2009年09月27日
高原寿康というキーパーは、愛知学院大学の時代に大学ナンバーワンキーパーとうたわれ、全盛期のジュビロ磐田に正ゴールキーパー候補として入団した。しかしルーキーイヤーの2003年8月左足首を複雑骨折し、シーズンを棒に振ってしまう。これが高原の最初の挫折だった。 怪我から復帰した翌シーズンにはまったく出番はなく、2005年に解散的な出直しを図ったJ2札幌にレンタル移籍。開幕から10試合にゴールキーパーとして試合に出たものの、11試合目、山形に0-3で敗れたのを契機に正ゴールキーパーを林卓人に奪われてしまった。これが高原二度目の挫折だ。 翌年も4試合しか出番がなく、レンタル期間が終わると札幌は「要りません」と答え、親元の磐田は高原の契約を解除してしまった。いく場を失った高原に、声をかけるクラブはなかった。所属クラブを失った高原は、練習生として札幌に留まる。クラブから放り出され、プロの資格を失うという屈辱を受けながらも選んだ練習生という立場。どんなに屈辱的だったことだろう。これが高原三度目の挫折だ。 しかし、人間どこで運が向いてくるかわからない。練習生として始まった2007年。ヴェガルタ仙台の正ゴールキーパー・シュナイダー潤之介の負傷により、林卓人が仙台に貸し出されると、札幌はゴールキーパー不足になり、高原は札幌と再び契約。晴れてプロのキーパーに戻った。 それでも高原は第3キーパーの位置づけだった。久しぶりにJ1の舞台に戻った高原に、試合出場の機会はなかった。それでも高原は腐ることなく、コツコツと練習を積み重ねていたのだろう。今年、開幕は第3キーパー。その後、佐藤が不調に陥ると第2キーパーに昇格。そして正ゴールキーパーへ。 そして今日。この試合のMVPは高原であることに、誰も異論はないだろう。 厚別での湘南戦ーーー。高原には特別の思いがあっただろう。2006年7月29日。J2第31節湘南戦。林の腰痛再発で1年ぶりに先発した高原は、この試合で5点も失ってしまう。湘南のシュートに対して一歩も動けず立ち尽くしてしまった高原。これで監督の信頼を失い、再びキーパーの座が巡ってくることはなかった。そして屈辱的な契約解除=練習生。 昨日、昇格は悔しさの総量、というコラムを書いた。本来であれば、昇格争いの最前線にいる湘南と、まだ可能性を残すとはいえ、アウトサイダーの札幌とは自ずからモチベーションが違ったはず。それでも、今日は札幌が気持ちでも運動量でも湘南を上回った。 J1を目指す湘南の悔しさの総量よりも、3度の挫折を乗り越えてきた、そして湘南戦に特別な思いがあるであろう高原の“悔しさの総量”が上回ったのだ。 札幌の昇格はミラクルだろう。ミラクルというのは現実には存在しないことを意味する。しかし、今日の高原は、一度はプロサッカー選手としての命を絶たれた者がこの試合に正ゴールキーパーとして立っていることを含めて、まさに“ミラクル”だった。ミラクルも、強い気持ちを持ち続けると現実になる。我らの正ゴールキーパーは、そう教えてくれる。
MasaMaru
Re:高原寿康というミラクル
2009-09-27 22:41
おお、プロのコラム並に“追いかけ続けた重みある知識”+想いがこもったエントリー! もうちょっと推敲して更にクォリティ上げていただきたかったところですが…今日、載せたいですよね、やはり!その走る興奮、むしろ好感。
hibari
Re:高原寿康というミラクル
2009-09-28 19:04
>MasaMaruさま 駄文にお付き合いいただき、恐縮です。 ご指摘のようになお推敲を重ねるべきではありますが、 わずか2年ほどの期間なんですけど、 続けるのがしんどくなったときがありまして、 いったんやめようかと想ったんですが、 何人かの人に励まされたという経緯がありました。 その中で、つづけるためにできるだけ、労力、負担を減らそうと いうことで、少々の穴には目(時には大穴が開いてますが) をつむることにしました。 とはいえ、昨日のアクセスを見ると1200件もあって、 少なくない人たちがこれを読んでいることを考えると、 あまりの書き散らしは、いかがなものか、 ということなのだと思います。 お叱りの件については、今後は心したいと思いますが、 一方では、息長く続けたいという思いもありまして、 そのへん、ご推察いただければありがたいです。 今後ともよろしくお願い申し上げます。
大阪帰りの道産子
Re:高原寿康というミラクル
2009-09-28 19:52
hibariさんこんばんわ(^o^)/ >昨日のアクセスを見ると1200件もあって・・ それはhibariさんのサッカー観やコンサ観に惹かれる方が多いのでしょう。ボクも最初は ビューな写真に注目しましたが、その鋭いコメントにも感銘しました。 サッカーの戦略や戦術に疎いオオドサですのでこれからも宜しくお願いいたしますm(_ _)m ※以下の記載は全て架空のものです、実在する団体・個人等とは何の関係もありません。 砂川 誠「おいっカズッ!珍しくご両親に手紙なんて書いてるのか?」 上里一将「先輩ッ!手紙の書き出しはどうしたら良いでしょうか?」 砂川 誠「それは普通・・拝啓ご両親様だろう」 上里一将「でも昨日の事や最近の活躍を簡単に書きたいのですが」 中山元気「それは前略と先日・・・」
hibari
Re:高原寿康というミラクル
2009-09-28 20:39
オオドサさん ありがとうございます。 お褒めにあずかり恐縮です。 ところで、オオドサさんのブログも、 更新がマメだし、写真いっぱいで楽しいから、 もうかなりのアクセス数ではないですか。 ・・・今後ともよろしくお願い申し上げます。
プロフィール
コンサドーレの試合をはじめて見たのは、招待券で見た1996年伝説の厚別初戦。ペレイラのフリーキックと、オテーロのVゴールを目撃しました。娯楽の少ない北海道で、それは衝撃的な体験でした。そして実際に自分がファンからサポーターになったのは98年に、オフィシャルサポータークラブに入ってから。以来、今日までホーム全試合観戦を目標に、シーズン券を買って、応援を続け、たとえJ2の最下位になろうとも、年間に5回しか勝てなくとも、(実際になりましたが)、チームがある限り、サポであり続けることを誓って、今日まで生きてきました。
最新のエントリー
月別アーカイブ
コメント
検索