2016年06月08日
「今の札幌に勝てるのは松本しかない」松本山雅FC、DF當間建文はこう語る。勿論「首位だけに勢いがあるが」と札幌をリスペクトしつつも、3連勝でホーム「アルウィン」に首位北海道コンサドーレ札幌を迎えるに当たり、思わずこぼれた本音かもしれない。成績は8勝5分3敗 VS 10勝3分2敗と差はあるものの、得点は22 VS 20、失点はお互い9とJ2最小タイと堅守を誇る。まさに雌雄を決する一線の様相を呈している。
それでは松本山雅FCの陣容を確認してみよう。基本フォーメーションは3-4-2-1。1トップを務める188cmの長身FW高崎寛之は得点こそ3点に留まるものの、懐が深くボールを収め2列目以降の攻め上がりを促す厄介な相手だ。また、ボールを収めるだけでなくドリブルでペナルティーエリアに侵入しファウルを誘うなど老獪なプレーを見せる。いうなれば松本の「都倉賢」だ。彼の作ったスペースを活用するべく猛進してくるのが、右WBの田中隼磨と2列目のMF工藤浩平だ。数値的にもチームで1,2を争うドリブラー。特に田中隼磨は勢いそのままにサイドを抉り鋭いクロスを上げ、中央で待ち構える高崎ら長身FWが仕上げをする。FWが落としたボールに反応するのが2列目の工藤浩平だ。チームトップの4ゴールを上げるだけでなく、アシストも2つ記録するなどラストパスの出し手としても侮ることが出来ない。彼ら3人だけでも充分に恐ろしいのに、その彼らを操る存在がいる。それがボランチの宮阪政樹だ。今年モンテディオ山形から移籍してきた26歳のファンタジスタは、すでにチームの中心に君臨している。前述の田中隼磨と同様、パスの受け手出し手として攻撃に顔を出し牽引している。彼のタクトに応え、ロングボールやサイドチェンジを基本とした「緑の津波」と言うべき縦に早いカウンターが炸裂する。また宮坂はセットプレーのキッカーとしても精度の高いクロスを供給しており、総得点20点のうち8点がセットプレー絡みのものだ。加えてフリーキックだけでなく、スローインまでも得点のチャンスに変えてしまうのが松本の特徴だ。今季から大宮アルディージャに移籍してしまったが、「人間発射台」岩上祐三から引き継がれた「弱者の戦法」は健在である。少しも気を抜くことができない相手である。そんな「山雅四天王」とも言うべき高崎、田中、工藤、宮坂がコンサドーレの前に立ちふさがっていると言えよう。
対するコンサドーレは松本とどう戦うべきか。まずは不安材料だ。なんといっても3人のCBで1トップを見るというアンバランスさだ。基本的に守備に必要な選手の数は「相手の攻撃の選手の数+1」と言われる。つまりカバーリングの選手が「+1」の部分、あとはマンツーマンでマークということだ。そう考えればどうしても1人余る。そして暇があれば試していただきたいのだが、コンサドーレの基本布陣3-4-1-2と松本の基本布陣3-4-2-1を紙に書き出し重ね合わせてみて欲しい。するとコンサドーレの両サイドに大きなスペースが生まれているのが分かるだろう。1トップの高崎に対しCBトリオが互いに声を掛け合い、GKからのコーチングを参考にしながらスライドを徹底しなければ、このスペースを田中や工藤に良い様に使われてしまうことになる。これが守備面での不安。そしてもう一つの不安が攻撃面、トップ下に君臨するジュリーニョに関してだ。まだ手元に重ね合わせたフォーメーション表があれば見ていただきたい。お気づきだろうか。トップ下に位置するジュリーニョの周りを松本の選手が4人、彼を取り囲んでいるのだ。工藤、宮坂と攻撃のキーマンが4人に含まれているとはいえ、ジュリーニョの自由度合いはかなり制限されてしまうだろう。いかに彼のマークを外すか。チームの連動性が問われてくる。
以上を踏まえた上で改めてコンサドーレはいかに戦うべきか。基本的には中盤での潰し合いになるだろう。出足の早いプレスから宮坂、工藤を自陣に押し込んでしまう。そうすれば前線の高崎にロングボールを放り込むしかなくなり、DF陣の高さに分があるコンサドーレにとって対応しやすくなるだろう。無論先ほど述べた守備スライドを徹底した上でだが。この点から言えば、コンサドーレのキーマンは高崎とマッチアップするであろうDF増川隆洋と攻守の要MF深井一希になるだろう。彼らがコンパクトに陣形を保つことが出来れば、そう易々とスコアが動くことはないだろう。これに加えて攻撃陣のキーマンを上げるとすれば、石井謙伍、マセードの両WBではないだろうか。彼らが4人に囲まれるジュリーニョのフォローに入ることが出来れば、独特の攻撃センスを持つ彼のことだ、思いも寄らないようなアイディアで松本ゴールを脅かすだろう。また4人に囲まれるということはドリブル突破の際にファウルを貰う可能性が高まることも意味する。松本の9失点のうち4失点はセットプレー絡みだ。相手ゴール近くでファウルを獲得すれば、コンサドーレには福森晃斗がいる。彼の左足からのクロスに待ち構えるのは4試合連続ゴール中と絶好調の内村圭宏、そしてフィジカルモンスター都倉賢だ。この2枚看板は松本にとっても脅威だろう。惜しむらくは鼻骨骨折の恐れがあるということで怪我明けの宮澤裕樹が試合に出られないことだ。ベストメンバーではないが、誰が出ても試合のクオリティーが落ちないのが今季のコンサドーレの特徴だ。前節に引き続きボランチでの出場が予想される堀米悠斗には、「このポジションは俺のもんだ!」というような気迫とより一層の奮起を期待したい。
連勝中の相手。アウェイの地。勝ち点1を持ち帰れば充分と考えるのは当然だろう。ここで四方田監督がどのように松本戦を捉えるかがポイントとなってくる。引き分け上等なのか、それとも勝つしかない試合なのか、あわよくば勝てたら良いななのか。どのようにリスクを管理し選手を運用するのか。こんな面白い試合を平日ナイターに持ってきてしまった今年の日程くんに苛立ちを覚えるが、一方で面白い試合になるように今までの試合日程を組んできたのかと考えると舌を巻く。はたしてどんな試合になるだろうか。なんにせよ、見ごたえ充分の試合になることは間違いなさそうだ。
プロフィール
98年J1参入決定戦に敗れ涙に暮れる札幌サポを見たことで、コンサ愛に目覚めた非道民。 何の因果か札幌に居を構え、試合結果に1週間のテンションを左右される日々。 いい年こいてまだ中二病が完治していない。 思い出とコンサの試合と日常をミキサーに投げ入れて、味の素で整えた文章を提供していく。 ご笑覧いただければ幸いだ。
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