2016年08月24日
ミラーゲーム。両チームが同じフォーメーションで対戦している状態のこと、そのような試合のこと。京都サンガ石丸清隆監督は首位北海道コンサドーレ札幌相手に前節の4バックから3バックを採用し、全体がマッチアップする形で試合に挑んだ。これにはある一定の成果があり、京都MF本多勇喜も「今日はほぼミラーゲームだったので、一対一で負けなければ問題はなかった。そこはやらせなかったと思う」と手ごたえを口にしている。石丸監督としてはこの試合の入り方に対し、「札幌が)先制点を取ると90%以上勝っているというデータからすると、初めのうちに失点するとかなりしんどくなる。ゲームプランとして「やられない」というところからスタートした。」とまず主導権を奪われないようにと安全運転を心がけたと試合後のインタビューに答えていた。
とはいうものの、石丸監督の手ごたえとは別に試合の主導権はコンサドーレにあったように思われる。特に前半のシュート本数はコンサドーレ4本に対し、サンガは2本。ボールポゼッションはサンガ42.9%に対し、コンサドーレは57.1%とコンサドーレがボールを保持する時間が長かった。しかし、この時間を無失点で凌ぎ切るというのがゲームプランだったのだろう。…あくまで石丸監督の。
先ほど引用した本多勇喜のコメントには続きがある。「そこはやらせなかったと思うが、手応えがあるのはそこだけ。」エスクデロ競飛王はもっと辛辣だ。「前半を0-0でいけたのはいいけど、後半はもうちょっと「点を取りに行くんだ」という気迫が必要だった。追越しが遅かったり、3人目の動きが全くなかったりとか……。僕とゴメ(堀米 勇輝)で崩している時も、もっとほかの選手に絡んでほしい。後ろが(失点)ゼロで抑えていることは評価に値すると思うけど、サッカーは守るだけじゃない。攻撃しないと勝てない。」と攻撃に関してチームの連動性がないことを嘆いている。ゲームプランを遂行しようと選手が心がけた結果が5バックでは情けないではないか。勝ち点差12離れているとはいえプレーオフ圏内の5位に位置するチームだ。まして相性のいいコンサドーレ、そしてホーム西京極。もっと積極的に攻めても良かったのではないかと思ってしまった。首位から勝ち点3を奪うことができれば、勝ち点差も9に縮まり波に乗り切れなかったチームにも勢いが付く。石丸監督は「引き分け狙いではなく、その中で勝機は絶対にあると思っていた。」と逃げ腰で3バックを選択したわけではないと弁明に追われた。だが、こうも口にしている。「(札幌の)3トップがかなり強烈なので、うちの4バックのスライドと前線からのプレッシャーが間に合わないかなというところで、3バックを敷くことを選択した。」これは明らかにチームの力不足を認め、クリンチ寸前のミラーゲームを挑まざるを得なかったと監督として責任を認めていると見て取れる。
5バックを敷き、スプリンターがいるわけでない京都攻撃陣は脅威が半減していた。3バックの中心として対応した増川隆洋は、相手のカウンターに対応できたかという質問に対し、「そこは注意していたし、僕の役割はそこがメイン。周りの選手が上がる傾向があったし、ボランチと連係してリスクマネジメントすることは常にやっていた。」と守備連携の深まりを感じさせた。そのうえでキーマンとしてエスクデロ、堀米、イ・ヨンジェの名を挙げ、守備陣のリーダーとして上手く対応できたと胸を張った。エスクデロの感じたチームの問題点が露呈した格好だ。
この京都に対し無失点で終わってしまったことは改善しなければならない。決して驕りではない。これは横浜FC戦で手痛い敗北を喫してしまったことの延長線上にある。再び増川のインタビューから引用すると、「後ろから見ていると、(攻撃で)最初のボールは入るけど、そこからのつながりはなかなかうまくいっていなかった。」「向こうのファーストディフェンスはそんなに来なかったので、後ろではゆっくりとボールを持てたし、配球もできていた。」そう、ベタ引きに対しどのように崩していくべきか。これがこれからの課題になる。
京都戦は山瀬功治や堀米勇輝といった両サイドアタッカーに対応するため、攻守両面にバランスの良い堀米悠斗や荒野拓馬をスタメンに起用した。しかし、5バックを敷く京都に対し裏への抜け出しが持ち味である彼らでは、局面を打開するには至らなかった。事実、後半開始から投入されたマセードは自分のポジションである右サイドにこだわることなく、中央に切り込み配球役も務めて見せた。この交代策は四方田修平監督も狙い通りだったようで、「後半はマセードを入れて組み立てのところでボールが動くようになり、少しチャンスを作れるようになったと思う。」「後半の内容に関してはポジティブにとらえている。」と前を向いた。Football LABのデータを見たところ、枠内シュート率以外はコンサドーレの指標が良かった。にも関わらずアタッキングサードと呼ばれる30mライン進入に関してサンガ34回に対し、コンサドーレ38回と大差がなかった理由をコンサドーレ宮澤裕樹主将の言を借りて述べるとすれば、「ミスからの自滅が多かった」この点に尽きるだろう。たびたび引用している増川は「サイドからどうやって入り込めるか。勢いがあるときはいいが、引かれたときに難しい。それができる選手が揃っているのであえて言いたい。まだまだこんなレベルじゃ満足しちゃいけない。」と危機感を口にしていた。
そう、まだまだ足りないのだ。2位松本山雅FCと勝ち点差6しかない現状ではまだ足りない。J1昇格を一刻も早く手中に収め、天皇杯を来シーズンの予行演習にするぐらいの余裕と打開力を身に着ける必要があるということだ。…意訳しすぎかね?しかし、もどかしい試合であったことは確かだ。サイドプレーヤーにはより一層の奮起を期待したい。特に奮起を促したいのが、燻ぶっている神田夢実だ。独特の感性で突っ掛けるドリブルは荒野や堀米には無い武器だ。6失点しアウェイに乗り込んでくるロアッソ熊本は、相手に合せ様々なシステムを併用してくる変幻自在なチームだ。今節もミラーゲームを挑まれる可能性は充分ある。無論、中1日という強行日程で27日に天皇杯1回戦があり、神田としてはそこをラストチャンスと捉えコンディションを整えているかもしれない。だが、今のメンバーに割って入れるような練習でのアピールを期待している。熊本戦に向けてどの程度メンバーを弄ってくるのか。四方田監督の手腕が問われる連戦が続く。
引き分けで勝ち点1を分け合ったのは残念であるが、日が沈んでも30℃を超える蒸し暑いコンディションの中よく戦ったと選手たちを褒めたい。上位陣がコンサドーレに付き合ってくれたおかげで、熊本戦の結果次第では2位松本に勝ち点差9を付けJ2優勝に向けて独走態勢を築くことが視野に入ってきた。あわよくば首位から勝ち点をと自陣に引きこもるチームは今後も増えるだろう。そこをいかに崩していくか、目を離すことができない暑い夏は終わらない。
プロフィール
98年J1参入決定戦に敗れ涙に暮れる札幌サポを見たことで、コンサ愛に目覚めた非道民。 何の因果か札幌に居を構え、試合結果に1週間のテンションを左右される日々。 いい年こいてまだ中二病が完治していない。 思い出とコンサの試合と日常をミキサーに投げ入れて、味の素で整えた文章を提供していく。 ご笑覧いただければ幸いだ。
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