チームの邦向正

2015年11月21日

 株式会社北海道フットボールクラブ改め株式会社コンサドーレ社長の野々村芳和氏曰く、アクチュアルプレーングタイムが前年と比較して伸びており、チームの目指している方向性としては一定の成果が出ているとのことだ。
アクチュアルプレーングタイムとは、アウトオブプレーになっていないインプレー中のみの時間のこと。ファウルを取られてからゲームを再開するまでの時間や、タッチラインを割ってスローインでボールが投げ入れられるまでの時間などを含まない、「実際のプレー時間」を示すものである(参照http://www.goal.com/jp?ICID=AR 2012/06/14 コラム:新たな見方を与えてくれる「アクチュアルプレーングタイム」)。参照にした記事には更にこのように書かれている。一般的にはAPTが長くなればなるほど、魅力的なゲームになる可能性が高いとされている。(中略)ここで言う「魅力的なゲーム」とは、誰が見てもおもしろいと感じられるゲームということだ。この「誰が見ても」というものが非常に難しいが、少なくとも「サッカーに興味を持ち観戦に訪れた観客にとって」と考えれば、札幌はコンテンツとして強化されてきたと考えられるだろう。
 単純に比較することは難しいが野球観戦を例に挙げる。1-0の痺れる様な投手戦とルーズヴェルトゲームと称される8-7の打撃戦。どちらが「一見さん」もしくは「ライト層」にとって魅力的であろう。まして首位争いをしているわけでもない中堅チームの試合で。痺れるなどと主観的な文言をつい入れてしまったが、個人的には追い詰められて手に汗握りようやくありつけた勝利の果実に美学を感じる。おおよそ一般的な意見ではなく、全ての野球ファンに同意が得られるものではないだろう。まして野球を愛した第32代アメリカ合衆国大統領には。
 少なくとも簡単に大きくラインへ蹴り出し、当座のピンチを凌いで行くサッカーに魅力を感じられないことはご同意いただけると思う。繋ぎを意識した結果、中途半端なカウンターになり痛いしっぺ返しをくらうサッカーに陥ってしまったというわけだ。これを野々村社長は「プレーのクオリティーの低さ」と断じた。高く保ったディフェンスラインからボールを奪取し手数少なくゴールに迫る鋭いカウンターは、洗練された美しさを感じる。ただし、ただしだ。カウンターとはある意味骨を切らせてミクをいや肉を断つところがある。この美しさは「ライト層」には伝わるだろうか。現にウチの嫁はカウンターの起点になるプレーを見るどころか、騒々しいドームの中で高鼾をかいている。極端な例を出したが、テレビ観戦時に僕も眠気を覚えたこともあるので、あながち間違いではないだろう。詰まるところ、かつてのバルセロナのように、相手に何もさせず、いつゴールを揺らすのだろうという点のみに観客の興味が集まるのが「魅力的な」サッカーなのかもしれない。
 過程を大事にするべきか結果を重視するべきか。勝つことがファンサービスと嘯いた名将は、今GMとして観客動員数の減少に向き合っている。昇格が至上命題であることは首脳陣もサポーターと共有していると感じてはいる。チームの評価基準として「アクチュアルプレーイングタイム」という指標を用いていることは一貫した強化方針であると評価することができる。「プレーのクオリティーの低さ」という課題に対して向き合い、特効薬の存在も理解していることはラジオ越しではあるが伝わってきた。結局、選手次第なのだ。試合会場を用意し、指揮官を選び、年棒を払い試合をしてもらう。これ以上のことは社長も監督もサポーターもすることができない。だからこそ、もどかしいしイライラするし何より悔しい。頑張れ。頑張っていることは充分過ぎるほど知っている。その上で頑張って欲しいのだ。その気持ちはサポーターに必ず伝わるし、それこそ「ライト層」にも伝わるはずだ。千葉戦を思い出して欲しい。不可抗力とはいえドームがひとつになった、あの瞬間を。
 赤黒のユウシャたちが変わらない限り、社長の言う「今年こそJ1昇格」という言葉は顔芸一発で笑いを取れる希代のコメディアンと同じような絵空事に聞こえてしまうのだから。


post by kitajin26

22:47

試合感想 コメント(0)

この記事に対するコメント一覧

コメントする