2016年05月30日
あっという間の45分だった。久しぶりに選手が目の前で躍動する姿に目を奪われ、気がついたら前半が終わっていた。面白い。今年のコンサドーレのサッカーは面白い。増川隆洋を中心としたDFラインはボランチと連携し、常にコンパクトに陣形を保っていた。そして統率する増川自身も機を見て攻め上がり、都倉かな?いや増川だ!?とグラウンダーのクロスに滑り込むシーンが見られた。某田中さんの相棒を務めていたのは伊達ではない。山口のキーマンである庄司悦大に仕事をさせず、インターセプトからショートカウンターに移れたのは彼の果たした役割も大きいだろう。
また、この試合は山口にとって「アウェイの洗礼」を浴びせるものでもあった。羽田空港の滑走路が事故のために閉鎖された影響で、北海道への到着が試合当日となってしまうアクシデントが起きてしまったのだ。新千歳空港に到着したのが午前11時とキックオフの3時間前。長時間の移動で選手たちの疲労もあっただろう。それに重ねてこの日の札幌ドームは通常よりも芝が長めになっており、早いパスワークを身上とする山口にとって不向きなピッチコンディションとなっていた。「なかなか芝生に慣れることができなかった」と上野展裕監督も悔やむように、まさにアウェイの難しさを体感した試合となったようだ。
戦前の予想とはことなり3-1と思わぬ大差がついたこの試合。守備面での貢献は増川だが、攻撃面ではやはりジュリーニョの果たした役割が大きい。ダメ押しとなる3点目のループシュートも見事だったが、やはり先制点につながるペナルティーエリア内でのドリブル突破は彼ならではのものだった。前線でタメを作り攻撃の起点になる。古き良き時代の10番がしばらくコンサドーレには不在だった。小野伸二を獲得したものの、怪我が続き彼をチームの中心に据える事は出来なかった。その中で彗星のように現れたのがジュリーニョだった。実績十分のヘイス、右サイドの職人マセードの影に隠れ、スキンヘッドが小野と見分けがつかねぇよと口の悪い一部サポというか自分に言われていた彼。あれよあれよという間にトップ下に定位置を獲得し、いまやコンサドーレの中盤に君臨している。遊び心溢れる独創的なテクニックと大きなサイドチェンジで相手ディフェンスを翻弄し、チャンスを生み出していく。都倉賢7点、内村圭宏5点、そしてジュリーニョ3点。チーム全ゴール20点のうち実に75%を彼ら3人で生み出している。1点しか取れないと嘆いていてもなんだかんだ20点はJ2で4位の成績であり、決して今年のコンサドーレは守り勝つだけのチームではないのだ。
ジュリーニョの活躍について述べてきたが、早いプレスと独創的な攻撃センスを持つ外国人が攻撃を牽引するチームが前にあったなぁと記憶を辿ってはたと気がついた。2007年J1に旋風を巻き起こした柏レイソルだ。この年J1に昇格してきた柏レイソル。石崎信弘監督体制となって2年目となったこのシーズン、石崎監督らしい4-2-3-1を基本とした堅守速攻を武器に一時首位に立つなど台風の目としてJ1を席巻した。ボランチの山根巌とCBの古賀正紘を中心とした守備陣は安定しており、無失点試合は14を数え総失点36は3位タイと着実に勝ち点を積み上げていくことができた。この堅守をベースに仕掛けたショートカウンター。この攻撃陣を牽引したのが「魔術師」フランサだ。ポンテ、ベルバトフとともにレバークーゼンで「デンジャラス・トライアングル」を形成したブラジル人テクニシャンは、1TOPとしてポストプレーをこなすだけでなく、中盤に下がって惚れ惚れするようなボールタッチで相手DFを翻弄した。そこで攻撃のタメが出来ることにより、2列目以降の菅沼実・李忠成・鈴木達也らがDFラインの裏を狙って飛び出しゴールを奪うことができた。総得点こそ43点で下から数えたほうが早いが、李の10ゴールを筆頭にフランサ8、菅沼6など前線のキーマンに得点が生まれていた。
このフランサの役割を今年のジュリーニョは果たしているのではないかと思っている。コンサドーレは近年プレスからのショートカウンターという戦術が基本になっていた。その基礎となるのが守備陣でセットプレーの守備を除けば、おおむね堅守といって差し支えない安定した陣容を誇っている。一方攻撃陣に目を転じると、ゴールハンターは居るものの、ゴール前での精度や攻撃アイディアを欠き。社長就任から3年目を迎える野々村芳和もこの問題を懸案事項として捉えており、選手の成長を促すために小野伸二や稲本潤一といった世界を知るベテランたちを獲得してきた。そして今年、ついにすべての問題にケリがついた。全員守備、全員攻撃。攻守に連動した素晴らしいチームに進化したのだ。
唯一つだけ不安な点を上げるとすれば、怪我である。2008年の柏はフランサの怪我での離脱から成績を落としていった。天皇杯で準優勝したものの、2009年にはガラスのエースとなってしまった彼への依存度の高さから16位でJ2に降格してしまった。これからシーズンの折り返し地点、そして夏が始まる。チームとして乗り越えなければならない正念場に無傷で彼が立っているか否か。心配御無用といえるような選手の台頭が待たれる。
…長々と書いてきたが勝てばええんじゃ。勝ったから悲壮感もなく臆面もなくこんな記事が書けるんじゃ。魔術師ジュリーニョ。もっと俺らを躍らせてくれ!!アレ!ジュリーニョ!!
2016年05月27日
J2に旋風が吹き荒れている。レノファ山口という名の嵐が。14節終了時点で21得点を挙げ、すでにジェフユナイテッド千葉・セレッソ大阪という昇格候補をともに4-2というスコアで打ち負かしている。J3で猛威を振るった攻撃力、もとい爆撃力は健在なようだ。
4-2-3-1のフォーメーションをベースに、攻撃のタクトを振るうのは4月度月間MVPに輝いた庄司悦大だ。チーム内でのパス交換ランキングでは上位10位までの全てに出し手・受け手として彼の名前が並んでいる。この絶対的な司令塔から放たれたパスに反応するのが2列目に控える3人衆だ。左から島屋八徳、福満隆貴、鳥養祐矢が虎視眈々とDFラインの裏へ飛び出すタイミングを狙っている。そして忘れてはならない男が1トップを務める中山仁斗だ。180cmの長身を活かしチームトップの5点を挙げている。だが前線にだけ目を向けていては山口の恐ろしさは分からない。侮れないのは両SB。彼らが前述のパス交換ランキングのトップ2なのだ。左の香川勇気、右の小池龍太。庄司がボールを受けた瞬間、チームの攻撃のスイッチが入りSB2人が走り出す。パスコースを作り出し、流れるようなパス交換で相手ゴールに迫る。まさに「全員攻撃」。恐ろしい戦闘マシーンを上野展裕監督は作り上げたものである。
恐ろしいチームである。こんなチームに決定力不足のコンサドーレは勝てるんだろうか。たった1点しか取れないコンサドーレでは先制しても追いつかれてしまうじゃないかと。…悲観する必要はないんじゃないだろうか。というより普通にすれば勝てると思っている。そう考える理由は2つある。
まず1つ目は「プレスに弱い」こと。前節0-3でV・ファーレン長崎に敗れたレノファ山口。その敗戦に関して山口DF小池龍太は「長崎さんが自分たちのサッカーに対する分析をしてきて、自分たちが掛けられたくないこと(プレス)をしてきたという印象が強いです。」と語っている。戦略家である敵将、高木琢也監督にとっては会心の勝利だったようで、「今日は山口がボールを出してくるときの動きやタイミングを考えて、対応したことがうまくはまったし、ボールを奪ってからもトレーニングでやってきたことをしっかりやってくれた。レノファのMFが下がり気味にボールを受けたときに、必ず走り出す選手がいる。そこを抑えていくとボールをとりやすい」と山口の弱点まで語ってくれた。プレーする選手が自覚しているプレスへの苦手意識。ここを衝いて勝利を収めたチームがもう1つある。第12節1-0で完封勝利を挙げたツェーゲン金沢だ。森下仁之監督は「縦のパスコースをしっかり消した中で、しっかりボールにアプローチするため、出るところは出ていく。攻撃のところも手数が掛かっていた部分があった」と語り、山口がポゼッションするときには前から厳しくプレッシャーを掛けた。ボールを奪うとアーリークロスや縦へのフィードを使い、シンプルに前線に当てて、ゴールへ迫った。興味深い点は両者とも山口と対戦した時点で最下位に沈んでいたことだ。そう、司令塔である庄司を潰してしまえばパスの出し手が居なくなり、攻撃力は半減どころか無力化されてしまう。その結果を如実に表すように、彼らが敗戦した試合は全てが無得点なのだ。
彼らが苦手なプレッシングは今年のコンサドーレの持ち味と重なる。久しぶりのホーム札幌ドームで気の抜けたプレーは見せられないはずだ。試合開始直後から激しいプレッシングを掛け、相手陣内に押し込もうとするだろう。これは願望もあるが、根拠がないわけではない。山口のキーマンである庄司はWボランチの右に入るケースが多い。勘の良い方は気付かれたかもしれない。彼とマッチアップするのが誰なのか。そう「俺らの10番」宮澤裕樹だ。今季から主将を務める彼は、攻守両面で一皮剥けた様に思われる。絶対の自信を持ってプレーしており、キャプテンとして責任を持ってキーマンを封じてくれることだろう。
そして2つ目。山口は「セットプレーに弱い」。21得点という攻撃力は確かに脅威だが。彼らは19失点している。そのうちセットプレーで8失点、こぼれ球を押し込まれたのが2点、計10点をセットプレー関連で失っている。これは失点の約半分を占めている。原因はおそらくCBにある。DFにとって身長が全てではないと思うが、身長もDFの才能のうちだろう。左CB北谷史孝は180cm、右CBユンシンヨンは183cm。他のフィールドプレイヤーに目を移しても170cmそこそこの選手が目立つ。そのためフィジカル力押しのチームには分が悪いだろう。だからといって前線の「電柱」にクロスを入れてゴールを狙おうとすると、そう簡単には行かない。実際19失点の割りにチームとしての守備指標はJ2トップの数値を叩き出している。これはボール支配率がリーグトップであることも関係しているが、タックル数2位・インターセプト数3位という攻撃の芽を摘む全員守備の意識の表れでもあるだろう。
ここでコンサドーレの得点パターンを見てみよう。セットプレー・こぼれ球からの得点は5。全17得点のうち3割強を占めている。セットプレーとなれば191cmの増川隆洋を筆頭に187cmの都倉賢、182cmの宮澤裕樹など180cm前後の長身選手が並ぶ。またキッカーの福森晃斗はすでに2度直接ゴールネットを揺らしている。このような機会を増やすためにも、内村圭宏・堀米悠斗・荒野拓馬などがドリブルで敵陣深くまで抉り、ファールを誘うようなプレーを心がけなくてはならない。両サイドを押し込み、相手ゴール近くでプレーする機会が多ければ必然と得点のチャンスも増えるだろう。
結論としては、コンサドーレとしてあえてやり方を変える必要はない。今年のチーム戦術を継続する。プレスを掛け、キーマンを潰し、素早いカウンターから試合の主導権を握る。そして先制点を取ることが出来たら、相手がバランスを崩して攻めてくるまで粘り強く対応し、その綻びをカウンターで切り裂く。この必勝パターンを継続することができれば、勝利が近づく。
1-0で続く連勝街道に一抹の不安を覚えている方が居る。株式会社コンサドーレ社長、野々村芳和氏だ。9年ぶりの5連勝にチームの成長を感じ、心安らかな日々を過ごしている野々村社長だが、苦言を呈するのも忘れていなかった。何を危惧しているのか。それは「知らず知らずのうちにチームが守備的になっていくこと」。この「知らず知らず」というのが問題らしい。先制点を挙げているうちはいいが、得点が産まれなくなると昨年のような引き分け地獄に陥ってしまう可能性がある。攻撃におけるリスク回避が先にたち、パススピードが落ち足元で貰う選手が増えることで運動量が落ちていく。この段階に無意識で踏み込んでしまえば抜け出すのは容易なことではない。こうならないために、チームに一番近い部外者として提言しているんだと社長は語っていた。
1-0というスコアは美しい。先制点を奪い、勝利を目指して攻めに掛かる相手チームをいなして完封する。追いつかれるかもしれないスリルがあり、最後まで目を離すことができない。だが、3-0というスコアも良いものだ。なにより心臓に優しい。そして3度もゴールシーンで喜ぶことが出来る。しかも完封勝利だ。完膚なきまでに相手を打ち倒した勝利といえよう。先制点を取っただけで満足しているとは思わない。常に追加点を奪うんだという意識を持ってプレーしてもらいたい。なんであれ、まずは勝つこと。おそらく心臓に悪い試合になるだろうから、皆様気を強く持ってドームに集うとしようじゃないか。
2016年05月24日
「撃てば入る!」かつてこう豪語した男がいた。あの日、昇格を決めた喜びそのままに道内TV各局を行脚した札幌イレブン。昇格を決定付ける2ゴールを決めた背番号13番は、初めてのビール掛けに目元がトロンとなりながらも言い切った。「撃てば入る」と。その男の名は内村圭宏。6戦4発。エースの帰還だ。
過去4戦未勝利だった「鬼門」讃岐戦。試合立ち上がり早々、高木和正のFKからゴール前フリーになったエブソンに狙い澄ましたクロスが上がる。これはエブソンが上手くミートし切れず枠を大きく外れたものの、あわやというシーンを作られてしまった。ファーサイドでエブソンをマークしていた宮澤裕樹が、外に流れてきた永田亮太に釣られてしまい、スルッと抜け出したエブソンにボールが渡ってしまった。昨シーズンはセットプレイからの失点が多かったので、今後も「兜の緒を締めよ」ではないが、しっかりと反省すべき点は反省してもらいたい。
なぜこのシーンを細かく上げて反省を促したか。開始3分という一番集中していなければならない時間という点もあるが、…この場面以外特に危ない所がなかったからだ。確かに後半は風下に立ち、サイドを抉られゴール前の混戦からシュートを撃たれるシーンもあった。とはいえ讃岐の枠内シュートは試合を通して1本のみ。「J1はこんなもんじゃなく一瞬の隙が命取りになる!相手に助けられた。今回も運良く勝てただけ。」このような意見も勿論あってしかるべきだ。
だが、先取点はコンサドーレに入った。綿密なスカウティングを活かし、それをプレーとして実現して得たゴールという結果。これはチームの成長以外何物でもない。飛行機を乗り継ぎ、気温28℃湿度40%というアウェイの地。このタフなコンディションの中、ジュリーニョの創造性溢れるパスワークを活かしワンタッチでボールを繋いでいく。宮澤のワンツーや都倉賢の反転からシュートは精度こそ欠いたが、ゴールの匂いを感じさせる見ごたえのある崩しだった。そして産まれた内村のゴール。これはどうすることも出来ない、非の打ち所のないゴール。讃岐GK清水健太は不運だったとしか言いようがない。
「後半はボールを動かしながら無理はしない、しかし2点目を取りに行こうと入った。」と四方田修平監督は安全運転に終始した。小野伸二やヘイスといった攻撃的な選手を投入したが、より攻撃的にいくのならば交代の順番は逆だっただろう。分かりやすいメッセージはヘイスという「ストライカー」を投入した上で、小野伸二という「プレーメイカー」を中心に「攻撃のギアを上げる」。ただ、ヘイスのプレス技術に関して不安が残るため、バランスを意識した上で小野の投入を先にしたのだろう。あくまでも素人考えなので、当たるも八卦なところで聞き流していただいてかまわない。
「竜二さんが入って引っ張ってくれたので、移動の疲れがある中、踏ん張れた。」とは3バックの中心となり獅子奮迅の活躍をしている増川隆洋の弁だ。後半34分、堀米悠斗に替え河合竜二が投入されたことでチームの意思は統一された。前節とは違う「この試合勝つぞ」という強烈なメッセージだった。アディショナルタイムを含めた残り15分。足を止めることなく「最後はよく体を張って頑張ってくれた。」
9年ぶりの5連勝。すべて1-0での勝利だ。宮澤キャプテンはこの連勝に手ごたえを感じており、「勝ち癖がついている。しっかり点を決めきって守り抜ける。攻守の切り替えもよく、球際も100%の力で戦えているので負ける気がしない」と口も滑らかだ。追加点が取れないのが課題と見えるが、試合の主導権を奪い完封勝利を続けていることは素直に評価するべきだろう。1試合少ないながらも2位ファジアーノ岡山に勝ち点4差をつけての首位に立っているのだ。先はまだまだ長い。油断はできないが、更なる成長を遂げたコンサドーレの姿を楽しみに今シーズン共に走って行きたい。
2016年05月21日
名前のインパクトが強い。というより出落ち気味だった。このTHE☆うどん県な名称に香川紫雲フットボールクラブからサンライフフットボールクラブを経て、現在の名称に改称されて早10年。こんな名前のチームがあるんだと微笑ましい気持ちで見ていられたのも束の間だった。2敗2分。死の国と書いて四国。J2昇格から3年足らずでコンサドーレの天敵になりおおせてしまった。智将北野誠体制は7年目を迎え、より円熟味を増している。この天敵に対し、四方田監督は「試合によって陣形が変わるつかみどころのないチーム」と評し、更にキーマンとして木島徹也、高木和正の名前を挙げ、前線の選手を働かせないようにしたいと意気込んだ。
「つかみどころのないチーム」。4-1-4-1、4-4-2、4-2-3-1と3つのフォーメーションを駆使し、手堅く勝ち点を積み重ね現在4勝4敗5分で12位に付けている。「立ち上がりの早い時間帯に失点しないのが大事。ブロックを組んで、最後は体を張って守る。」と北野監督が述べるとおり、まず守備から入る。エブソン、藤井航大のCBコンビを中心にゾーン気味に4バックを形成。そしてボランチの岡村和哉がボールを奪い高木和正を経由し前線に鋭いカウンターを仕掛ける。また左サイドに攻撃の比重を置き、SBの西弘則とSHの馬場賢治が敵陣を抉り、待ち構える仲間隼斗や良輔・徹也の木島ブラザーズにラストパスを供給する。とはいえキーマンは高木和正だろう。ゴールこそないもののアシストは5と2位タイ、ラストパスも24を数え司令塔として中盤に君臨している。FKも任されており、チームのゴール15点のうちセットプレーからのゴールは5と重要な得点源となっている。粘り強くコシのある「カマナチオ」を展開し、蜂の一刺しを狙う非常にやりづらいチームだ。
とはいえ弱点は勿論ある。現在6試合勝ちなしと勝利の女神に見放されており、先制した試合も清水エスパルス戦の1試合のみ。だが「蜂の一刺し」でどうにか引き分けに持ち込んでいるというのが現状だ。「守備から入る」あまり、前半に相手に押し込まれると失地回復が覚束無いのだ。ロングボールを蹴ろうにも、ターゲットになりうる我那覇和樹は怪我明けで限定的な起用が続いている。そのため自陣深いところからドリブルを仕掛けてサイドに散らすという非常にリスキーな選択を取らざるを得なくなっている。中途半端なカウンターが最悪の結果を招くことは皆様の骨の髄まで染み込んでいることと思うので理由は割愛する。つまり、リアクションサッカーの限界に直面しているというのが讃岐の現状だ。また頼みの綱となっている守備の面にも不安が残る。クロスボールへの対応だ。クロスボールからの失点は6と全体の約4割を占める。この数字はツェーゲン金沢と並びJ2ワーストタイだ。ゾーン気味に守る4バックのギャップを衝かれたり、単純に競り負けたりと少しずつではあるが綻びが見えている。
対するコンサドーレはクロスからの得点は4。またセットプレーからは直接も含めて4と全得点のうち8点をクロスまたはセットプレーから挙げている。そう、この点から言えばコンサドーレは讃岐の「天敵」となっている。スタメンに復帰するジュリーニョ、5戦3ゴールと絶好調の内村圭宏・フィジカルモンスター都倉賢の強力FW陣に加え、恥骨骨折から復帰しリオ五輪に向けて必死のアピールを続ける荒野拓馬や堀米悠斗がサイドから讃岐ディフェンスを切り裂く。前半からゴール前に釘付けにしてしまえば先ほどから述べているように、カマナチオの綻びを噛み切ってやればいいだけだ。先制点をコンサドーレが挙げることができれば、ひょっとすると思わぬ大差がつく可能性もある。
だが侮れないのが四国という地。明日の丸亀市の天候は晴れ時々曇り。最高気温26℃。湿度は75%。纏わり付くような暑さが選手の体力を奪うだろう。札幌も最近暑くなってきたとはいえ、向こうの暑さは質が異なる。それゆえ、課題とされていた後半での追加点。これが鍵を握る。内村というジョーカーをスタートから起用するため、新たなジョーカーの出現が望まれる。上原慎也の意外性にも賭けたいが、彼の投入はおそらくサイドからの組み立てを再構築するという意図で選手達に伝わってしまう恐れがある。それゆえ、ヘイスの爆発が待たれる。彼の投入が追加点奪取へのメッセージだ。
可能ならば前半で試合を決めてもらいたいが、試合は水物。誰も予想できないことが起きるのがサッカーだ。楽な試合などひとつもない。首位確保のためどのようなゲームを展開するのか。更なる成長を感じさせる試合を期待したい。
2016年05月18日
まさに会心の勝利だろう。試合後の四方田修平監督の口は滑らかだった。「勢いのあるチームとの対戦でハードな戦いになると予想していた。前がかりに来る相手を凌ぎ、前半から怖がることなくチャンスを作ることが出来た。後半も押し込み続けこう対戦選手もいい働きをした。」このようにゲームプラン通りに試合を進めることができたことに満足げだった。その上で、「これまでの1-0とは違う成長を感じた。」と手ごたえも口にしていた。
これまでとは違う「成長」とはどの部分に見ることが出来たのだろうか?ヒントになると思われるのは次の質問、「4連勝を監督はどのように捉えているのか?」これに対し四方田監督は、「それぞれ内容が違うので一概に言えないが、チームで一丸となって高い守備意識を保ち、気持ちのところでも一つにまとまっていることが結果として顕れたのだと思う。」と答えている。各選手がコメントの中で「ハードワークする」という意気込みを述べているので、前節からの成長という点には当たらないだろう。ではどこが・・・。おそらく「気持ちのところ」。精神論に近くはなってしまうが、ここで内村圭宏の決勝点をアシストした堀米悠斗の試合後コメントを引用しよう。「伸二さんが入って、ちゃんと勝つんだというのが伝わってきてスイッチが入った。」
意図のない選手交代はない。ピッチに残る10名はこの意図を読み取り、プレーとして具現化しなければならない。ハーフタイムのミーティングでベンチからの指示は無論あっただろう。だが、アウェイの地。無理に攻めにいった結果失うかもしれない勝ち点1。他チームの勝敗によってはプレーオフ圏争いの泥沼に片足を突っ込みかねない状況。着実に勝ち点を積み上げるという選択肢を選ぶ選手も出てくるだろう。この迷ってしまう時間帯。この流れを内村圭宏、小野伸二という交代策を用い、チームの意思統一を図った。送ったメッセージは唯一つ、「この試合勝ちに行く」。
内村の投入だけでは、この意図は伝わり切らなかっただろう。疲れた水戸DFラインの裏を取り、ラインを押し下げる。勝ち点を確保するという目的しか伝わらなかったと思われる。そこでボランチ深井一希に替えて、小野伸二を投入する。これで四方田監督のメッセージは明確になり、内村がDFラインを押し込んで生まれたスペースを小野が活用しタメを作ることで攻撃の起点となった。その結果生まれた決勝点。監督の意図を読み取り、守りきるだけではなく泣き所となっていた後半での得点を奪い再び首位に立って見せた。これが成長の証だ。
殊勲の内村は言う。「去年はいい流れからでも、いきなり失速した。」勝って兜の緒を締めよ。油断は禁物である。腰に不安を抱える彼がジョーカーとして機能している現状は、故障離脱のリスクを減らすという面から考えるならば、ある程度満足のいくものとなっている。だが、やはり内村は90分プレーすることで進化を発揮する選手だと思う。コンサドーレの真の泣き所。後半の得点不足、追加点不足は先発メンバーにおける内村の穴を埋める存在の有無。これに尽きるのではないだろうか。この試合は前節から4人変更して臨み、4連勝という最高の結果を残すことが出来た。誰が出ても同じチームパフォーマンスを発揮する。今年のコンサドーレは層の厚い良いチームになりつつある。そのなかで誰がゴールゲッターとして台頭してくるのか。その切磋拓馬、もとい琢磨こそがJ1昇格への原動力になる。私はそう信じている。
2016年05月01日
まさに粘りがちだ。8:7、これはコンサドーレと徳島のシュート数比較だ。事前の予想通り中盤におけるボールの奪い合いとなったこの試合。前半20分に生まれた内村圭宏の「らしい」ゴールで先制し、主導権を持ったままいい形で前半を終えることが出来た。「相手の裏を意識することで、背後を取れていたところと、相手が下がったときにボールを動かしてサイドから崩すというところに関しては非常に良い形が作れていたと思いますし、そこから得点が生まれたのも大きかったと思います。」と四方田修平監督もゲームプランどおりに進めたことに関して手ごたえを持っていた。
しかし後半徐々に押し込まれる場面が増えていく。徳島のキーマンとなったのが藤原 広太朗と交代で入ったキムキョンジュンだ。前節まで出場2試合、プレー時間も7分・5分と決して多くない。そんな彼が今まで機能不全を起こしていた徳島オフェンスを牽引していく。スペースへ抜ける動きを繰り返し、対応するコンサドーレDF陣のスタミナをボディーブローのように削っていく。「思っていた以上に相手が攻撃的に、前からボールを奪いにきたり、攻撃の場面でも工夫しながらボールを動かしてきて、予想した以上にお互いが攻め合うような展開になったと思います。」「後半はある程度守備のところをしっかりやって、自分たちから奪いに行くということをやりながら追加点を狙っていこうと話して入ったのですが、途中から少し消耗が激しくなり、攻める時間が少なくなって押し込まれてしまいました。」と四方田監督も反省を口にした。消耗という点を目に見える形で示したのが後半32分の福森晃斗の途中交代だ。セットプレーのキーマンは無念、足の痙攣でゲームを後にした。ここで四方田監督は櫛引一紀を投入し、1点を守りきるという選択を取った。荒野拓馬、上原慎也と追加点を狙う交代策を取っていたものの、本調子でない荒野が徳島ディフェンスを押し込むことが出来ず守勢に回る一因となってしまった。言い方は悪いが怪我の功名とも言えるタイミングでの交代となった。後半シュート1本と追加点が取れなかったことは反省材料であるが、しっかりと勝ち点3を奪った。この勝利はチームの成長の証と捉える事が出来るだろう。
「強きを挫き、弱きを助く」。近年のコンサドーレはこう揶揄されるような試合結果が多かった。特に下部リーグからの昇格組に弱かった。初顔合わせとなると、J2の戦いに慣れていない彼らに一息吐かせ自信を与えてしまう体たらくであった。また、ここで勝てば昇格圏であるとか首位浮上を賭けてといった試合にも弱く、勝負弱さも散見されていた。選手たちも自覚があるらしく、徳島戦の前には「この試合に勝たなければ前節セレッソ大阪に勝った意味がなくなってしまう」とモチベーション高く試合に臨んでいたようだ。その試合を勝ち切り、コンサドーレは自動昇格圏の2位に浮上した。とはいえ勝ち点1の差で3チームがひしめき合っており、油断は禁物だ。
次節は中3日でアウェイに乗り込んでのツェーゲン金沢戦。昨季は首位に立つなど旋風を巻き起こした金沢だったが、今季は不振に喘いでいる。ロアッソ熊本戦が九州を襲った震災の影響で1試合少ないものの、10節終えて7敗2分といまだ勝利はない。今節の清水エスパルスにも1-4と「完敗」を喫している。とはいえ侮れない相手であることは間違いない。注意しなければならないことは2点。モンテディオ山形戦同様に先制点を与えないこと。そして古田寛幸を自由にさせないことだ。石井謙伍が愛媛FCに所属していた時、彼には何度も「恩返し弾」を喰らっていた。お得意様を作らせないためにも、最初の対戦で「一発カマす」くらいのことをしておかなければならない。
短い試合間隔、遠いアウェイの地、そして勝利に飢えているホームチームと悪条件が重なっている。非常に難しい試合になるだろう。勝ち点3を狙うのか、それとも勝ち点1でも良いから持ち帰るのか。中途半端なゲームプランでは逆にしてやられてしまいかねない。この試合もまた首位の座を目指す挑戦となる1戦だ。ぜひともこの壁を乗り越えてもらいたいものだ。
最後になるが、内村圭宏は今回のゴールでコンサドーレ所属となって節目の50点目を挙げた。絶えずDFの背後を狙い続け、献身的なチェイシングを続けるその姿勢は、まさに北海道コンサドーレ札幌を体現する選手といって過言ではない。「長くいるから多いのは普通。外したのを決めてたら100点ぐらい取れていていい。外した分これから取り返す」と彼は謙遜しながらコメントをしていた。ぜひ金沢戦から「取り返す」ゴールの1点目を奪って欲しい。最高のGWを送ろうじゃないか!
プロフィール
98年J1参入決定戦に敗れ涙に暮れる札幌サポを見たことで、コンサ愛に目覚めた非道民。 何の因果か札幌に居を構え、試合結果に1週間のテンションを左右される日々。 いい年こいてまだ中二病が完治していない。 思い出とコンサの試合と日常をミキサーに投げ入れて、味の素で整えた文章を提供していく。 ご笑覧いただければ幸いだ。
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