2017年01月24日
アルベルト・ザッケローニ。1953年生まれのイタリア人監督はプロ経験こそないものの、95年当時セリエAに昇格したばかりのウディネーゼを率いてリーグに旋風を巻き起こした。その切り札となったのが3-4-3だったのだ。その導入は偶然出会ったという。…この話は有名すぎるので割愛します。気になる人はググってみてね。簡単に言うと4-4-2で戦っていたが、DFに1名退場者が生じ、そのまま3-4-2で戦ったところユヴェントスに3-0で勝ってしまったというもの。これがきっかけで本格的に3-4-3システムを志向するようになったようだ。この3-4-3を大胆に活用しウディネーゼを3位に押し上げたザッケローニは遂にACミランの監督に登り詰める。そして99-00シーズンのスクデットを獲得するのだ。
と、簡単にザッケローニ氏の経歴を紹介した。この後、紆余曲折を経て極東の島国で彼の運命を変えるあのスパイスと出会うことになるのだが、それはまた別の話。ここではあくまでも3-4-3について語るとしよう。
なぜザッケローニの3-4-3を紹介したか。理由は単純。守備の時にはCBが攻め込まれているサイドにスライドし、逆サイドのサイドハーフがディフェンスラインに落ちて、一時的な4バックを形成するシステムだからだ。守備時に5バックになってしまうことは3バックを用いるシステムの宿痾と言っても過言ではない。いかに全体をコンパクトに保ち、かつスペースを埋めるか。これがザッケローニの処方箋というわけだ。
だが、思い出してもらいたい。ザッケローニが日本代表を率いた時、この3-4-3のシステムは宝の持ち腐れとなったことを。どうしてこうなったのか。それは単純にディフェンスから攻撃、攻撃からディフェンスの時のポジショニングを、選手たちに上手く落とし込めなかったからだろう。当時は4-2-3-1全盛期。バルセロナ式4-3-3も持て囃される様になりポゼッションサッカー華やかりし頃だ。そんな時代に屈強なCFWを中心に置き、彼に絡むようなプレーを求められる2シャドー。残りの7人でボールを拾い潰すというようなリアリスティックなサッカーは、テクニックや創造性に溢れた代表選手たちには馴染まなかったのではないか。そもそも当のザッケローニが「日本に空中戦の文化はない」と明言していたのだから失敗したのも仕方がなかったのかもしれない。
とはいえその3-4-3というシステム自体は文句の付けようはない。それゆえ一番の課題となってしまったのが3バックから4バックへの移行だ。前編で触れた3バックから5バックへの移行の最大のメリットは、「CBが持ち場を離れないこと」だった。攻撃側からすれば敵のギャップを作るためにまず彼らがすることは、ボールを回し相手守備陣のスライドを促すこと。常に正しいポジショニングを取ることは困難を極める。このリスクを最大まで減らしたのが5バックだったわけだ。サイドプレイヤーは対峙する相手に合せて下がってくるだけでいい。あとは後ろで待ち構えるCBと協力してボールを奪い、カウンターに繋げることができれば少なくとも相手陣内までは押し返すことができる。
だが、プレーのレベルが上がるJ1の舞台ではサンドバックになってしまう危険性を孕んでいるため、コンサドーレ三上GM・四方田監督ともにシステムのレベルアップを図っているのだ。そう考えればSBの経験のある田中雄大の獲得にも頷ける。右WBのマセードもブラジル時代はSBだった。さらに考えを進めていくと左WBのバックアップは石井謙伍であり、右WBのバックアップは上原慎也ということになる。そう、彼らもSB経験者だからだ。改めて思うのが堀米悠斗の移籍である。ザッケローニ式3-4-3であれば、左WBとしての出場機会は彼が考えるより多かったのではないかと悔やまれるのだ。むしろボランチもこなせる分重宝されたのではないかと思う。そもそも田中の獲得は堀米の移籍に端を発している。今更言っても詮無いことではあるが、昨年彼の背番号を背負って戦ったものとして恨み節の一つも言いたくなるのだ。
さて前編ではアントニオ・コンテ、後編ではアルベルト・ザッケローニと異なる3-4-3を紹介してきた。攻撃の手法としてコンテを、守備の手法としてザッケローニを「良いとこ取り」することができればJ1残留が見えてくるという感じだろうか。そんな中でいよいよ明日ニューイヤーカップ・ジェフユナイテッド千葉戦が組まれている。私が見ることができる試合は28日のFC琉球戦になりそうだが、自分の予想が当たっているかも含めて結果を楽しみに待ちたいと思う。
プロフィール
98年J1参入決定戦に敗れ涙に暮れる札幌サポを見たことで、コンサ愛に目覚めた非道民。 何の因果か札幌に居を構え、試合結果に1週間のテンションを左右される日々。 いい年こいてまだ中二病が完治していない。 思い出とコンサの試合と日常をミキサーに投げ入れて、味の素で整えた文章を提供していく。 ご笑覧いただければ幸いだ。
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