かった。初顔合わせとなると、J2の戦いに慣れていない彼らに一息吐かせ自信を与えてしまう体たらくであった。また、ここで勝てば昇格圏であるとか首位浮上を賭けてといった試合にも弱く、勝負弱さも散見されていた。選手たちも自覚があるらしく、徳島戦の前には「この試合に勝たなければ前節セレッソ大阪に勝った意味がなくなってしまう」とモチベーション高く試合に臨んでいたようだ。その試合を勝ち切り、コンサドーレは自動昇格圏の2位に浮上した。とはいえ勝ち点1の差で3チームがひしめき合っており、油断は禁物だ。
次節は中3日でアウェイに乗り込んでのツェーゲン金沢戦。昨季は首位に立つなど旋風を巻き起こした金沢だったが、今季は不振に喘いでいる。ロアッソ熊本戦が九州を襲った震災の影響で1試合少ないものの、10節終えて7敗2分といまだ勝利はない。今節の清水エスパルスにも1-4と「完敗」を喫している。とはいえ侮れない相手であることは間違いない。注意しなければならないことは2点。モンテディオ山形戦同様に先制点を与えないこと。そして古田寛幸を自由にさせないことだ。石井謙伍が愛媛FCに所属していた時、彼には何度も「恩返し弾」を喰らっていた。お得意様を作らせないためにも、最初の対戦で「一発カマす」くらいのことをしておかなければならない。
短い試合間隔、遠いアウェイの地、そして勝利に飢えているホームチームと悪条件が重なっている。非常に難しい試合になるだろう。勝ち点3を狙うのか、それとも勝ち点1でも良いから持ち帰るのか。中途半端なゲームプランでは逆にしてやられてしまいかねない。この試合もまた首位の座を目指す挑戦となる1戦だ。ぜひともこの壁を乗り越えてもらいたいものだ。
最後になるが、内村圭宏は今回のゴールでコンサドーレ所属となって節目の50点目を挙げた。絶えずDFの背後を狙い続け、献身的なチェイシングを続けるその姿勢は、まさに北海道コンサドーレ札幌を体現する選手といって過言ではない。「長くいるから多いのは普通。外したのを決めてたら100点ぐらい取れていていい。外した分これから取り返す」と彼は謙遜しながらコメントをしていた。ぜひ金沢戦から「取り返す」ゴールの1点目を奪って欲しい。最高のGWを送ろうじゃないか!
2016年04月27日
この記事を書くPCの横の壁にはカレンダーが掛かっている。同じ部屋で毎朝着替えもするのだが、そのカレンダーを見るたびに顔がにやけてしまう。2016年北海道コンサドーレ札幌オフィシャルカレンダー。3・4月で大きく特集されている選手がいる。背番号17、稲本潤一。6勝2分、今季無敗の首位セレッソ大阪を相手に移籍後初ゴールを叩き込み、コンサドーレは3位に浮上した。
2試合連続で後半交代出場した選手がゴールを挙げた。未勝利相手と無敗相手と両極端ではあるが得点を挙げることが困難な状況で結果を残した。前節の山形戦。今季初先発が予想された内村圭宏は結局ベンチスタートとなった。四方田修平監督としては彼にジョーカーとしての役割を期待し、岡山戦であわや初ゴールかと思わせるような輝きを放った菅大輝を先発で送り出した。結果不運ともいえるゴールで山形に先制を許し、満を持して内村を投入し最善ともいえるような結果を勝ち取った。そして迎える首位セレッソとの対決。監督はどんな判断を下すのか。この判断が勝利への分水嶺だった。
ふたを開けてみれば都倉賢・内村圭宏の2トップにトップ下ジュリーニョという布陣で臨んだ。この決断を後押ししたのが荒野拓馬の復帰だ。まだ本調子ではないとはいえ、交代でピッチに入ればその突破力と決定力は相手チームの脅威になる。なにより彼の持ち味をチームメイトも理解しているので、選手交代で監督が意図するところが選手たちに伝わりやすい。稲本がゴールを決めたことで3枚目の交代カードは小野伸二から櫛引一紀になってしまったが、荒野がピッチで躍動する日も遠くはないだろう。
ボール支配率で45.2%:54.8%とセレッソに大きく水を空けられたにもかかわらず、シュート数がほぼ互角の15:18で終わることが出来た要因はジュリーニョに尽きるだろう。懐が深いプレーと独特なリズムを持ったドリブル、そしてそこが見えているのかと唸らせるサイドチェンジ。シュートが中々入らないのはご愛嬌だが、間違いなくコンサドーレの攻撃の中心は彼が担っている。
だが、シーズンが後半に進むにしたがってキーマンは対策を講じられていく。より高いレベルのチームへ、混戦を抜け出しJ1昇格を勝ち取るためには攻撃のスイッチを入れる選手がもっと必要だ。というより、よりゴールを挙げるんだというチームの統一意識が必要だ。まだまだサイド攻撃は改善の余地がある。ここにサポートへ入る選手を増やし、分厚い攻撃を組み立てることが出来れば胃が痛くなるような試合は減るはずだ。
足首の怪我で途中交代した深井一希の具合は心配だが、今のコンサドーレは誰が入っても一定のクオリティは維持されている。「維持」から「進化」へ。このチャンスにどんなアピールを見せてくれるのか。不安半分期待半分。楽しいシーズンは続いていく。
2016年04月20日
「試合としては先取点を取られたことで苦しい入り方になってしまったというところは反省したいと思います。」この言葉に尽きる試合だったと思う。試合後の四方田修平監督のコメントだ。前節とメンバーの変更は特になく、予想された内村圭宏のスタメンは見送られた。とはいえ入りは悪くなく、15分までのボール支配率は山形51.8%に対しコンサドーレ48.2%とほぼ五分。シュート数も山形3本に対しコンサドーレ2本と大差はなかった。
だが、1つのプレーが大きく試合の流れを変えることになる。前半10分過ぎ、右サイドでの山形のスローインからパスカットに入った福森晃斗のプレー。無理をする場面でもなかったと思われるが、パスカットにスライディングで対応してしまう。周囲を見渡し、カバーが入ることを予期してスライディングで奪いに行ったのだが、触ったボールがディエゴにつながりガラ空きの右サイドへつながれてしまう。これを伊藤俊がゴール前にクロスを送り結果的に汰木康也のプロ初ゴールを生むことになった。福森だけのせいではなく、複合的なミスが重なった結果の先制点。だが勝利に飢えている山形相手に与えてしまうには、あまりに大きな1点であった。
その後、雷雨での中断を挟みながら重苦しい展開が続く。コンサドーレは劣勢を跳ね返すために積極的に選手交代を行い、徐々に山形を押し込んでいく。歓喜の瞬間は後半14分。ジュリーニョの縦パスに抜け出した都倉賢が右サイド深い位置からクロスを入れると、左から猛然と駆け上がってきた内村圭宏がDFの隙間からゴール前に進入。滑り込みながら右足で押し込んだ。内村の今季初ゴールと途中出場選手の今季初ゴールという用兵の妙を示したナイスゴールだった。その後は攻撃の形が見いだせず、同点のままタイムアップ。勝ち点1を分け合い、山形は暫定ながら最下位を脱出しコンサドーレは4位とプレーオフ圏内をキープした。
ここで注目したいのは内村圭宏の起用だ。なぜ彼をスタメンで起用「できなかった」のか。「できなかった」としたところがキーポイントだ。この試合サブに入ったのはGK金山隼樹、DF上原慎也、MF河合竜二、稲本潤一、堀米悠斗、小野伸二、FW内村圭宏の7名。河合、稲本は逃げ切る際に起用が予想されるいわば「クローザー」だ。「中盤の運動量を増やしたい」場合は堀米。「サイドの活性化とロングスローという飛び道具を期待」して上原。「独創性溢れるパスワークで攻撃を活性化させる」なら小野。そして「裏への抜け出しや得点を期待」して内村。交代することでピッチの選手に与えるメッセージはこのようなものだと思われる。内村が担う「得点を期待」。この役割を担える「スーパーサブ」が彼以外見当たらないのだ。期待されて加入した新外国人ヘイスは調子が上がっていない上に、連携不足で是が非でも追いつきたい場合にはリスクが大きすぎる。神田や中原といった若手ドングリーズは単純に実力が不足している。この流れを変える力を持つ選手が内村圭宏を除いて現状見当たらないために、今回彼はスタメンを外れたのではないか。私はこのように考えている。
だが、次節はそうも言っていられない。相手は今季無敗。6勝2分、勝ち点20。首位セレッソ大阪。ザルッソと揶揄された守備陣は4失点と、堅守速攻をモットーとする大熊清監督の元で目覚しい改善が見られている。その上で言うまでもない豪華絢爛破壊力抜群の攻撃陣。彼らを出し抜くならば先制点。是が非でも先制点を挙げること。1点でも先行してしまえば、こちらはホームだ。挑戦者の立場であるから、なりふり構わぬ勝利への執念は好意的に見てもらえるだろう。そのためには後半見せたジュリーニョ・都倉・内村のコンビネーションが必要だ。だが、後半流れを変えたい場合に難儀する未来も見えている。どちらのリスクを取るか。四方田監督はどちらを選ぶのか。恐ろしくも楽しみな週末はもうすぐだ。
2016年04月12日
「ラストプレイだぞ!!」思わず声が出てしまった。66分。僕の目の前を38番が駆け上がっていく。初スタメンのプレッシャーに、そのスタミナはじりじりと削られ足は攣る寸前だったろう。にもかかわらず彼は更にスピードに乗り1対1の局面を作っていく。そして相手DFを振り切り右足を振り抜いた。クロスバーを直撃したボールは無情にもゴールネットを揺らすことはなかった。
彼の名は菅大輝。コンサドーレ史上最年少となる17歳6カ月30日で先発出場した高校生Jリーガーだ。前節の町田ゼルビア戦でプロデビューし、積極的なドリブルから切れ込んでシュートに持ち込むなど攻撃を活性化させた。その活躍が評価され、今回のスタメン抜擢となったようだ。試合前の練習では振り幅の短い鋭いシュートをゴールに突き刺しており、さほど緊張を感じさせなかったが、いざ試合が始まってみるとそうは行かなかった。なかなか試合に入っていけない。ボールが貰えず不安になったのか、すぐにボールホルダーに寄って行くシーンが散見された。
そんな彼を置いて試合は展開していく。前半13分。ジュリーニョが倒されて得たFKを40mという距離をものともせず、福森晃斗が冷静にゴールネットに沈めコンサドーレが先制する。「GK前でバウンドするボールを考えた。狙い通りのキックができたし、うまくジュリが邪魔してくれたのも良かった」という技有りのゴールであった。先制したことで落ち着いたかと思われた17分。右サイドCKからのサインプレー。福森からのショートコーナーをワンタッチで捌いたジュリーニョのパスが菅に渡る。狙い澄ましたというより力みまくった左足はボールを捉えることは出来なかった。とはいえボールに触れる機会が増えた彼は落ち着きを次第に取り戻し、自分が攻めるだけでなく味方を使い岡山DFを切り崩していく。特にジュリーニョとのコンビネーションは特筆すべきもので、22分の惜しくもオフサイドとなってしまったプレーは充分得点の匂いを感じさせるものであった。
そして冒頭のプレーである。この零れ球に反応したのもジュリーニョであった。この日のジュリーニョは本調子でない都倉賢に代わり積極的にプレスを掛け、守備のスイッチを入れる役割を果たしていた。道新サンクスマッチとなったこの日、彼をMVPに選んだ誰かさんは慧眼であった。そしてラストプレー云々と叫んだあと、彼は83分までプレーし、堀米悠斗と交代した。…ぜんぜんラストじゃねぇじゃんとか言わないように。
この試合のデータ関連がまとまってきたので目にする機会があったが、これを見ると面白いことが分かる。この試合、全体的に岡山に押されており薄氷を踏むような勝利だったと感じている方が多いだろう。確かに岡山の「ゴール前の精度」が低かったことに助けられた点は多かった。試合全体を通してのボール試合率でも、コンサドーレ43.8%に対しファジアーノは56.2%と上回っている。75分以降に限れば35.7%:64.3%となっている。だが、あれだけ押されていた後半でもシュートに限れば札幌10本に対し岡山は7本。枠内に至っては試合を通して3:1なのだ。オフサイドを4本取るなど粘り強くラインをコントロールし、精度を低くさせたDF陣の強さが光った試合と言うことが出来る。試合前に掲載した記事で、この試合のポイントについて中盤をどちらが制することができるかという点を挙げた。中盤を制したのはコンサドーレ、サイド―特に右サイドであるが―を制したのはファジアーノであった。特に田中 奏一。彼のドリブルにマッチアップした福森は手を焼いていた。左サイドの上原慎也も片山 瑛一に翻弄されており、攻撃のタクトを振るう矢島 慎也に良い様にされてしまった点は次節への改善点だ。
次節は0勝5敗2分と低迷する石崎信弘監督率いるモンテディオ山形が相手である。勝ち点を13まで伸ばし今季最高の3位となったコンサドーレにとっては「負けられない」相手となる。ホームNDソフトスタジアム山形での2戦連続での試合となり、居残りまでしてチームの現状に不満を呈したサポーターに対して結果で改善を示したいはずだ。そうなると「さすらいのゴールハンター」大黒 将志が立ちふさがってくる。前節ではベンチスタートだったが、90分プレーするならば恐ろしい選手の一人だろう。ある種引導を渡すくらいの気持ちで臨み、勝ち点を積み上げてセレッソ大阪戦に備えたい。一刻も早くインフルエンザの猛威が去ることを祈念して、このあたりで締めくくりたいと思う。
2016年04月04日
2-0.攻撃のキーマンである都倉賢とマセードを欠き、大型FWヘイスとベテラン稲本潤一をスタメンに組み入れた。その上で3ボランチから宮澤裕樹をトップ下に据えたWボランチへ変更した結果、連携不足も祟り攻守両面で機能不全を起こした。システムの変更について四方田監督は「町田のサイドハーフが中央に入ってきて中盤に5人並ぶような状況が多いので、パスの出しどころのMF李漢宰をマークするためにもダブルボランチにしてトップ下を置いた」とその意図を説明している。この変更は前半の早い時間帯には功を奏し、少ない手数からのショートカウンターで町田ゴールを脅かした。しかし「プレーのクオリティを欠き」シュートまで結びつけることができなかった。この好機を活かしきれなかったコンサドーレはじりじりとゼルビアの圧力に屈していく。
中盤でボールを持つことが出来ず、最終ラインの増川がロングフィードで攻撃を組み立てるシーンが増えていった。このシーンは町田MF鈴木崇文の芸術的なFKが札幌ゴールを揺らしてから目立つようになった。なぜ中盤でボールキープできなくなったか。答えは簡単である。コンサドーレの2トップ、ジュリーニョとヘイスが足元でボールを貰いたがり、中盤まで顔を出すようになったからだ。その結果オフサイドライン際で競り合う選手が居なくなり、GK高原寿康への信頼感もあってか町田はDFラインを高く保つことができた。
そもそも得点につながるFKはコンサドーレのミスで与えてしまったと私は考えている。安易に蹴り出すなとは言わないが、ゴールに近いあの位置で変にボールキープからロングフィードという色気を出すより、リスク回避のため大きく蹴り出すべきだったと思う。結果論だという批判もあるとは思うが、リスクとメリットの天秤の狭間で最良の選択をするのがDFの仕事だ。ましてGKが一歩も動けないFKを蹴らせる位置となってしまったことも反省材料だ。試合前に掲載した記事で指摘した「前半30分までにどちらがゴールを奪うか」という注目点。これが町田ゼルビアに入ったことで、試合は町田ペースに流れていく。
ゼルビアが高いDFラインを敷いた結果、センターラインに両軍入り乱れてのボールの奪い合いとなる。ここでもう1つコンサドーレにミスマッチが起きた。彼はこう反省する。「僕もチームも少し受け身で戦いすぎた。相手を下げさせる作業が必要だった。状態をもっと上げていきたい」稲本潤一。この試合の彼は運動量が少なく、ボールを奪ってもカウンターの起点となることが出来なかった。運動量が少ないとは書いたが、彼のプレースタイルは豊富な運動量でボールを拾い潰すというものではないのは重々承知だ。だが勝ち点を積み重ねてきたここ数試合、素早く人数をかけてボールホルダーにプレスし、ボールを奪ったあとはピッチを広く使ってゴールへ迫るということが出来ていた。このプレスのタイミングが若干ズレてしまったのは、受身で戦いすぎたからだったのだろうか。
1点を追う後半から内村圭宏と上原慎也が投入され、DFラインの裏を取る動きが増え攻撃は活性化された。だが、コンサドーレ攻撃陣の前に立ちふさがる者が居た。高原寿康である。宮澤裕樹、内村圭宏、彼らのシュートは惜しくも町田の壁に弾き返された。シュートストップに自信のある高原は、声の限りDFに指示を出し続け高いDFラインをキープさせ続けた。第2節まで顔をのぞかせていたスタミナ不足から出る陣形の間延びは改善され、失点を許すどころかDFを削りFW菅大輝を投入し攻撃に傾斜するコンサドーレの間隙を縫い、重松健太郎は追加点まで挙げて見せた。追加点の場面は言ってみればコンサドーレ守備陣の集中力の欠如が招いた失点である。深井や堀米が攻撃に軸足を置きすぎたため、ボールウォッチャーとなってしまった。あの位置から急いで戻っても決められたとは思うが、少なくともDF1人で相手攻撃陣2人を見るという2006年W杯オーストラリア戦のような無様を晒すことはなかっただろう。
この敗戦でコンサドーレは7位に後退。首位セレッソ大阪とは勝ち点差6と広げられてしまった。これで6試合終えて勝ち点10。3勝2敗1分。またバランスのいい星取表となっている。今年も混戦模様となっているJ2だが、自動昇格の椅子は2つ。この試合で見せた連携不足がシーズン初期に見られる「よくある」連携不足ならいいのだが。次節のファジアーノ岡山、そしてセレッソ大阪と難敵がこれから待ち受けている。取りこぼしの出来る試合などないが、また一山来そうな気配だ。次の目安は10節終了後。プレーオフ圏内は確保出ていると今後の応援も身が入るのだが…。
2016年03月27日
完勝だ。クリーンシートではないものの、先制、中押し、そしてダメ押しと効果的に得点を積み上げ4位に順位を押し上げた。開幕して5試合が終わり、3勝1敗1分けで勝ち点10。無事プレーオフ圏内を確保し、コンサドーレはスタートダッシュに成功した。
試合前に京都サンガに触れた記事で、私はこの試合のポイントを2点挙げた。1つはいかに攻撃の起点である石櫃洋祐を封じるか。もう1点はコンサドーレが追加点を上げることができるのかだった。この2点とも彼らは前半のうちに回答を出してくれた。前節の長崎戦とはうってかわり、バランスを重視しハイプレスを自重した京都。これが全く裏目に出て、前半3分。前線でボールを収めたジュリーニョを起点に繋いだボールは堀米悠斗から走り込んできた前寛之の元へ。「前寛につないだつもりが、うまくスルーしてくれた。アシストはついてますが、ほとんど都倉さんの個人能力です」とは堀米の弁だ。これを前寛之は「後ろに都倉さんがいるのが見えていた。自分にマークが食いついてきたのでスルーした」と狙い済ましてスルーパス。そして彼に釣られたDFを引き剥がし、裏へ抜け出した都倉賢の右足一閃。利き足の左ではなかったものの「相手が左に対して対処してくるケースが多かったので。キャンプから右で打つことには取り組んできた」「違和感なく打つことができた」と更なる成長を見せ付けるゴールを叩き込む。あっさりと コンサドーレが先制した。
早すぎる先制点。若干すぐに次の1点を取りに行くか、ある程度時間を使って攻撃を組み立てていくのか迷った部分もあったかと思う。そこで崩れたバランスも3ボランチから2ボランチにシステム変更し建て直すことができた。都倉やジュリーニョといった強さとスピードのあるFW2人に手を焼いたのか、頼みの石櫃は攻めあがる機会がほとんどなく、アタッカー陣のインスピレーションと個人技に頼らざるをえなくなった。とはいえ山瀬功治の個人技で裏を突かれたり、ミドルを撃たれるなど部分部分で危うい所はあったが、ゲームの主導権はコンサドーレのものだった。その後前半ATの福森晃斗のFK、後半にはこの日2点目となる都倉のPKで順調に加点し、3-1 でコンサドーレは勝利を収めた。試合終了間際の失点はもったいないといえるものだったが、完勝には変わらない。金山隼樹、宮澤裕樹を体調不良で欠く中、文句ない勝利だった。
試合後の選手のコメントの中で特筆したい言葉が、「チームが攻守にコンパクトでいい距離感」「全員が声を出し合っている。」この2つだ。陣形をコンパクトに保てているため、都倉賢曰く「攻撃に集中できる」ようになっている。実際この試合でも、自陣で奪取したボールを都倉にあて、彼を起点に京都ゴールに迫るというプレーが多く見られた。また「声を出し合っている」というのは特にこの試合、GK阿波加俊太がプロ初スタメンとなっており彼を盛り立てるためという点も加わり、いつも以上に声を掛け合っていたように思われる。また元気印の進藤亮佑がFKの際にキッカーの福森に対し自分が蹴りたいと直訴するなど、物言える雰囲気が醸成されつつある。無論進藤だけかもしれないが、変に萎縮して声が出ないよりはよっぽど良いはずだ。現主将である宮澤もかつて芳賀博信に対し、試合中呼び捨てで指示を出していたと記憶している。
今のコンサドーレは良いサイクルが出来ている。ベテラン、中堅、若手が融合し、試合ごとに成長を見せている。選手層が厚くなってきているのが分かる。四方田監督も今後のスタメンを考えるのが大変だろう。あえて不満を述べるとすればカウンターでサイドから崩す時にフォローするプレイヤーが足りないことだろうか。TVhの中継で解説の吉原宏太が指摘していたが、たとえばマセードがサイドライン際でDFに囲まれたときにフォローのために寄るであるとか、追い越す動きで連動して崩してゴールに迫るであるとか、このような動きが加われば4点目、5点目というところも見えてくる。試合を優位に進めているとはいえ、サイドプレーヤーに任せきりになってしまうと癖になってしまい、いざというときに戦術的に手詰まりになってしまう恐れがある。だからこそ油断せずに、攻め切る所は攻め切るという攻撃の形を見せてもらいたい。ここで若干受身に回ってしまったからか、シュート数が同数の14-14という結果、そして3-1というスコアになって顕れたともいえる。たかが1点、されど1点。守るか奪い取るか。このバランスが難しい。だからサッカーは面白い。
過去、コンサドーレは開幕5試合で2ケタ以上の勝ち点を奪うと、翌シーズンは必ずJ1という心強いデータもあるそうだ。凶敵清水、難敵京都を倒した今、過去データなどあてにならないことが証明されつつあるが、都合のいいデータは信じていきたいと思う。次節は4月3日、相手は町田ゼルビア。最高の週末がまた僕らを待っている。
プロフィール
98年J1参入決定戦に敗れ涙に暮れる札幌サポを見たことで、コンサ愛に目覚めた非道民。 何の因果か札幌に居を構え、試合結果に1週間のテンションを左右される日々。 いい年こいてまだ中二病が完治していない。 思い出とコンサの試合と日常をミキサーに投げ入れて、味の素で整えた文章を提供していく。 ご笑覧いただければ幸いだ。
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