手まり秋鮭ミックス@新千歳空港

2015年12月01日

 契約更改も始まり、チームを去る選手も出てきた。厳しい冬の到来だ。別れもあれば出逢いもあるだろう。こんな季節だからこそ、遠い記憶に思いを馳せてみたいと思う。

 ざわついている。2009年ホーム開幕戦。後半26分。先制点がベガルタ仙台に入り、まだ下を向く時間ではないとチームを鼓舞するべく声を張り上げようとした矢先のことだった。選手が一人消えた。 
 窓の外は一面の雪。始発便に飛び乗り千歳に着いたばかりの頭の回転は鈍く、虚ろな目がただ窓の景色を映しているだけだった。8時40分発の福住駅経由札幌行き高速バスが、寝不足の貧乏学生の体を運んでいく。とはいえ、いつまでも「へんじがない まるでしかばねのようだ」となっているわけにもいくまい。佐藤水産手まり秋鮭ミックス。この手にずっしりとくる重みと筋子と焼鮭の親子共演。これが400円だ。貧乏学生が貧乏旅行で真っ先に考えること。それは食費の削減。コスパMAXジャンボおにぎりを胃に収め、ようやく動き出した頭を働かせ今後の予定を確認することにした。
 改めて思い返すとつまらない旅をしていたものだ。今なら1泊2日は当然のことながら、まず缶ビールのひとつでも買ってバスの中で飲んだくれていることだろう。札幌に行き慣れてからも、帰りに回転寿司でビール1杯飲むことに無上の幸せを感じていたことを思い出す。置かれた場所で咲けばいい。人それぞれに幸せの形があるともいえる。
 ともあれ選手が消えた。決勝ゴールを決めた菅井が消えた。これは正確ではない。皆様も覚えておいでだろう。ゴールを決め、アウェイゴール裏に陣取る仙台サポーターの元へ走り出したまでは良かった。ガッツポーズを決め、広告看板を飛び越え、そして高さ2.5mのホバリングステージから飛び降りたのだ。毒気を抜かれたのかコンサドーレのカウンターは精度を欠き0-1で敗れた。この年ベガルタはJ2優勝を果たし、現在に至るまで降格していない。明暗分かれたとは言わないが、胸にもやもやした感情を抱くのは当然だろう。
 何にせよ、この試合から僕はサポーターとして歩み始めた。この試合を機に様々な人と出会い、日本全国津々浦々を行脚することになる。朝の新千歳空港で選んだ時点から、この後の波乱万丈な人生は決まっていたのかもしれない。無骨だが、大きく満足感のあるジャンボおにぎりのようなサポーター人生が。


post by kitajin26

21:51

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