2016年04月29日
シュート1本で1-0勝利。ある意味究極の省エネで前節勝利を勝ち取った徳島ヴォルティス。名将小林伸二(現.清水エスパルス監督)の副官として2度の昇格を勝ち取った長島裕明を監督に据え、ある種の継続性を持ってシーズンに臨んだ。もののだ。9節終わって2勝5敗2分の17位。開幕ダッシュに成功したとは言いがたく、また1試合平均8.7本のシュート本数は12.7本というJ2平均に対しても少なく、J2全22チーム中最下位だ。チャンス構築率としても同じく22位と低迷しており、攻撃におけるストロングポイント不在という苦しいシーズンとなっている。その中で守備は光るものがあり、タックルでは2位、クリアは1位、インターセプトは5位と高い数値をたたき出している。一方で前述どおりチャンス構築率は最下位、30mライン進入回数は21位と攻撃回数が4位の割りに上手くカウンターが機能していないという問題点が見えてきている。''
ここにきて調子を上げ2試合連続スタメンが予想されている堀米悠斗は「相手は真ん中に人数をかけてくる。サイドからいかに崩せるかが勝負」「2次、3次攻撃ができるようにボールを取られても、取り返せるようにやっていきたい」と攻撃のスイッチになるような動きが出来ればと意気込みを語っている。9試合も戦えばチームの基礎戦術というものもある程度固まってきている。今年のコンサドーレは、硬い中盤で相手のカウンターを受け止め、奪ったボールを裏へと蹴りこみ「鋭利」なカウンターを志向している。サイドの福森晃斗・マセードの両翼が機能しジュリーニョがアクセントを加える。そして都倉賢・内村圭宏の強力2トップがゴールを叩き込む。これが今後の基本戦術となっていくだろう。プレーする3人も攻撃の軸になることは重々承知のようで、内村は「3人で柔軟性を持って戦う。距離感を近くして、自分のパフォーマンスを発揮したい」 「(徳島は)引いてきたら(崩すのは)難しくなる。動き続けられるだけ動き続けて、最後に決められれば」とコンサドーレでの50ゴール目へ向けてやる気満々。他方都倉も、「押し込んでいる状態なら3人の良さは出る。特長を引き出し合っているし、距離感がいい」「自分のゴールがなくてもチームが勝てているのが救い。苦しい時に自分も取れれば。欲は常に持っている」単なるターゲットマンで終わる気はさらさらないようだ。
これにアクセントを加える選手の有無が、昇格を左右する。後半苦しい時間帯に多彩なプレーで疲弊した相手を掻き回しゴールを奪うスーパーサブも勿論必要だが、ここはボランチに期待したい。そう、俺らの10番、宮澤裕樹である。「今季はまだなんで、早く点を取りたい」と徳島戦に向けてゴールに飢えた発言をしている。やはり前節の稲本潤一のゴールに影響を受けているようだ。ボランチの仕事は、しばしば己の仕事に忠実なあまりギャップを生んでしまう攻撃陣と守備陣のバランスを取ること。そして「このボールを攻撃につなげるぞ」と意思を持ったパスを供給し、攻撃のスイッチを入れる。このバランスが難しく、ともすれば弱気と形容されてしまいかねない。そこでリスクを負い前に出て攻撃のバリエーションに自らを加えていく。その結果産まれたのが稲本の今季初ゴールだった。
攻守のメリハリ。このタイミングの妙を教えてくれるのが、稲本潤一であり小野伸二である。彼らのプレーをチームメイトとして体験できることは得がたい経験であるといえる。存分に彼らに使われ、そして使うことでプレーの引き出しは増えていくことだろう。野々村社長が実績充分なベテラン2人に期待していたことだ。ベテランと若手の融合。目に見えないころでのチームとしてのレベルアップ。この化学反応が起きると昇格は手の届くところまでやってくるだろう。
外はあいにくの天気で、開き始めた桜の花もまた萎んでしまいそうだ。コンサドーレも町田や大阪の試合結果次第で首位に立つ可能性が芽生え始めている。今年のチームは強いんだと一足先に大輪の花を咲かせてくれるような試合を期待している。会場の熱気と外気の冷たさのギャップに風邪など引かれないよう、各自注意されたい。さぁ皆さん準備はいいか?コンサの春はもうすぐそこまで来ている。
2016年04月27日
この記事を書くPCの横の壁にはカレンダーが掛かっている。同じ部屋で毎朝着替えもするのだが、そのカレンダーを見るたびに顔がにやけてしまう。2016年北海道コンサドーレ札幌オフィシャルカレンダー。3・4月で大きく特集されている選手がいる。背番号17、稲本潤一。6勝2分、今季無敗の首位セレッソ大阪を相手に移籍後初ゴールを叩き込み、コンサドーレは3位に浮上した。
2試合連続で後半交代出場した選手がゴールを挙げた。未勝利相手と無敗相手と両極端ではあるが得点を挙げることが困難な状況で結果を残した。前節の山形戦。今季初先発が予想された内村圭宏は結局ベンチスタートとなった。四方田修平監督としては彼にジョーカーとしての役割を期待し、岡山戦であわや初ゴールかと思わせるような輝きを放った菅大輝を先発で送り出した。結果不運ともいえるゴールで山形に先制を許し、満を持して内村を投入し最善ともいえるような結果を勝ち取った。そして迎える首位セレッソとの対決。監督はどんな判断を下すのか。この判断が勝利への分水嶺だった。
ふたを開けてみれば都倉賢・内村圭宏の2トップにトップ下ジュリーニョという布陣で臨んだ。この決断を後押ししたのが荒野拓馬の復帰だ。まだ本調子ではないとはいえ、交代でピッチに入ればその突破力と決定力は相手チームの脅威になる。なにより彼の持ち味をチームメイトも理解しているので、選手交代で監督が意図するところが選手たちに伝わりやすい。稲本がゴールを決めたことで3枚目の交代カードは小野伸二から櫛引一紀になってしまったが、荒野がピッチで躍動する日も遠くはないだろう。
ボール支配率で45.2%:54.8%とセレッソに大きく水を空けられたにもかかわらず、シュート数がほぼ互角の15:18で終わることが出来た要因はジュリーニョに尽きるだろう。懐が深いプレーと独特なリズムを持ったドリブル、そしてそこが見えているのかと唸らせるサイドチェンジ。シュートが中々入らないのはご愛嬌だが、間違いなくコンサドーレの攻撃の中心は彼が担っている。
だが、シーズンが後半に進むにしたがってキーマンは対策を講じられていく。より高いレベルのチームへ、混戦を抜け出しJ1昇格を勝ち取るためには攻撃のスイッチを入れる選手がもっと必要だ。というより、よりゴールを挙げるんだというチームの統一意識が必要だ。まだまだサイド攻撃は改善の余地がある。ここにサポートへ入る選手を増やし、分厚い攻撃を組み立てることが出来れば胃が痛くなるような試合は減るはずだ。
足首の怪我で途中交代した深井一希の具合は心配だが、今のコンサドーレは誰が入っても一定のクオリティは維持されている。「維持」から「進化」へ。このチャンスにどんなアピールを見せてくれるのか。不安半分期待半分。楽しいシーズンは続いていく。
2016年04月20日
「試合としては先取点を取られたことで苦しい入り方になってしまったというところは反省したいと思います。」この言葉に尽きる試合だったと思う。試合後の四方田修平監督のコメントだ。前節とメンバーの変更は特になく、予想された内村圭宏のスタメンは見送られた。とはいえ入りは悪くなく、15分までのボール支配率は山形51.8%に対しコンサドーレ48.2%とほぼ五分。シュート数も山形3本に対しコンサドーレ2本と大差はなかった。
だが、1つのプレーが大きく試合の流れを変えることになる。前半10分過ぎ、右サイドでの山形のスローインからパスカットに入った福森晃斗のプレー。無理をする場面でもなかったと思われるが、パスカットにスライディングで対応してしまう。周囲を見渡し、カバーが入ることを予期してスライディングで奪いに行ったのだが、触ったボールがディエゴにつながりガラ空きの右サイドへつながれてしまう。これを伊藤俊がゴール前にクロスを送り結果的に汰木康也のプロ初ゴールを生むことになった。福森だけのせいではなく、複合的なミスが重なった結果の先制点。だが勝利に飢えている山形相手に与えてしまうには、あまりに大きな1点であった。
その後、雷雨での中断を挟みながら重苦しい展開が続く。コンサドーレは劣勢を跳ね返すために積極的に選手交代を行い、徐々に山形を押し込んでいく。歓喜の瞬間は後半14分。ジュリーニョの縦パスに抜け出した都倉賢が右サイド深い位置からクロスを入れると、左から猛然と駆け上がってきた内村圭宏がDFの隙間からゴール前に進入。滑り込みながら右足で押し込んだ。内村の今季初ゴールと途中出場選手の今季初ゴールという用兵の妙を示したナイスゴールだった。その後は攻撃の形が見いだせず、同点のままタイムアップ。勝ち点1を分け合い、山形は暫定ながら最下位を脱出しコンサドーレは4位とプレーオフ圏内をキープした。
ここで注目したいのは内村圭宏の起用だ。なぜ彼をスタメンで起用「できなかった」のか。「できなかった」としたところがキーポイントだ。この試合サブに入ったのはGK金山隼樹、DF上原慎也、MF河合竜二、稲本潤一、堀米悠斗、小野伸二、FW内村圭宏の7名。河合、稲本は逃げ切る際に起用が予想されるいわば「クローザー」だ。「中盤の運動量を増やしたい」場合は堀米。「サイドの活性化とロングスローという飛び道具を期待」して上原。「独創性溢れるパスワークで攻撃を活性化させる」なら小野。そして「裏への抜け出しや得点を期待」して内村。交代することでピッチの選手に与えるメッセージはこのようなものだと思われる。内村が担う「得点を期待」。この役割を担える「スーパーサブ」が彼以外見当たらないのだ。期待されて加入した新外国人ヘイスは調子が上がっていない上に、連携不足で是が非でも追いつきたい場合にはリスクが大きすぎる。神田や中原といった若手ドングリーズは単純に実力が不足している。この流れを変える力を持つ選手が内村圭宏を除いて現状見当たらないために、今回彼はスタメンを外れたのではないか。私はこのように考えている。
だが、次節はそうも言っていられない。相手は今季無敗。6勝2分、勝ち点20。首位セレッソ大阪。ザルッソと揶揄された守備陣は4失点と、堅守速攻をモットーとする大熊清監督の元で目覚しい改善が見られている。その上で言うまでもない豪華絢爛破壊力抜群の攻撃陣。彼らを出し抜くならば先制点。是が非でも先制点を挙げること。1点でも先行してしまえば、こちらはホームだ。挑戦者の立場であるから、なりふり構わぬ勝利への執念は好意的に見てもらえるだろう。そのためには後半見せたジュリーニョ・都倉・内村のコンビネーションが必要だ。だが、後半流れを変えたい場合に難儀する未来も見えている。どちらのリスクを取るか。四方田監督はどちらを選ぶのか。恐ろしくも楽しみな週末はもうすぐだ。
2016年04月17日
狂った歯車が元に戻っていない。今シーズンのモンテディオ山形に対する印象はこのようなものだ。J1昇格プレーオフでの劇的な勝利から2年。厚いJ1の壁に弾き返されてあえなく降格となってしまった彼らだが、心機一転もう一度J1という目標に向けて走り出したと思ったのだが…。チームに多大な貢献をしたと思われる社長の更迭や主力選手の怪我での長期離脱など複合的な原因を受け、第7節終了時で5敗2分と最下位に低迷している。J1でも猛威を振るったディエゴや「点取り屋」大黒将志など戦力は整っている。また「智将」石崎信弘監督が指揮を継続しており、戦術の継続性から見ても侮れないチームのはずだった。
簡単に山形の現状を不利化って見たいと思う。前節までの山形は左右へのパスが少なく、前に前に蹴りこんでいくスタイルだった。参考にしているFootball LABのデータを引用すると攻撃回数はJ2最多、アタッキングサードとも呼ばれる30mライン進入回数でもリーグ平均値に近い9位に位置している。なのだが、シュートは平均10.4本と19位、枠内シュートは3.6本と15位となっている。つまり効果的な攻撃になっておらず、かえってカウンターを受けてしまい、被攻撃回数では22位、被攻撃成功率でも21位と山形の泥沼の深さを窺い知る事が出来る。
だが石崎監督も手をこまねいているわけではない。フォーメーションを3―4―3から4―2―3―1へ変更。ドリブルが持ち味のMF伊東俊とMF汰木康也を左右両翼に据え、石崎サッカーの真骨頂とも言えるサイド攻撃に本腰を入れてくる模様だ。なりふり構っている場合ではないようで、ディエゴ、大黒を先発出場させゴールを何が何でもゴールネットを揺らしてやろうと意気込みが見える。
では対する北海道コンサドーレ札幌としてはどうするべきか。「相手の圧力に屈しない」これが肝要だ。フィジカルで押すディエゴ。90分間虎視眈々とゴールネットを見据える大黒。彼らにボールを渡さない。そのためには中盤の攻防が鍵を握る。町田ゼルビア戦の反省を活かし、中盤での運動量とボール奪取を心がけ、前線で待ち構える都倉賢、今季初先発が予想される内村圭宏へシンプルに運ぶ。コンサドーレの2トップはそれぞれ裏への抜け出しに定評がある。彼の活躍でDFラインを押し下げることが出来れば、連動する中盤もじりじりと下がらざるを得なくなり、ゴールに飢えている山形2トップとの間に大きなギャップが生まれるだろう。そうなれば山形はロングボールの放り込みに頼らざるを得なくなり、191cmの増川隆洋を中心に長身の選手が並ぶ札幌山脈の餌食となるだろう。大黒に対するマークの受け渡しにミスが起こらなければ無失点で切り抜けられると思う。
勝利への近道は先制点だ。山形が先制点を挙げれば今季初勝利を目指し、がちがちにゴールに鍵をかけてしまうだろう。そうなれば町田戦の二の舞だ。札幌が先制することが出来れば、最悪勝ち点1は拾うことができると思う。チームとしてのストロングポイントが構築できていない山形は焦りから攻守のバランスを崩し、そこを衝けば追加点を奪うことは容易だろう。
「最初から飛ばしていく。一番大事なのは点を取ること」と語ったのは内村圭宏だ。相手の順位や成績は関係ない。冷静に相手と対峙し、最高の結果を導く。石崎監督に引導を渡すような最高の結果を期待している。今年こそ「ホントに」行くぞJ1!コンサドーレ!
2016年04月12日
「ラストプレイだぞ!!」思わず声が出てしまった。66分。僕の目の前を38番が駆け上がっていく。初スタメンのプレッシャーに、そのスタミナはじりじりと削られ足は攣る寸前だったろう。にもかかわらず彼は更にスピードに乗り1対1の局面を作っていく。そして相手DFを振り切り右足を振り抜いた。クロスバーを直撃したボールは無情にもゴールネットを揺らすことはなかった。
彼の名は菅大輝。コンサドーレ史上最年少となる17歳6カ月30日で先発出場した高校生Jリーガーだ。前節の町田ゼルビア戦でプロデビューし、積極的なドリブルから切れ込んでシュートに持ち込むなど攻撃を活性化させた。その活躍が評価され、今回のスタメン抜擢となったようだ。試合前の練習では振り幅の短い鋭いシュートをゴールに突き刺しており、さほど緊張を感じさせなかったが、いざ試合が始まってみるとそうは行かなかった。なかなか試合に入っていけない。ボールが貰えず不安になったのか、すぐにボールホルダーに寄って行くシーンが散見された。
そんな彼を置いて試合は展開していく。前半13分。ジュリーニョが倒されて得たFKを40mという距離をものともせず、福森晃斗が冷静にゴールネットに沈めコンサドーレが先制する。「GK前でバウンドするボールを考えた。狙い通りのキックができたし、うまくジュリが邪魔してくれたのも良かった」という技有りのゴールであった。先制したことで落ち着いたかと思われた17分。右サイドCKからのサインプレー。福森からのショートコーナーをワンタッチで捌いたジュリーニョのパスが菅に渡る。狙い澄ましたというより力みまくった左足はボールを捉えることは出来なかった。とはいえボールに触れる機会が増えた彼は落ち着きを次第に取り戻し、自分が攻めるだけでなく味方を使い岡山DFを切り崩していく。特にジュリーニョとのコンビネーションは特筆すべきもので、22分の惜しくもオフサイドとなってしまったプレーは充分得点の匂いを感じさせるものであった。
そして冒頭のプレーである。この零れ球に反応したのもジュリーニョであった。この日のジュリーニョは本調子でない都倉賢に代わり積極的にプレスを掛け、守備のスイッチを入れる役割を果たしていた。道新サンクスマッチとなったこの日、彼をMVPに選んだ誰かさんは慧眼であった。そしてラストプレー云々と叫んだあと、彼は83分までプレーし、堀米悠斗と交代した。…ぜんぜんラストじゃねぇじゃんとか言わないように。
この試合のデータ関連がまとまってきたので目にする機会があったが、これを見ると面白いことが分かる。この試合、全体的に岡山に押されており薄氷を踏むような勝利だったと感じている方が多いだろう。確かに岡山の「ゴール前の精度」が低かったことに助けられた点は多かった。試合全体を通してのボール試合率でも、コンサドーレ43.8%に対しファジアーノは56.2%と上回っている。75分以降に限れば35.7%:64.3%となっている。だが、あれだけ押されていた後半でもシュートに限れば札幌10本に対し岡山は7本。枠内に至っては試合を通して3:1なのだ。オフサイドを4本取るなど粘り強くラインをコントロールし、精度を低くさせたDF陣の強さが光った試合と言うことが出来る。試合前に掲載した記事で、この試合のポイントについて中盤をどちらが制することができるかという点を挙げた。中盤を制したのはコンサドーレ、サイド―特に右サイドであるが―を制したのはファジアーノであった。特に田中 奏一。彼のドリブルにマッチアップした福森は手を焼いていた。左サイドの上原慎也も片山 瑛一に翻弄されており、攻撃のタクトを振るう矢島 慎也に良い様にされてしまった点は次節への改善点だ。
次節は0勝5敗2分と低迷する石崎信弘監督率いるモンテディオ山形が相手である。勝ち点を13まで伸ばし今季最高の3位となったコンサドーレにとっては「負けられない」相手となる。ホームNDソフトスタジアム山形での2戦連続での試合となり、居残りまでしてチームの現状に不満を呈したサポーターに対して結果で改善を示したいはずだ。そうなると「さすらいのゴールハンター」大黒 将志が立ちふさがってくる。前節ではベンチスタートだったが、90分プレーするならば恐ろしい選手の一人だろう。ある種引導を渡すくらいの気持ちで臨み、勝ち点を積み上げてセレッソ大阪戦に備えたい。一刻も早くインフルエンザの猛威が去ることを祈念して、このあたりで締めくくりたいと思う。
2016年04月09日
3勝3分無敗。立派な成績でコンサドーレより上位にいるファジアーノ岡山を札幌ドームに迎える。相変わらず春の岡山は強い。なぜか分からないが春先の岡山は好成績を収めている。夏前くらいからだんだんと中位に落ち着き、最終的には10位前後をうろうろしているという「印象」だ。勿論コンサドーレサポーターとして目糞鼻糞を嗤うとならないように謙虚な気持ちを持って掛からなければならない。DFラインを経験豊富な岩政 大樹が統率し、攻撃陣にはJ1で2年連続二桁ゴールを決めた実績のあるストライカー赤嶺 真吾や五輪代表で名前を売った豊川 雄太が名を連ねる。今年のファジは一味もふた味も違うぜとサポーター達は息巻いているのではないだろうか。
とはいえコンサドーレも波に乗り切れてはいないものの、プレーオフ圏内まであと一息の7位に着けている。岡山から勝ち点3を奪うことが出来れば、順位は入れ替わるだろう。
注目選手は彼しか居ないだろう。菅 大輝だ。コンサドーレ史上最年少でスターティングメンバーに名を連ねることになる。過大な期待が禁物であることは招承知している。だが、してしまうのだ。神田や中原が力を出し切れないなか、移ろいやすいこの気持ちが浮ついてしまうのを抑え切れない。「ミーハー」の誹りは甘んじて受けよう。だが、彼のDFを背負う体の入れ方使い方は体幹の強さを見せ付けるものであるし、切れ込みからシュートへ向かったあの積極性は停滞する前線を活気付かせるものであった。
ファジアーノは3バックを採用する3-4-2-1システムで、中盤に人数を掛けボールを奪うことを重視している。そうなれば中盤での潰し合いがこの試合の見せ場になるだろう。寄せる相手を美しいパスワークで翻弄しゴールに迫っても良いだろう、ゴツゴツぶつかり合い勝ち得たボールをDFラインの裏に蹴りこんだって問題ない。受身にならない。これが鍵だ。どちらが主導権を持って試合を構築するか。願わくばレフェリーが無用なファールを与え、細切れのげーむにならないことを。
「10000人のスポーツバー」へ出かける準備は出来てるか?
2016年04月04日
2-0.攻撃のキーマンである都倉賢とマセードを欠き、大型FWヘイスとベテラン稲本潤一をスタメンに組み入れた。その上で3ボランチから宮澤裕樹をトップ下に据えたWボランチへ変更した結果、連携不足も祟り攻守両面で機能不全を起こした。システムの変更について四方田監督は「町田のサイドハーフが中央に入ってきて中盤に5人並ぶような状況が多いので、パスの出しどころのMF李漢宰をマークするためにもダブルボランチにしてトップ下を置いた」とその意図を説明している。この変更は前半の早い時間帯には功を奏し、少ない手数からのショートカウンターで町田ゴールを脅かした。しかし「プレーのクオリティを欠き」シュートまで結びつけることができなかった。この好機を活かしきれなかったコンサドーレはじりじりとゼルビアの圧力に屈していく。
中盤でボールを持つことが出来ず、最終ラインの増川がロングフィードで攻撃を組み立てるシーンが増えていった。このシーンは町田MF鈴木崇文の芸術的なFKが札幌ゴールを揺らしてから目立つようになった。なぜ中盤でボールキープできなくなったか。答えは簡単である。コンサドーレの2トップ、ジュリーニョとヘイスが足元でボールを貰いたがり、中盤まで顔を出すようになったからだ。その結果オフサイドライン際で競り合う選手が居なくなり、GK高原寿康への信頼感もあってか町田はDFラインを高く保つことができた。
そもそも得点につながるFKはコンサドーレのミスで与えてしまったと私は考えている。安易に蹴り出すなとは言わないが、ゴールに近いあの位置で変にボールキープからロングフィードという色気を出すより、リスク回避のため大きく蹴り出すべきだったと思う。結果論だという批判もあるとは思うが、リスクとメリットの天秤の狭間で最良の選択をするのがDFの仕事だ。ましてGKが一歩も動けないFKを蹴らせる位置となってしまったことも反省材料だ。試合前に掲載した記事で指摘した「前半30分までにどちらがゴールを奪うか」という注目点。これが町田ゼルビアに入ったことで、試合は町田ペースに流れていく。
ゼルビアが高いDFラインを敷いた結果、センターラインに両軍入り乱れてのボールの奪い合いとなる。ここでもう1つコンサドーレにミスマッチが起きた。彼はこう反省する。「僕もチームも少し受け身で戦いすぎた。相手を下げさせる作業が必要だった。状態をもっと上げていきたい」稲本潤一。この試合の彼は運動量が少なく、ボールを奪ってもカウンターの起点となることが出来なかった。運動量が少ないとは書いたが、彼のプレースタイルは豊富な運動量でボールを拾い潰すというものではないのは重々承知だ。だが勝ち点を積み重ねてきたここ数試合、素早く人数をかけてボールホルダーにプレスし、ボールを奪ったあとはピッチを広く使ってゴールへ迫るということが出来ていた。このプレスのタイミングが若干ズレてしまったのは、受身で戦いすぎたからだったのだろうか。
1点を追う後半から内村圭宏と上原慎也が投入され、DFラインの裏を取る動きが増え攻撃は活性化された。だが、コンサドーレ攻撃陣の前に立ちふさがる者が居た。高原寿康である。宮澤裕樹、内村圭宏、彼らのシュートは惜しくも町田の壁に弾き返された。シュートストップに自信のある高原は、声の限りDFに指示を出し続け高いDFラインをキープさせ続けた。第2節まで顔をのぞかせていたスタミナ不足から出る陣形の間延びは改善され、失点を許すどころかDFを削りFW菅大輝を投入し攻撃に傾斜するコンサドーレの間隙を縫い、重松健太郎は追加点まで挙げて見せた。追加点の場面は言ってみればコンサドーレ守備陣の集中力の欠如が招いた失点である。深井や堀米が攻撃に軸足を置きすぎたため、ボールウォッチャーとなってしまった。あの位置から急いで戻っても決められたとは思うが、少なくともDF1人で相手攻撃陣2人を見るという2006年W杯オーストラリア戦のような無様を晒すことはなかっただろう。
この敗戦でコンサドーレは7位に後退。首位セレッソ大阪とは勝ち点差6と広げられてしまった。これで6試合終えて勝ち点10。3勝2敗1分。またバランスのいい星取表となっている。今年も混戦模様となっているJ2だが、自動昇格の椅子は2つ。この試合で見せた連携不足がシーズン初期に見られる「よくある」連携不足ならいいのだが。次節のファジアーノ岡山、そしてセレッソ大阪と難敵がこれから待ち受けている。取りこぼしの出来る試合などないが、また一山来そうな気配だ。次の目安は10節終了後。プレーオフ圏内は確保出ていると今後の応援も身が入るのだが…。
2016年04月01日
FC町田ゼルビア。FC町田のトップチームとして1989年に創設された「FC町田トップ」が前身となり、1997年から現在のクラブ名となる。2011年にJ2昇格圏内であるJFL3位となりJ2に昇格。しかしJ2の壁は厚く最下位から抜け出せず1年でJFLへ降格となってしまった。しかし、監督に復帰した相馬直樹体制2年目となる2015年。遂にJ2・J3入れ替え戦で大分トリニータを下し4年ぶりのJ2復帰を果たした。現在3勝1分1敗、勝ち点10で5位。スタートダッシュを決めたチーム同士、雌雄を決するべく野津田競技場で激突する。
昨年のJ3を最小失点である18点で凌ぎ切ったゼルビア。引き分けが9と多く勝ち切れない試合も散見されるが、堅牢な守備を軸に勝ち点を重ねていたことは想像に難くない。その中心になっていたのがGK高原寿康だ。コンサドーレサポーターにも馴染み深い岐阜出身のGKは、2014年から町田に所属し昇格を決めた15年には全36試合でゴールマウスを守り抜いた。特に大分と死闘を繰り広げた昨年の入れ替え戦。大銀ドームに乗り込んだ第2戦で、MFの森村昂太がファウルによりPKを与えるも、高原が大分FWの高松大樹のPKを見事セーブし、勝利の立役者となっている。また、先ほど登場した森村とボランチのコンビを組むのは李漢宰とコンサドーレと因縁の深い選手がスタメンに名を連ねている。
守備のキーマンが高原なら、攻撃のキーマンは中島裕希になるだろう。2013年J2山形で12ゴールを決めた実績があるストライカーは既に4ゴールあげ、チームを5位に押し上げる原動力になっている。京都サンガ戦での同点弾のようにDFを2枚引き付けてでも頭で決めきれる身体の強さは脅威だ。
ゼルビアの基本陣形は4-4-2。190cmの金聖基を中心に跳ね返し、豊富な運動量を誇る李漢宰が攻守にスイッチを入れる。攻撃のメインは右サイドで、SBの星野悟から鋭いクロスが前線に供給される。その前線で待ち構えるのが191cmを誇る高さの戸島章とゴールの嗅覚に優れた中島裕希の2トップだ。更に独特のリズムで左サイドを切り裂く谷澤達也が攻撃に絡んでくる。当初は攻め急ぐ攻撃陣とDF陣とのギャップがあり陣形が間延びしてしまっていたが、すでに修正されている。相馬体制も3年目を迎え、チームコンセプトの選手間理解は深まっているようだ。攻守の切り替えも早く、ストライカーも居る難敵だ。
とはいえ攻略ポイントがないわけではない。まずは攻撃の中心である右サイドを封じること。先日の京都戦同様、SB星野の裏へ堀米悠斗やジュリーニョを走り込ませサイドに釘付けにしてしまう。するとどうなるか。中央のWボランチを経由しなければ左SH谷澤達也、右SH鈴木崇文にパスが渡らなくなる。そうなればコンサドーレの思う壺だ。中央を固める3ボランチがボールを刈り取り、手数をかけずに前線の都倉賢、ジュリーニョの強力2トップが待ち構える前線にボールを運ぶ。仮にファールで止めても、キッカーには前節直接FKを沈めてノッている福森晃斗が控える。付け加えるならば、町田の3失点のうち2点はセットプレーから失ったものであり、まだJ2のセットプレーの圧力に対応しきれていないように思われる。連動した守備から素早い攻撃につなげ、シュートを「撃ち切れ」ば勝利は見えてくるだろう。2014年の福島時代に町田と一度だけ対戦経験がある堀米悠斗は「当時とチームはあんまり変わっていない。中でつくってサイドから崩せばいける」と攻略法を明かしていた。
しかし、これを避けるために中盤を省略したロングボール放り込みキック&ラッシュ作戦に出られると厄介である。2トップに3バックで対応するというミスマッチに、裏抜けを得意とする中島への対応。マークの受け渡しに失敗し、後ろから走りこんできた選手にミドルをぶち込まれるという未来は回避したい。仮に先制を許せば、ここは町田のホームだ。思う存分強固な守備ブロックを構築し逃げ切りを図るだろう。彼らの今年の目標は「J2残留」。そのためには1点でも多く勝ち点を積み上げることが肝要だ。いかにして彼らを振り切ることができるのか。コンサドーレの底力が問われてくる。また、指揮を預かる四方田監督も「攻守に前志向が強く、攻撃はどんどん前に入れてくるし、守備もどんどん前に来る。それを支えるのが切り替えと運動量と速さ。自分たちもチームコンセプトとして持っている部分なので、そこは負けたくない」と静かに闘志を燃やしていた。
注目ポイントとしては前半30分までにどちらがゴールを奪うか。ゲームの主導権ではなく、ゴールだ。恐ろしく当たり前であり、口にするのもおこがましいが、先制点が大事だ。そして追加点はもっと大事だ。ゴールを奪うという姿勢がチームで共有されれば、もう少しサイドでの攻撃が改善されていくだろう。J1昇格へ向けての茨の道は果てなく険しい。だからこそ攻撃陣の一層の奮起が待たれる。都倉だけじゃなくて俺も居るんだぞ!というぐらいの気概で、ボールがゴールネットに突き刺さる「ガシャッ!」という音を何度でも聞かせてもらいたいものだ。しばらくぶりの3連勝へ向けて、勝利を我らに!We're 北海道コンサドーレ札幌!!
プロフィール
98年J1参入決定戦に敗れ涙に暮れる札幌サポを見たことで、コンサ愛に目覚めた非道民。 何の因果か札幌に居を構え、試合結果に1週間のテンションを左右される日々。 いい年こいてまだ中二病が完治していない。 思い出とコンサの試合と日常をミキサーに投げ入れて、味の素で整えた文章を提供していく。 ご笑覧いただければ幸いだ。
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