2015年07月25日
「この成績でボーナスもらって恥ずかしくないのかな?」
白壁に四方を覆われた小会議室。
「見込みの数字じゃなくて、出来るのかどうかを知りたいんだよね」
胸元を肌蹴させ、トントンとペン先を提出した資料に打ち付けサディスティックな笑みを浮べながら新任の営業部長が問うてくる。
社長が交代し、体制が大幅に変わった。
評価方式も変わり、エリア単位で担当する営業の僕たちに新しい目標が降ってきた。
会社として拡販したい製品の売り上げ、そして課されたノルマの達成率のみで判断されることとなり、どのように活動していくか方針を報告する会議での一幕。
前年発売の新製品で営業所でもTOP3の売り上げを達成し、その実績が評価された上での業績賞与は最高水準のもの。
「このままだと再教育プログラムを受講してもらうことになるね」
特殊な業界であり、4月に課された目標に対して6月にどうこうすることが難しい中でまず活動指針を報告せよと指示があった。
会社の都合で発売時期が延期になり、発売され次第購入すると予約をいただいていた得意先にお詫びをした上で参加した営業所会議だった。
ぐじぐじ言っている。
前職のことであり、吹っ切れたつもりだったが筆を進めるにつれて当時のやるせなさが戻ってきたようだ。
売り上げを上げたのは僕であり、新製品も発売になれば実績を
上乗せすることが出来た。
発売していれば他社に採用を取られることもなかったのに。
そもそも前年比で売り上げをプラスにしているのは僕だけなのに。
どす黒い感情が渦巻き、その日僕は転職活動をスタートさせた。
チームスポーツは難しい。ただ自分が納得できるプレーをすれば評価されるわけではないからだ。
勝たなければならない。打ち負かさなければならない。そして何より評価するのは自分ではない。
評価基準は無限にあり、日々新しい指標が開発され消えていく。
”納得がいかない”
7番、8番。
どちらも突き詰めれば、限られた時間の中でより長く自分を輝かせるため。
そのための移籍。
納得いくまで足掻くしかないし、その姿は訴えるものがあるはずだ。
突然の監督交代である。
もう少し待てばよかったのにとは言わない。
そんな簡単に踏みとどまれる決断ではなかっただろうから。
方針は変わる。評価方式も変わる。
ただ求められるのはひとつだけ。結果だ。勝ち点をどれだけ稼ぎJ1への切符を勝ち獲るか。
品切れになっている製品を拡販しろと無理強いされる僕らと違い、彼らは自ら製品を生み出すことが出来る。生み出すことが出来なければ顧客への信頼を失うだけだ。
日曜日に愛媛FC戦がある。
僕はそうならないと信じている。
プロフィール
98年J1参入決定戦に敗れ涙に暮れる札幌サポを見たことで、コンサ愛に目覚めた非道民。 何の因果か札幌に居を構え、試合結果に1週間のテンションを左右される日々。 いい年こいてまだ中二病が完治していない。 思い出とコンサの試合と日常をミキサーに投げ入れて、味の素で整えた文章を提供していく。 ご笑覧いただければ幸いだ。
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