コイントスによるピッチの選択と勝利へのディティール

2013年04月29日

なんか昨日の試合はいつもとは違う思いを試合後にしたので
ひさびさここに記したいと思います。

「厚別に風」はつきものですが、
昨日に関しては今まで厚別で経験したことのないレベルの強風で、
結果的にこの試合を左右した1番の要因は風だったのは誰もが認めるところでしょう。

どっち側のピッチを選択するか、
これに関しては試合開始前から自分が注目する点でした。
札幌が前半風上、熊本がキックオフのボールを蹴ったことで、
札幌がコイントスに勝ち風上を選択したことがわかりました。
前半に試合を優位に運び、主導権を握ろうという意図だな、
自分の印象はそんなとこでした。

実際に試合が始まると、
風が自分の予想以上にプレーに影響することを目の当たりにします。
高く上がったボールは自然と風下に流れ、
風上に立った札幌はいとも簡単に熊本陣内にボールを運べます。

「サッカーはどうやってボールを前に運ぶか。」
最近、そういう考えをサッカーという競技に対してすることが多くなりました。
一種の陣取り合戦のような。
その中で、パスワークを選択するか、でかいFWにロングボールを競らせるか、
チームとしてのやり方が決まってくるものだと。

そういった意味で、風上にたった札幌は圧倒的にポゼッションします。
ある程度、熊本に攻め込まれても、
大きく蹴りだすことで一気に陣地を回復し
すぐに相手陣内でのプレーを容易にすることができました。

空中戦だけでなく地上戦においても、
風は影響をおよぼしいつも以上に札幌は相手ボールを奪うプレーが目立ちました。

13分前田の今季初ゴールで先制点を奪った札幌ですが、
その後の決定機を幾度も逃し結果1-0のリードで折り返すことになります。

サッカーは、当然のことですが前後半で攻める方向を入れ替えます。
45分間味方した風が、今度は自分たちの壁となる。
後半は相当厳しい戦いになると、リードした状況なの重い気持ちのままハーフタイムを過ごすこととなりました。
(去年、2-0でリードしたまま後半に入ったホームの川崎戦でも似たような気持だったことを思い出します)

案の定というか、後半に入り札幌は完全に熊本に押し込まれます。
風下での戦い方を整理する余裕もなく、
後半5分GK杉山のパントキックが押し戻されて
そのボールの処理に守備陣が戸惑う間に同点ゴールを決められます。

この同点ゴールで札幌は一気に窮地に追い込まれます。
勝利のためには残り40分を強風の風下という絶対的不利な状況を耐えながら
ボールを前に運び、ゴールを奪わなければならなくなったということです。

しかし、前半の熊本の状況を見ればそれがいかに難しいことかを
前半45分で十分に思い知らされていただけに、
この早々の失点は余りにも重いものとなりました。

風の強い状況での試合でも、風下なりの戦い方はあります。
風でボールが伸びないことを利用して
ロングボールを相手DFラインの裏にどんどん放り込んでいくとか。
ただ、昨日ほどの強風となると話は別で、
ドリブル、ないしは細かいパスワークでしかボールを前に運ぶしかないなぁ
と考えながら見ていました。
(昨日はあまりの寒さに娘がぐずってしまい、
いつものゴール裏でサルトしていたのではなくファミリーゾーンで観戦していたんで、
いつもよりいろんなことを考えながら試合を見ていました。)

しかし、やはり札幌はまだ発展途中のチーム、
パスワークの中でミスも目立ち自陣での長時間のプレーを余儀なくされます。
そんな中12分に逆転ゴールを決められてしまうと、
14分に拓馬に変えて翔太でドリブルでの打開、
24分にテレ、42分に松本の投入により上原を一列前に上げることで
ロビングのボールをまずは収めることを意図した選手交代を図りますが、
圧倒的な強風の前にはその交代も無に等しいものとなります。

43分に3点目を決められてしまい、勝負あり。
3連敗中でチーム状態の悪かった熊本にまんまと勝利を献上する結果となってしまいました。

この試合の自分が考えるキーポイントは「ピッチの選択」です。
結果論ではありますが前半風下を選択し、前半耐えて後半勝負を選択したほうがたぶんよかったんでしょうね。
試合後のSTVホールでのトークショーでノノ社長も「なんで風上を選択しちゃったんだろう」的なコメントをしたことからも単に素人考えではなさそうです。
(宏太は前半風上のチョイスを擁護するコメントしたそうですが)

前半は失点をしないというプランに徹し、
お互いに体力の奪われた後半に圧倒的に有利な風を利用したほうがより勝利に近いという考えです。
気持ち的にも、後半45分の攻勢のチャンスが残っているという気持ちの余裕が、
前半に「耐える」という明瞭なタスクを遂行しやすいのではないかなぁと思われます。

試合終了直後、
自分はこの試合を「ゲームマネージメントのミス」と自分の中で結論付けていました。
試合前、チームとしての総意でコイントスで勝った場合前半風上を取り、
主導権を早めに握ろうというゲームプランが結果的に間違っていたと。
強風がこの試合を左右する大きなファクターであることは試合前から想像はついてましたから、
あとはチームとしてそれをどう利用するかですが、
その点でチームの考えが間違っていたと。そう考えていました。

試合後、みんなで食事会に行き、いろいろ試合について話している時も、
こういう自分の考えをみんなに伝え、
なんでチームとしてそういう選択をしちゃったんだろうねぇと言い合っておりました。

しかし、帰路の車内で奥さんに試合後の財前監督のコメントを教えてもらい、
その考えすら間違っていたことを知ることになりました。

記者「コイントスで風上を取ったと思うのだが、そういうプランだったのか。」
財前監督「どちらでもよいとは言ってあったのですが、前半もし風上になったのならば、圧倒しないとそういう展開になるので、という話はしました」

チームの総意で前半風上を取ったのだろうと思っていたのですが、
チームとしてどちらを取るかの意思が明確にされてなかったとは。
驚きました。
もちろんピッチの選択はコイントスに勝利しないと権利が発生しませんから、
絶対にどちらかを選択したいという希望はかないません。
ただ2分の1の確率で、(昨日のような明らかな外的なファクターが存在する条件での)
チームの勝利へのゲームプランを遂行するためのより良い道筋を選べるのなら、
それははっきりさせたほうがいいはずです。
それがチームとして「どちらでもよい」という考えだったとは。

この時点で「なぜ風上を取ったのか」という自分の疑問は
「なぜどちらでもよいだったのか」に変わりました。

前半風下がベストだったのは、ある意味結果論です。
実際のところ前半圧倒し、
大差でハーフタイムを迎え後半その大量リードで
精神的にも優位に試合を運んで勝利していたのならば、
「あぁいい選択をしたね」という考えになっていたのかもしれません。

ただ「どちらでもよい」というのは全くそれとは別問題で、
ちょっと無責任すぎるんじゃないかなぁという印象です。
風上風下どちらを選択するにしろ、その選択で明確に戦い方は変わります。

昨日の「どちらでもよい」は、
前からプレスしてもいいよ引いてもいいよ、
放り込んでもいいよパスでつないでもいいよ、
疲れたら好きな時間に交代を申請してもいいよくらい、
無責任すぎるんじゃないかなぁと思うのです。
一応確認しますが、昨日の猛烈な強風があった中でのピッチの選択という話です。

2分の1の確率で、
チームの勝利へのゲームプランを遂行するためより良いと想定される道筋を選べるチャンスがあるのに、
それをみすみす放棄していたと。

再び書きますが、今の札幌はまだ発展途中なチームで、
ある程度完成されたチームと比べると、
試合においての戦い方の細かいディディールを詰めていく段階ではないとは思います。
とはいえ、目の前にある試合を大雑把な感じで迎えていいとは思いません。
プロなんだから。
勝利のためには最大限の努力をしなければいけないはずです。
勝利の為であれば、
詰めれる余裕があるところはしっかり勝利へのディティールを詰めるべきであるはずです。
昨日のピッチの選択は、チームを勝利させるためのより大きい要因だったはずだけに、
そこに関して「どちらでもいい」と勝利への道筋へチームを誘う選択を放棄したことは、
勝ちたいという気持ちが、チームとして100%ではなかったんじゃないかなぁという見方にもさせてしまうのです。

自分が昨日の試合を通じてそんな考えを頭にめぐらせました。

忘れてはいけないことですが、
熊本が厚別で試合をするのは今年もうありません。
ただ、札幌はこれからも厚別での試合があるということです。
昨日のような強風はないにせよ(あってほしくない)
風が強いのが当たり前の厚別です。

どうか、厚別の風を「ホームの利」にしてほしいものです。


post by わたらせばし

09:18

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