2016年04月20日
「試合としては先取点を取られたことで苦しい入り方になってしまったというところは反省したいと思います。」この言葉に尽きる試合だったと思う。試合後の四方田修平監督のコメントだ。前節とメンバーの変更は特になく、予想された内村圭宏のスタメンは見送られた。とはいえ入りは悪くなく、15分までのボール支配率は山形51.8%に対しコンサドーレ48.2%とほぼ五分。シュート数も山形3本に対しコンサドーレ2本と大差はなかった。
だが、1つのプレーが大きく試合の流れを変えることになる。前半10分過ぎ、右サイドでの山形のスローインからパスカットに入った福森晃斗のプレー。無理をする場面でもなかったと思われるが、パスカットにスライディングで対応してしまう。周囲を見渡し、カバーが入ることを予期してスライディングで奪いに行ったのだが、触ったボールがディエゴにつながりガラ空きの右サイドへつながれてしまう。これを伊藤俊がゴール前にクロスを送り結果的に汰木康也のプロ初ゴールを生むことになった。福森だけのせいではなく、複合的なミスが重なった結果の先制点。だが勝利に飢えている山形相手に与えてしまうには、あまりに大きな1点であった。
その後、雷雨での中断を挟みながら重苦しい展開が続く。コンサドーレは劣勢を跳ね返すために積極的に選手交代を行い、徐々に山形を押し込んでいく。歓喜の瞬間は後半14分。ジュリーニョの縦パスに抜け出した都倉賢が右サイド深い位置からクロスを入れると、左から猛然と駆け上がってきた内村圭宏がDFの隙間からゴール前に進入。滑り込みながら右足で押し込んだ。内村の今季初ゴールと途中出場選手の今季初ゴールという用兵の妙を示したナイスゴールだった。その後は攻撃の形が見いだせず、同点のままタイムアップ。勝ち点1を分け合い、山形は暫定ながら最下位を脱出しコンサドーレは4位とプレーオフ圏内をキープした。
ここで注目したいのは内村圭宏の起用だ。なぜ彼をスタメンで起用「できなかった」のか。「できなかった」としたところがキーポイントだ。この試合サブに入ったのはGK金山隼樹、DF上原慎也、MF河合竜二、稲本潤一、堀米悠斗、小野伸二、FW内村圭宏の7名。河合、稲本は逃げ切る際に起用が予想されるいわば「クローザー」だ。「中盤の運動量を増やしたい」場合は堀米。「サイドの活性化とロングスローという飛び道具を期待」して上原。「独創性溢れるパスワークで攻撃を活性化させる」なら小野。そして「裏への抜け出しや得点を期待」して内村。交代することでピッチの選手に与えるメッセージはこのようなものだと思われる。内村が担う「得点を期待」。この役割を担える「スーパーサブ」が彼以外見当たらないのだ。期待されて加入した新外国人ヘイスは調子が上がっていない上に、連携不足で是が非でも追いつきたい場合にはリスクが大きすぎる。神田や中原といった若手ドングリーズは単純に実力が不足している。この流れを変える力を持つ選手が内村圭宏を除いて現状見当たらないために、今回彼はスタメンを外れたのではないか。私はこのように考えている。
だが、次節はそうも言っていられない。相手は今季無敗。6勝2分、勝ち点20。首位セレッソ大阪。ザルッソと揶揄された守備陣は4失点と、堅守速攻をモットーとする大熊清監督の元で目覚しい改善が見られている。その上で言うまでもない豪華絢爛破壊力抜群の攻撃陣。彼らを出し抜くならば先制点。是が非でも先制点を挙げること。1点でも先行してしまえば、こちらはホームだ。挑戦者の立場であるから、なりふり構わぬ勝利への執念は好意的に見てもらえるだろう。そのためには後半見せたジュリーニョ・都倉・内村のコンビネーションが必要だ。だが、後半流れを変えたい場合に難儀する未来も見えている。どちらのリスクを取るか。四方田監督はどちらを選ぶのか。恐ろしくも楽しみな週末はもうすぐだ。
プロフィール
98年J1参入決定戦に敗れ涙に暮れる札幌サポを見たことで、コンサ愛に目覚めた非道民。 何の因果か札幌に居を構え、試合結果に1週間のテンションを左右される日々。 いい年こいてまだ中二病が完治していない。 思い出とコンサの試合と日常をミキサーに投げ入れて、味の素で整えた文章を提供していく。 ご笑覧いただければ幸いだ。
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