叶わなかった夢

2010年03月21日

藤枝東に入って選手権で全国優勝をしたいという目標の私であったが、
練習が嫌いでまったくサッカーは上達しなかった。

ある日、団長から
「お前は頭がいい。いまのうちから審判の勉強をしておけ。」と告げられた。
選手としては見込みがない、という意味を持つことは小学生の私にもわかった。
ショックな言葉だったが、練習してないのだから仕方がなかった。

中学3年の夏にサッカー部を引退し、少年団に遊びにいったときのこと。
団長からどこの高校に行くのかと聞かれた。
「藤枝東です。」と答えた。
サッカー部に入るのか、とは聞かれなかった。

「せっかく藤枝東に行っても、みんなサッカーやらねぇんだよな。」

その言葉にどういう意味があり、どんな願いが込められているのか、
そのときはわからなかった。
いまこうして振り返ってみると、
あのころの静岡県中西部サッカー4種年代関係者(3種も)は、
自分の教え子が藤枝東高校で活躍してほしいと願っていたのではないかと思う。

少年団創成期の、まだリーグ戦などおこなわれていなかったころ、
藤枝は最も身近にして最強最大のライバルであった。
藤枝市以外の周辺市町でサッカーを教える誰もが
藤枝に追いつくこと、そしていつかは藤枝を倒すことを目標にしていた。
しかし同時に、成長した教え子が藤枝東という中西部サッカー界の頂点であり、
全国有数の強豪校の一員として活躍することを、きっと望んでいたに違いない。

藤枝東でプレーする選手は、
もちろん自分自身の夢を、彼らを育ててきた指導者たちの希望を
そしてその他大勢の夢が叶わなかった名もなき選手たちの思いをも背負って戦っている。
たとえ県大会で優勝して全国大会に出場しても、
だらしないプレーであっさり負ければ
誰よりもサッカーを愛し、サッカーをよく知る市民から容赦なく「二度と出るな」と言われる。

中山選手や岡田選手の、
常に感謝の気持ちを忘れない姿勢はこのようにして身に付いたものなのではないだろうか。

きょう、中山選手と岡田選手がはじめてJ2の舞台で対戦する。
どちらの選手にもいいプレーをしてほしいと願っている。

試合終了後のスタジアムは、
2人の選手が作り出したいつも以上にすがすがしい空気に包まれることだろう。


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05:19

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この記事に対するコメント一覧

Junko

Re:叶わなかった夢

2010-03-22 02:32

こんばんは。 夕方から私用があったので、遅くにお邪魔します。 中山選手と岡田選手が初めてJ2の舞台で対戦・・・となるはずでしたが、 残念ながら、岡田選手が途中交代となってしまったので、 対戦は厚別まで持ち越しになってしまいましたね? 今日はコンサが勝ち栃木が負けました。 勝利に対する執念がコンサの方が強かったですね? 栃木は気合負けだったように思います。 次は、真夏の厚別決戦を楽しみにしましょう☆ 「もちろん自分自身の夢を、彼らを育ててきた指導者たちの希望を そしてその他大勢の夢が叶わなかった名もなき選手たちの思いをも背負って戦っている。」 本当にそのとおりですね? その思いを背負っているからこそ、ほんの一握りの プロの選手として、 戦いの場に立てることを感謝する気持ちを持ち続けられるのだと思います。 それは、プロとしてのプライドであり、大きな財産なのではないでしょうか?

PA

Re:叶わなかった夢

2010-03-22 09:52

Junkoさん、コメントありがとうございます。 サッカーがうまいだけの選手はきっと長く続きません。 謙虚さを持っている選手 ファンを大切にする選手 人間的な魅力のある選手 こそが人々の心を惹きつけ、 選手生活を長く続けられるのではないでしょうか。 これも自身の経験から思うことです。 わが後輩が Junkoさんのような熱心な方に支えられて、 とてもうれしく思っています。 そちらのサイトにもときどきお邪魔しようと思いますので、よろしくお願いします。

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