2016年04月12日
「ラストプレイだぞ!!」思わず声が出てしまった。66分。僕の目の前を38番が駆け上がっていく。初スタメンのプレッシャーに、そのスタミナはじりじりと削られ足は攣る寸前だったろう。にもかかわらず彼は更にスピードに乗り1対1の局面を作っていく。そして相手DFを振り切り右足を振り抜いた。クロスバーを直撃したボールは無情にもゴールネットを揺らすことはなかった。
彼の名は菅大輝。コンサドーレ史上最年少となる17歳6カ月30日で先発出場した高校生Jリーガーだ。前節の町田ゼルビア戦でプロデビューし、積極的なドリブルから切れ込んでシュートに持ち込むなど攻撃を活性化させた。その活躍が評価され、今回のスタメン抜擢となったようだ。試合前の練習では振り幅の短い鋭いシュートをゴールに突き刺しており、さほど緊張を感じさせなかったが、いざ試合が始まってみるとそうは行かなかった。なかなか試合に入っていけない。ボールが貰えず不安になったのか、すぐにボールホルダーに寄って行くシーンが散見された。
そんな彼を置いて試合は展開していく。前半13分。ジュリーニョが倒されて得たFKを40mという距離をものともせず、福森晃斗が冷静にゴールネットに沈めコンサドーレが先制する。「GK前でバウンドするボールを考えた。狙い通りのキックができたし、うまくジュリが邪魔してくれたのも良かった」という技有りのゴールであった。先制したことで落ち着いたかと思われた17分。右サイドCKからのサインプレー。福森からのショートコーナーをワンタッチで捌いたジュリーニョのパスが菅に渡る。狙い澄ましたというより力みまくった左足はボールを捉えることは出来なかった。とはいえボールに触れる機会が増えた彼は落ち着きを次第に取り戻し、自分が攻めるだけでなく味方を使い岡山DFを切り崩していく。特にジュリーニョとのコンビネーションは特筆すべきもので、22分の惜しくもオフサイドとなってしまったプレーは充分得点の匂いを感じさせるものであった。
そして冒頭のプレーである。この零れ球に反応したのもジュリーニョであった。この日のジュリーニョは本調子でない都倉賢に代わり積極的にプレスを掛け、守備のスイッチを入れる役割を果たしていた。道新サンクスマッチとなったこの日、彼をMVPに選んだ誰かさんは慧眼であった。そしてラストプレー云々と叫んだあと、彼は83分までプレーし、堀米悠斗と交代した。…ぜんぜんラストじゃねぇじゃんとか言わないように。
この試合のデータ関連がまとまってきたので目にする機会があったが、これを見ると面白いことが分かる。この試合、全体的に岡山に押されており薄氷を踏むような勝利だったと感じている方が多いだろう。確かに岡山の「ゴール前の精度」が低かったことに助けられた点は多かった。試合全体を通してのボール試合率でも、コンサドーレ43.8%に対しファジアーノは56.2%と上回っている。75分以降に限れば35.7%:64.3%となっている。だが、あれだけ押されていた後半でもシュートに限れば札幌10本に対し岡山は7本。枠内に至っては試合を通して3:1なのだ。オフサイドを4本取るなど粘り強くラインをコントロールし、精度を低くさせたDF陣の強さが光った試合と言うことが出来る。試合前に掲載した記事で、この試合のポイントについて中盤をどちらが制することができるかという点を挙げた。中盤を制したのはコンサドーレ、サイド―特に右サイドであるが―を制したのはファジアーノであった。特に田中 奏一。彼のドリブルにマッチアップした福森は手を焼いていた。左サイドの上原慎也も片山 瑛一に翻弄されており、攻撃のタクトを振るう矢島 慎也に良い様にされてしまった点は次節への改善点だ。
次節は0勝5敗2分と低迷する石崎信弘監督率いるモンテディオ山形が相手である。勝ち点を13まで伸ばし今季最高の3位となったコンサドーレにとっては「負けられない」相手となる。ホームNDソフトスタジアム山形での2戦連続での試合となり、居残りまでしてチームの現状に不満を呈したサポーターに対して結果で改善を示したいはずだ。そうなると「さすらいのゴールハンター」大黒 将志が立ちふさがってくる。前節ではベンチスタートだったが、90分プレーするならば恐ろしい選手の一人だろう。ある種引導を渡すくらいの気持ちで臨み、勝ち点を積み上げてセレッソ大阪戦に備えたい。一刻も早くインフルエンザの猛威が去ることを祈念して、このあたりで締めくくりたいと思う。
プロフィール
98年J1参入決定戦に敗れ涙に暮れる札幌サポを見たことで、コンサ愛に目覚めた非道民。 何の因果か札幌に居を構え、試合結果に1週間のテンションを左右される日々。 いい年こいてまだ中二病が完治していない。 思い出とコンサの試合と日常をミキサーに投げ入れて、味の素で整えた文章を提供していく。 ご笑覧いただければ幸いだ。
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