2016年06月04日
24、20。この数字が何を示しているのか。勝ち点?たしかに15節終わった時点での勝ち点に見えるかもしれない。だが今回対戦する千葉の勝ち点は23であり、1点足りない。正解を述べよう。それは昨シーズンオフにジェフユナイテッド千葉が行った「血の入れ替え」である。24名退団、20名入団。もともと所属していた佐藤勇人をして「自分が移籍してきたような感覚」と言わしめたDr.関塚による大手術であった。
だが、現時点で患者に快方の気配は見られない。関塚隆が監督に就任して3年目。2014年は鈴木淳から途中でバトンを受け、昇格プレーオフまで漕ぎ着けることが出来たが、昨シーズンは勝ちきれない試合が多く9位に沈みプレーオフ進出を逃した。そこで行った大手術。その結果が6勝4敗5分で8位。プレーオフ圏と勝ち点2差というのは、言い方は悪いが昨シーズンまでのジェフと大差は感じられない。ある種総入れ替えしてこの順位をキープしているのは監督の手腕の成せる技と評価するべきかもしれない。この5試合負けなしで着実に勝ち点を積み上げてきており、さすがは古豪ジェフユナイテッド千葉と名将関塚隆、侮ることが出来ない。
ここで今シーズンのジェフ千葉の陣容についておさらいをしておきたい。基本布陣は4-4-2。近藤直也・イジュヨンのCBコンビが最後尾を支え、左サイドの阿部翔平・井出遥也が攻撃を牽引する。彼らのドリブル突破にボランチの長澤和輝が絡み、中盤を撹乱する。そしてフィニッシャーとして前線に構えるのがエウトン・船山貴之の強力2トップだ。阿部翔平のクロスに彼らが反応することでゴールが生まれる。現に得点の40%近くはセットプレーとクロスから生まれており、彼らの活躍無しに千葉の躍進はない。そして22%を占めるショートパスからのゴールというのも、井出・長澤といったドリブルを得意とする選手が前線を掻き回すことで生まれている。ストロングポイントをチームとして持っており、少しでも守勢に回ってしまうと試合の主導権を奪われかねない。
ストロングポイントとウィークポイントは紙一重。前節千葉と対戦したV・ファーレン長崎は攻撃のキーマンである左サイドバックの阿部翔平からのクロスを警戒し、素早いプレスで自由を与えずに縦に速い攻撃へとつなげていた。ドリブルによる攻め上がりの機会を封じられた千葉はエウトンをターゲットに長いボールで対抗した。どちらも狙い通りの展開で1点ずつを取り合い、結果1-1の引き分けとなった。試合後、長崎の高木琢也監督は「キープして逆サイドに展開していくというトレーニングでやっていた形で得点を取れたこと。」を収穫としてあげた。また、11節で同じく1-1で引き分けたカマタマーレ讃岐の北野誠監督は試合後の会見において、選手交代の意図を問われ次のように答えている。「一番重要だったのが中盤のコネクターの部分です。永田(亮太)に代えて、綱田(大志)を入れましたが、(相手のボールが)サイドに入ってから中を固めるというところが狙い通りだった。そこで全てボールを切ることができたので、千葉は完全に中で勝負するしかなくなった。(後半は)うちがサイドを全て支配できたと感じています。」そしてこうも言っている。「後半はしっかりと狙い通りのボールの動かし方で点が取れた」と。彼らの言葉を借りれば、千葉のウィークポイントは「中盤の展開力」ということになる。
ラストパスの出し手やパス交換などのデータから浮かび上がってくるキーマンは、左SBの阿部翔平だ。アシストこそ1と少ないものの、ラストパス供給はチームトップ。FKのキッカーも任されており、SBというポジションもあり攻守の要とも言える重要人物だ。そこを封じてしまう。パスもクロスも左サイドの阿部、井出から上がっており、そのストロングポイントを封じられたジェフが取れる戦術。それが「ロングボール」ということだったのだろう。
前節の山口戦でもコンサドーレのストロングポイントとしてあげた「札幌山脈」。これはジェフにも勿論有効である。ロングボールを弾き、セカンドボールを素早いプレスから物にしてしまえば試合の主導権はコンサドーレのものとなるだろう。実はジェフのウィークポイントはクロスからの失点にある。全16失点中5点をクロスから、6点をセットプレーから失っている。近藤直也181cm、イジュヨン186cm。決して小柄なわけではないが、なぜか失点を重ねている。連携不足を露呈してしまっているのかもしれない。その隙を逃さないのが今のコンサドーレだ。前線の「3枚刃」が全得点のうち半分を叩き出しており、彼らにボールを運ぶことが出来れば得点のチャンスも生まれることだろう。
やはり重要なのは試合の入り方と先制点を奪うことが出来るか、これらに尽きる。今のコンサドーレは首位であり、各チームが勝ち点を奪いにやってくる。3だろうが1だろうが勝ち点は勝ち点。あわよくば大きいほうを持って帰りたいのが人間というものだろう。そんな彼らをきっちりといなして、土産代わりの勝ち点3を奪う。目下の懸案事項はレッドカードによる出場停止で欠場深井一希にかわり宮澤裕樹とコンビを組むのが誰かということ。中盤の差が試合結果として現れる試合となりそうだ。四方田監督の悩みは尽きない。最良の結果を出すことを期待している。
プロフィール
98年J1参入決定戦に敗れ涙に暮れる札幌サポを見たことで、コンサ愛に目覚めた非道民。 何の因果か札幌に居を構え、試合結果に1週間のテンションを左右される日々。 いい年こいてまだ中二病が完治していない。 思い出とコンサの試合と日常をミキサーに投げ入れて、味の素で整えた文章を提供していく。 ご笑覧いただければ幸いだ。
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