2016年06月26日
J1の1stステージは鹿島アントラーズが制した。フロンターレ悲願のタイトル獲得かと思われたが、経験の差か粘り強く勝ち点を積み上げたアントラーズに勝利の女神は微笑んだ。アビスパ福岡との対戦となった本日の試合、特に印象に残ったのは先制点のシーン。右からのCK、ゾーンで守る福岡ディフェンスを掻い潜り柴崎岳から送られたクロスに合わせたのが山本脩斗。直前のCKでもDFに阻まれたものの、上手く抜け出し競り合っていた。セットプレーは確実にモノにするという執念が感じられたゴールだった。また、このゴールは鬼が笑うと思われる方が多いが、来年コンサドーレが昇格した際に改善しなくてはならない点になると感じられた。アビスパ同様、コンサドーレもセットプレーはゾーンで守っているからだ。松本山雅FCに攻略されてしまう「程度」のセットプレーディフェンスではJ1上位に対し守りきることはできない。更なる連携の向上と選手のレベルアップが急務と感じられた。
ともかく、まずは目の前の一戦。ザスパクサツ群馬を倒すこと。これに尽きる。これに勝利し、函館での横浜FC戦そして後半戦開幕のセレッソ大阪戦に好調を維持したまま挑む。そのためには…ということだ。
それではザスパクサツ群馬の現状を確認してみよう。0-8と屈辱的な敗戦となった清水エスパルス戦以降、守備陣を建て直し3試合で負けなしと好調を維持している。とはいうものの1勝2分。対戦している相手も下位に低迷する北九州、熊本、長崎と正直「好調?」と疑問符をつけざるを得ない。2分の内容はビハインドを追いついているという点は評価できるが、先制を許したり逆転されたりと守備陣の不安定さを露呈している。「守備陣の建て直し?」という疑問符も付いてしまっているのが現状だ。
基本フォーメーションは4-4-2。すでに6ゴールを上げている瀬川祐輔と187cmの長身FW小牟田洋佑の2トップに、左サイドから飛び込むような形で今季6ゴールの高橋駿太が攻撃に絡んでくる。彼らを操るのがボランチのベテラン松下裕樹であり、J2最多クロス数を誇る左サイドバック高瀬優孝だ。特に瀬川は最近5試合で4ゴールと好調であり、同じく5試合で2ゴールの高橋と同様チームの攻撃を支えている。好調な攻撃陣と引き換えに失点が多く、総失点数31はツェーゲン金沢に次ぐ今季J2ワースト2位となっている。特に目立つのがセットプレーからの失点で、全体の3割近くにあたる9失点を記録している。他にはクロスから7失点、スルーパスから3失点、30m未満の細かいパス交換から4失点などとなっている。この失点傾向から考えると、コンサドーレとしては今までどおりワンタッチでのパス交換を重ねてゴールに迫りつつ、ゴール付近でファールを獲得して得意のセットプレーの機会を得るというのが勝利への最短コースと思われる。
この試合のキーマンとなるには、2試合ぶりのスタメン復帰となる進藤亮佑を挙げたい。理由としては、群馬の攻撃パターンが左サイドに集中しており、ここの攻略が試合のキモになりそうだからだ。特に群馬のチーム内パス交換ランキングの上位に顔を出す左サイドバック高瀬優孝を自陣に釘付けに出来れば、その1列前に布陣する今季6ゴール6アシストを記録している高橋駿太も守備に時間を割かれる時間が増えるはずだ。コンビを組むマセードとともに、彼らをゲームから消してしまうほどの活躍を期待している。
梅雨時であり日中の暑さが残る中で行われる今日の一戦。これからはこのようなタフなコンディションでの試合が増えてくるだろうと思われる。その中できっちりと下位から勝ち点を奪っていくという試金石になる試合であろうと思われる。1-0とは言わず複数得点を奪い、昇格へ向けてもう一段ギアを上げて行くぞという気合の入った試合をみせてもらいたい。
2016年06月21日
逃れようと、もがけばもがくほど纏わりついて来る蜘蛛の巣のようだった。なんのことはない。ギラヴァンツ北九州の「ドン引き」ディフェンスのことだ。首位のチームに対抗するには正しい対処法と言えよう。まず守備を固め、ホームということで攻勢をかけてくるなら隙を突いてカウンター。池元友樹、原一樹という強力2トップは数少ないチャンスをモノに出来る優れたスコアラーだ。この彼らの術中に嵌ってしまい、コンサドーレは難しい試合を強いられることになる。
個人的に試合中、注意している点がある。この展開が増えると「嫌な展開」「攻めあぐねている」というチェックポイントがあるのだ。それはCBを起点とした攻撃構成。いわゆるロングフィードだ。この試合で言えば増川隆洋が攻撃の起点となる展開が多かった。ギラヴァンツの素早い帰陣の結果、コンパクトな陣形を保つため最終ラインがセンターラインまで上がってしまったコンサドーレ。DFライン裏のスペースも埋められているうえ、狭い陣内に総勢20名の選手が押し合いへし合いしている所に効果的な楔を打ち込むのは試練の技だ。その大役を担う破目になった増川には同情を禁じえないが、どうしてもコンサドーレが攻めあぐねる展開は河合竜二や増川の「どっせい」フィードが目に付く。あくまで個人的に呼んでいるだけで意味はない。ただ、河合の某Dダックのような大きな足で蹴り上げると「どっせい!」って声が聞こえそうじゃないですか?気のせいですか?そうですか…。
引かれた場面における展開力については四方田修平監督も懸案事項として捉えている様で、試合後の会見で「相手が守りを固める中で、どう自滅せずに戦うかというところをテーマにしていました。うまくいったところもありましたが、ピンチを作ったところもありましたし、引かれた場面の崩しの質をもっと高めていく必要があると思います。」と反省の弁を口にしている。
ただ、この試合について実際にピッチに立つ選手たちは「無失点」というところにこだわりを持っていたようだ。今季初ゴールが決勝点となった宮澤裕樹は「決勝点となった得点については、素直にうれしい。今季初得点だったが、取るのであればチームが苦しい時に取りたいと思っていた。」と得点について喜びつつも「無失点で勝てたことも大きい。」と語った。その上でチームが好調の理由を「やはり今のうちのチームは、良い守備から良い攻撃に移るというところがベースになっていて、チーム全体で良い守備ができていたことも勝利の大きな要因だと思う。」と分析して見せた。その守備を預かるDFリーダー増川隆洋も「ここ最近は失点も増えていて、それも先に取られることが続いていた。やはり先制を許してしまうと、そこから逆転をするのは簡単ではないので、やはりまずはしっかりとした守備をするというところから試合に入った。」と守備的に試合に入ったことを認めている。最近の試合と比べてパススピードの遅さが目に付いた北九州戦だったが、安全策を取ったがうえに招いてしまった結果だったのかもしれない。
気になる点をあげればキリがない。都倉賢、内村圭宏の2トップのシュートが0本であるとか、ヘイスが我を押し過ぎてトップ下としては物足りない出来だったとか、守備に軸足を置き過ぎて櫛引一紀とマセードの連携が合わなかったとか。反省材料が得られることは良いことだ。だが久しぶりに「なんとなく」勝ったからこそ、勝って兜の緒を締めよ、だ。
次週は長崎、北九州に続き、またしても下位に沈むザスパクサツ群馬が相手。今年のコンサドーレは「強きを挫き、弱きを助く」と揶揄された下位への取りこぼしは鳴りを潜めている。とはいえやはり油断は禁物。梅雨時の関東地方は不快指数がうなぎのぼりだ。ねっとりと纏わり付くぬるい湿気が選手たちの体力を奪っていくことは想像に難くない。いかに先制点を奪い、アウェイの地で逃げ切ることが出来るか。群馬戦はそこがキーポイントになりそうだ。
2016年06月10日
「ボランチ」。ポルトガル語で「ハンドル」、「舵取り」を意味するこの戦術用語はいつの間には市民権を獲得し、「ゲームの司令塔として攻守の切り替えや絶妙なパスを送る役割」だと理解されつつある。彼もしくは彼らのパフォーマンスが試合の趨勢を左右し、ゴール裏から声を嗄らす僕らの喜怒哀楽までもコントロールする。それゆえ松本戦に宮澤裕樹が出場できなかったことが悔やまれる。たらればで発言する愚をあえて犯す。宮澤主将が出場していたならば、試合結果はどうあれ前半は最悪でも1失点で終わっていただろう。
なぜこのように考えるのか。前節の千葉戦では稲本潤一の負傷交代からバランスを崩したのは、中盤でボランチ堀米悠斗が落ち着きを欠いたからだと考えている。勿論フォローするべき上里一将がいささか観念的主観的ではあるが、ふがいなかったからだと断じることも出来よう。実際上里自身が試合勘を欠いていたと認めているのだから。それでも自身の果たすべき役割を見失い、どっちつかずの対応を取り、DFラインの前にスペースを与えてしまったのは「ボランチ」の責任である。これは松本戦でも繰り返された。この試合を動かしたのは松本FW高崎寛之だった。前半23分、コンサドーレDF進藤亮佑が与えたファウルによりFKのチャンスを得ると、ペナルティエリア角の手前でキッカー宮阪政樹からのクロスをニアサイドでフリーになった高崎寛之がうまく頭で流し込み、札幌ゴールを揺らす。コンサドーレのセットプレーにおける弱点を衝いた、ある種松本のスカウティングの妙が色濃く出た素晴らしいものだった。ファウルを与えた進藤は「クリアなど大人のプレーをしないといけなかった。(FKは)ゾーンDFの盲点をつかれた」と反省を口にする。高崎はセットプレー開始時点からフリーであり、セットプレー時にはゾーンで守るというのが今季のコンサドーレの方針であるのは重々承知だ。だが、「もし」マンツーマンであれば増川隆洋あたりがビッタリとマークし自由にさせなかっただろう。その結果別の選手がフリーになるなど弊害は勿論あるが…。また、都倉賢やジュリーニョが近くにいたが、彼をマークするまでは至らず、あっさりと他の選手に釣られフリーにしてしまった。キック直前GK金山隼樹が一声かけてチェックを促していればと思うが、映像からは金山がどのように対応したのかうかがい知ることは出来ない。昨年よく見られたセットプレーの守備という弱点が顔を出した苦い失点となってしまった。
2点目も狭い局面で押さえられず、サイドチェンジを許し後手後手を踏んだ結果の失点となった。後半セットプレーから都倉の2得点で追いついたものの、ゴール前で2対2の局面を作られるなど松本の攻撃の理想形を体現してしまった。その結果力尽き2-3で敗戦。無論、四方田修平監督は「後半追いついた後に引き分けでOKとはせずに、3点目を取りにいく戦いをした。(相手に)素晴らしいゴールを決められて負けたが、積極的に戦ったことに悔いはない。」とある程度リスクを承知で選手たちを送り出したと認めている。その上で。「局面で勝っていたこと、都倉が2点を入れて同点にしたことを評価したい」と試合を総括した。開幕から13試合で6失点だった札幌がここ3試合で6失点である。2試合連続で前半に2失点しているのが気がかりな上、サイド攻撃を起点とした失点が多く、GK金山も「クリアした後を奪われて失点している」と課題を口にしている。2試合連続で先制点を奪われ嫌が応にもリスクを取らざるを得ない状況に陥っている。どのように守備を改善していくのか、DFラインをまとめる増川はこう口にする。「苦しい時期は必ずある。こういうときに崩れないチームが強い」。失点にばかり目が行くが、攻撃陣は好調で3試合で7得点だ。決して悲観することはない。どのようにリスクマネージメントをし、最高の結果を得るか。今年のコンサドーレはこれが出来るチームだと思っている。勝利をもぎ取った松本山雅FC反町康治監督は試合後の会見で、J1で戦った昨季開幕戦を例に引き「昨季の開幕戦(名古屋戦)もこんな感じの展開で、向こうもなりふり構わずやってきて苦労したわけですが、そう思うと札幌さんはすでにJ1に値するチームだなと感じましたね。」と上から目線なのが鼻に付くところであるが、一定の評価をコンサドーレに対し与えている。古くはアルビレックス新潟、湘南ベルマーレと戦術家として率いたチームをJ1に送り込んできた彼からの評価はありがたく受け取りたい。
次の相手はV・ファーレン長崎。策士高木琢也監督はおそらく松本の戦術を参考にし、コンサドーレ対策を練り上げて札幌ドームに乗り込んでくるだろう。正念場が続くが、まだ首位である。しかも1試合少ないのも関わらずである。目の前の試合を着実に乗り越え、最高の結果を掴んで欲しい。
2016年06月08日
「今の札幌に勝てるのは松本しかない」松本山雅FC、DF當間建文はこう語る。勿論「首位だけに勢いがあるが」と札幌をリスペクトしつつも、3連勝でホーム「アルウィン」に首位北海道コンサドーレ札幌を迎えるに当たり、思わずこぼれた本音かもしれない。成績は8勝5分3敗 VS 10勝3分2敗と差はあるものの、得点は22 VS 20、失点はお互い9とJ2最小タイと堅守を誇る。まさに雌雄を決する一線の様相を呈している。
それでは松本山雅FCの陣容を確認してみよう。基本フォーメーションは3-4-2-1。1トップを務める188cmの長身FW高崎寛之は得点こそ3点に留まるものの、懐が深くボールを収め2列目以降の攻め上がりを促す厄介な相手だ。また、ボールを収めるだけでなくドリブルでペナルティーエリアに侵入しファウルを誘うなど老獪なプレーを見せる。いうなれば松本の「都倉賢」だ。彼の作ったスペースを活用するべく猛進してくるのが、右WBの田中隼磨と2列目のMF工藤浩平だ。数値的にもチームで1,2を争うドリブラー。特に田中隼磨は勢いそのままにサイドを抉り鋭いクロスを上げ、中央で待ち構える高崎ら長身FWが仕上げをする。FWが落としたボールに反応するのが2列目の工藤浩平だ。チームトップの4ゴールを上げるだけでなく、アシストも2つ記録するなどラストパスの出し手としても侮ることが出来ない。彼ら3人だけでも充分に恐ろしいのに、その彼らを操る存在がいる。それがボランチの宮阪政樹だ。今年モンテディオ山形から移籍してきた26歳のファンタジスタは、すでにチームの中心に君臨している。前述の田中隼磨と同様、パスの受け手出し手として攻撃に顔を出し牽引している。彼のタクトに応え、ロングボールやサイドチェンジを基本とした「緑の津波」と言うべき縦に早いカウンターが炸裂する。また宮坂はセットプレーのキッカーとしても精度の高いクロスを供給しており、総得点20点のうち8点がセットプレー絡みのものだ。加えてフリーキックだけでなく、スローインまでも得点のチャンスに変えてしまうのが松本の特徴だ。今季から大宮アルディージャに移籍してしまったが、「人間発射台」岩上祐三から引き継がれた「弱者の戦法」は健在である。少しも気を抜くことができない相手である。そんな「山雅四天王」とも言うべき高崎、田中、工藤、宮坂がコンサドーレの前に立ちふさがっていると言えよう。
対するコンサドーレは松本とどう戦うべきか。まずは不安材料だ。なんといっても3人のCBで1トップを見るというアンバランスさだ。基本的に守備に必要な選手の数は「相手の攻撃の選手の数+1」と言われる。つまりカバーリングの選手が「+1」の部分、あとはマンツーマンでマークということだ。そう考えればどうしても1人余る。そして暇があれば試していただきたいのだが、コンサドーレの基本布陣3-4-1-2と松本の基本布陣3-4-2-1を紙に書き出し重ね合わせてみて欲しい。するとコンサドーレの両サイドに大きなスペースが生まれているのが分かるだろう。1トップの高崎に対しCBトリオが互いに声を掛け合い、GKからのコーチングを参考にしながらスライドを徹底しなければ、このスペースを田中や工藤に良い様に使われてしまうことになる。これが守備面での不安。そしてもう一つの不安が攻撃面、トップ下に君臨するジュリーニョに関してだ。まだ手元に重ね合わせたフォーメーション表があれば見ていただきたい。お気づきだろうか。トップ下に位置するジュリーニョの周りを松本の選手が4人、彼を取り囲んでいるのだ。工藤、宮坂と攻撃のキーマンが4人に含まれているとはいえ、ジュリーニョの自由度合いはかなり制限されてしまうだろう。いかに彼のマークを外すか。チームの連動性が問われてくる。
以上を踏まえた上で改めてコンサドーレはいかに戦うべきか。基本的には中盤での潰し合いになるだろう。出足の早いプレスから宮坂、工藤を自陣に押し込んでしまう。そうすれば前線の高崎にロングボールを放り込むしかなくなり、DF陣の高さに分があるコンサドーレにとって対応しやすくなるだろう。無論先ほど述べた守備スライドを徹底した上でだが。この点から言えば、コンサドーレのキーマンは高崎とマッチアップするであろうDF増川隆洋と攻守の要MF深井一希になるだろう。彼らがコンパクトに陣形を保つことが出来れば、そう易々とスコアが動くことはないだろう。これに加えて攻撃陣のキーマンを上げるとすれば、石井謙伍、マセードの両WBではないだろうか。彼らが4人に囲まれるジュリーニョのフォローに入ることが出来れば、独特の攻撃センスを持つ彼のことだ、思いも寄らないようなアイディアで松本ゴールを脅かすだろう。また4人に囲まれるということはドリブル突破の際にファウルを貰う可能性が高まることも意味する。松本の9失点のうち4失点はセットプレー絡みだ。相手ゴール近くでファウルを獲得すれば、コンサドーレには福森晃斗がいる。彼の左足からのクロスに待ち構えるのは4試合連続ゴール中と絶好調の内村圭宏、そしてフィジカルモンスター都倉賢だ。この2枚看板は松本にとっても脅威だろう。惜しむらくは鼻骨骨折の恐れがあるということで怪我明けの宮澤裕樹が試合に出られないことだ。ベストメンバーではないが、誰が出ても試合のクオリティーが落ちないのが今季のコンサドーレの特徴だ。前節に引き続きボランチでの出場が予想される堀米悠斗には、「このポジションは俺のもんだ!」というような気迫とより一層の奮起を期待したい。
連勝中の相手。アウェイの地。勝ち点1を持ち帰れば充分と考えるのは当然だろう。ここで四方田監督がどのように松本戦を捉えるかがポイントとなってくる。引き分け上等なのか、それとも勝つしかない試合なのか、あわよくば勝てたら良いななのか。どのようにリスクを管理し選手を運用するのか。こんな面白い試合を平日ナイターに持ってきてしまった今年の日程くんに苛立ちを覚えるが、一方で面白い試合になるように今までの試合日程を組んできたのかと考えると舌を巻く。はたしてどんな試合になるだろうか。なんにせよ、見ごたえ充分の試合になることは間違いなさそうだ。
2016年06月07日
札幌ドームが悲鳴に包まれた。その視線の先には苦悶の表情を浮べた背番号17が居た。5試合ぶりの先発出場は6連勝の始まったセレッソ大阪戦以来。前節で退場になってしまった深井一希と軽い肉離れを発症した宮澤裕樹が欠場したことで巡って来た先発の機会。同じく先発でのボランチ出場は久しぶりである堀米悠斗と共に、千葉のパスコースをことごとく潰していく。というより、堀米にリードを付け千葉オフェンスを狩の如く追い込んでいったという印象だ。調子が良かったがうえに起きてしまった事故だった。右膝前十字靱帯断裂、全治8ヶ月。ベテランの域に足を踏み入れてしまった稲本潤一にとってあまりにも痛すぎる怪我での離脱。前半14分という早い時間に守備の要を失ってしまったコンサドーレは、この動揺を収めるまでに授業料として痛い2失点を喫してしまうことになる。
稲本に代わってボランチに入った上里一将。「コンディションは整えてきた。」と強がったが、「試合勘が戻らないところは修正していきたい」と反省を口にした。コンビを組んだ堀米とどちらがスペースを埋めるかといった役割分担が上手くいかず、そのスペースを使われてしまうといった点が散見された。ここを埋めていれば阿部翔平のゴラッソは防げたかもしれない。痛い授業料だったと言えよう。試合勘が戻らず、視野が狭いという印象を受けたこの日の上里。右サイドのマセードがオーバーアクションでボールを要求していたが、彼の望むタイミングでフィードが渡ることは終ぞなかった。その代わりに生き生きとサイドを抉ったのが石井謙伍だ。千葉の右SB多々良敦斗は片翼を担う阿部が攻撃の起点となる一方で、守備的な役割を果たし危ういバランスの千葉ディフェンスを支えていた。これがこの試合は裏目に出て、一気呵成に仕掛けてきた石井を止めることは出来なかった。このドリブルでの突破がコンサドーレに勢いを与え、前半のうちに内村圭宏の4試合連続ゴールで1-2として折り返す。そして待ちに待ったヘイスのゴールだ。持ち前のフィジカルの強さでボールを収め、都倉賢にシンプルにはたく。斜めに走ったヘイスはその都倉からの折り返しを受け左足を合わせた。…言いたいことは分かる。だがここは素直に、ヘイスの来日初ゴールでコンサドーレが同点に追いつく。同点に追いつかれたジェフはFWエウトンに替えてDF大久保裕樹を投入し、守備を固め引き分けでの勝ち点1を狙う。同点となった時間帯からコンサドーレがボールを保持する時間帯が増していく。カウンター合戦となったが、後半アディショナルタイム2分過ぎにコンサドーレが得たCK。福森の左足から放たれたクロスにヘイスが反応するも、枠を捉えることなく結局2-2のドローとなってしまった。
なってしまった。と書いたが、タイトルどおり「もぎ取った勝ち点1」である。稲本の怪我での離脱に動揺はしたものの、今季初の2点差を追いついての引き分け。先制され試合の主導権を奪われたところから、見事盛り返して見せた。ここで得た勝ち点1のおかげで2位町田ゼルビアに勝ち点2差をつけることが出来た。仮でも負けることは考えたくないが、もし順位が入れ替わったとしても勝ち点差を1で追いかけることが出来る。この勝ち点1はコンサドーレにとって非常に大きな1点になった。一方2点差を追いつかれたジェフ千葉。勝ち点2を失ったと考えざるを得ない。その中で2枚目のカードとしてFWに替えDFを入れるという交代策は、私には弱気に映った。6試合無敗という結果は残したものの、内訳は2勝4分。2戦連続のアウェイ、6連勝中で首位に立つチームが相手。そう考えれば引き分けという結果は充分かもしれない。だが、2点先行しても勝てないというのはJ1昇格を目標とするチームにとって由々しき事態、ある種の格付けが成されてしまったと考えなくてはならないのではないか。「知らず知らずのうちにチームが守備的になっていくこと」これを危惧していたのは株式会社コンサドーレ社長、野々村芳和だ。果たして関塚隆監督は気付いているのだろうか。誤ったメッセージがチームに伝播していくことを。人の振り見てなんとやら。この試合を見る限り、コンサドーレの用兵術・戦術に弱気なところは見られない。稲本の長期離脱という最悪の事態が発生し、さらに最大の難関が水曜日に迫っている。松本山雅FC。目下3連勝中。得点20、失点9で3位まで順位を上げてきている。その彼らのホームに乗り込んでどこまで闘えるか。シーズン前半戦最大の山場だ。現地に飛ぶことは出来ないが、心は共にある。折必勝、コンサドーレ!
2016年06月04日
24、20。この数字が何を示しているのか。勝ち点?たしかに15節終わった時点での勝ち点に見えるかもしれない。だが今回対戦する千葉の勝ち点は23であり、1点足りない。正解を述べよう。それは昨シーズンオフにジェフユナイテッド千葉が行った「血の入れ替え」である。24名退団、20名入団。もともと所属していた佐藤勇人をして「自分が移籍してきたような感覚」と言わしめたDr.関塚による大手術であった。
だが、現時点で患者に快方の気配は見られない。関塚隆が監督に就任して3年目。2014年は鈴木淳から途中でバトンを受け、昇格プレーオフまで漕ぎ着けることが出来たが、昨シーズンは勝ちきれない試合が多く9位に沈みプレーオフ進出を逃した。そこで行った大手術。その結果が6勝4敗5分で8位。プレーオフ圏と勝ち点2差というのは、言い方は悪いが昨シーズンまでのジェフと大差は感じられない。ある種総入れ替えしてこの順位をキープしているのは監督の手腕の成せる技と評価するべきかもしれない。この5試合負けなしで着実に勝ち点を積み上げてきており、さすがは古豪ジェフユナイテッド千葉と名将関塚隆、侮ることが出来ない。
ここで今シーズンのジェフ千葉の陣容についておさらいをしておきたい。基本布陣は4-4-2。近藤直也・イジュヨンのCBコンビが最後尾を支え、左サイドの阿部翔平・井出遥也が攻撃を牽引する。彼らのドリブル突破にボランチの長澤和輝が絡み、中盤を撹乱する。そしてフィニッシャーとして前線に構えるのがエウトン・船山貴之の強力2トップだ。阿部翔平のクロスに彼らが反応することでゴールが生まれる。現に得点の40%近くはセットプレーとクロスから生まれており、彼らの活躍無しに千葉の躍進はない。そして22%を占めるショートパスからのゴールというのも、井出・長澤といったドリブルを得意とする選手が前線を掻き回すことで生まれている。ストロングポイントをチームとして持っており、少しでも守勢に回ってしまうと試合の主導権を奪われかねない。
ストロングポイントとウィークポイントは紙一重。前節千葉と対戦したV・ファーレン長崎は攻撃のキーマンである左サイドバックの阿部翔平からのクロスを警戒し、素早いプレスで自由を与えずに縦に速い攻撃へとつなげていた。ドリブルによる攻め上がりの機会を封じられた千葉はエウトンをターゲットに長いボールで対抗した。どちらも狙い通りの展開で1点ずつを取り合い、結果1-1の引き分けとなった。試合後、長崎の高木琢也監督は「キープして逆サイドに展開していくというトレーニングでやっていた形で得点を取れたこと。」を収穫としてあげた。また、11節で同じく1-1で引き分けたカマタマーレ讃岐の北野誠監督は試合後の会見において、選手交代の意図を問われ次のように答えている。「一番重要だったのが中盤のコネクターの部分です。永田(亮太)に代えて、綱田(大志)を入れましたが、(相手のボールが)サイドに入ってから中を固めるというところが狙い通りだった。そこで全てボールを切ることができたので、千葉は完全に中で勝負するしかなくなった。(後半は)うちがサイドを全て支配できたと感じています。」そしてこうも言っている。「後半はしっかりと狙い通りのボールの動かし方で点が取れた」と。彼らの言葉を借りれば、千葉のウィークポイントは「中盤の展開力」ということになる。
ラストパスの出し手やパス交換などのデータから浮かび上がってくるキーマンは、左SBの阿部翔平だ。アシストこそ1と少ないものの、ラストパス供給はチームトップ。FKのキッカーも任されており、SBというポジションもあり攻守の要とも言える重要人物だ。そこを封じてしまう。パスもクロスも左サイドの阿部、井出から上がっており、そのストロングポイントを封じられたジェフが取れる戦術。それが「ロングボール」ということだったのだろう。
前節の山口戦でもコンサドーレのストロングポイントとしてあげた「札幌山脈」。これはジェフにも勿論有効である。ロングボールを弾き、セカンドボールを素早いプレスから物にしてしまえば試合の主導権はコンサドーレのものとなるだろう。実はジェフのウィークポイントはクロスからの失点にある。全16失点中5点をクロスから、6点をセットプレーから失っている。近藤直也181cm、イジュヨン186cm。決して小柄なわけではないが、なぜか失点を重ねている。連携不足を露呈してしまっているのかもしれない。その隙を逃さないのが今のコンサドーレだ。前線の「3枚刃」が全得点のうち半分を叩き出しており、彼らにボールを運ぶことが出来れば得点のチャンスも生まれることだろう。
やはり重要なのは試合の入り方と先制点を奪うことが出来るか、これらに尽きる。今のコンサドーレは首位であり、各チームが勝ち点を奪いにやってくる。3だろうが1だろうが勝ち点は勝ち点。あわよくば大きいほうを持って帰りたいのが人間というものだろう。そんな彼らをきっちりといなして、土産代わりの勝ち点3を奪う。目下の懸案事項はレッドカードによる出場停止で欠場深井一希にかわり宮澤裕樹とコンビを組むのが誰かということ。中盤の差が試合結果として現れる試合となりそうだ。四方田監督の悩みは尽きない。最良の結果を出すことを期待している。
プロフィール
98年J1参入決定戦に敗れ涙に暮れる札幌サポを見たことで、コンサ愛に目覚めた非道民。 何の因果か札幌に居を構え、試合結果に1週間のテンションを左右される日々。 いい年こいてまだ中二病が完治していない。 思い出とコンサの試合と日常をミキサーに投げ入れて、味の素で整えた文章を提供していく。 ご笑覧いただければ幸いだ。
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