2016年01月26日
1月16日早朝。キックオフ2016の開催日となったこの日、コンサドーレサポーターに衝撃が走った。「【札幌】博報堂DYMPと戦略パートナー契約へ…1年2億円、7年契約」。もともと「本社を東京に置く大企業が北海道コンサドーレ札幌と2016シーズンから2年数億円のスポンサー契約を結ぶ」という噂はあった。年末に道新スポーツにおいて掲載された2015シーズンを総括するコラム欄でも触れられるほど、公然の秘密となっていたのだ。野々村社長も守秘義務に抵触するとして明言は避けていたものの、その存在は認めていた。昨シーズン終了後からサポーター間を賑わせた噂はこの日遂にヴェールを脱ぐことになった。
改めて博報堂DYメディアパートナーズとの報道における提携内容を整理しよう。
① 株式会社コンサドーレと博報堂DYMPは「クラブビジネス戦略パートナー」として7年契約を結ぶ。
② コンサドーレはクラブのプロモーションなどを担当する3人程度の常勤者を含むスタッフを招くほか、2年間で数億円の支援を受ける。
③ 札幌の売り上げが増えるとともに収入増加分の一部が、博報堂DYMPにマージンとして支払われる。
④ 資金支援のうち年間約1億円を選手の人件費に充てる方針。
⑤ 新規ファン開拓のため、支援を元手に今季のホーム全21試合で地上波テレビ中継の実現を目指しており、優先放映権を持つスカパーなど関係者との交渉を既に進めている。大型契約で得た金銭は、露出の拡大と選手人件費に注ぎ込み、クラブ力の強化を図っていく。
以上の5点が報道されている提携内容になる。この内容についての野々村社長がどのように説明するのか、この生プレゼンを観に札幌ドームへ足を運んだ。
大型ビジョンにスライドを示し雄弁に語る野々村社長。まさか新外国人選手のスカウティングビデオまで公開するとは思わなかった。松山光プロジェクトなどサポーターから寄付を募るなどしてチーム強化に臨んでいるチームであるので、このような資料の公開は評価したいと思う。エゾデン設立に関しても触れていたが、これについてはまた後日触れたい。
「皆さん今朝の報道で知っていると思いますが」と社長はスライドを切り替え、遂に提携内容の説明が始まった。おおむね報道の通りであり、「1年推定2億円」という報道については「数億円」と幅を持たせた。「今季のホーム全21試合で地上波テレビ中継の実現」についてはスカパー側との交渉を認め、今季からのホーム全試合中継の実現は困難で数試合はスカパーのみでの中継になるかもしれないという展望を示した。これはJリーグとスカパー側での契約内容との兼ね合いもあるためだと説明があり、ただ粘り強く交渉していくという前向きな姿勢が垣間見えた。
大手広告代理店との提携に浮かれていた僕だったが、あくまで周囲のサポーター達の反応は醒めたものだった。③の「収益増加分をマージンとして博報堂DYMPに支払う」という点を悲観視し、彼らの良い様にされるのではないかという見方をする声がちらほら聞かれたのだ。
あらためて広告代理店の業態とはなんぞやというところをネット辞典からの引用ではあるが示すことにする。「メディアの広告枠を広告主に売り、手数料を得るというのが基本的企業形態である。従来は純粋にそれだけを行っていたが、時代とともにその役割は広がっており、その枠に載せる広告を制作指示するのも広告代理店の業務となっている。」
彼らの良い様にされるかもしれないという危惧は「その枠に載せる広告を制作指示するのも広告代理店の業務となっている」という点だろう。人気のある選手を優先的に起用するよう現場に働きかけたり、稼働率の悪い高額選手を解雇するように提言するなど、現場を無視した改善案を「パートナー」という立場から振りかざしてくるのではないか。このような不安が燻っているように思われる。
不安はもっともである。利益を上げるように迫ってくるのは「出資」した企業としては当然であろう。個人的な予想ではあるが、2年に分割して「出資」した数億円を7年かけて「返済」するため、年間の「返済額」は決まっているのではないかと考えている。そのうえで「出来高契約」として、増益分の一定額を「マージン」として支払う。このように考えると④の「資金支援のうち年間約1億円を選手の人件費に充てる方針」といういささか慎重な強化費の使い方が、至極妥当に見えてくるのだ。このように考えると初期投資の回収は可能であり、更なる増益のために「金の卵を産むガチョウの腹を割く」というような無体なことを百戦錬磨の大手企業がするとは思えない。勿論考えが甘いと言われればそれまでだが、7年という長期契約だ。中長期的に利益を上げていけるような「サポート」をしてくれるのではないだろうか。
まずは露出の増大が必須だ。全道への露出という面ではファイターズに一日の長がある。ホーム問わずビジターゲームでもどこかしらの局で生中継が組まれている。そのうえ応援大使として各市町村に選手が赴き、より身近な存在になろうと努力を重ねている。コンサドーレとしても、試合の中継を通し露出を拡大し、今後予定しているユースの拠点拡充を活用しファンの裾野を広げていかなくてはならない。
「最高のファンサービスは勝つことだ」と嘯いた某監督がいたが、一理あると思う。勝てない試合を見ても面白く思わない層も一定数は居るだろう。今年からはホームゲームの地上派中継の拡大がある。スタジアムに詰め掛けるサポーター以上にテレビの前のファンのために、ホーム戦は一層負けられなくなる。J2に降格して4年目を迎える2016年シーズン。今年も勝負のシーズンがやってきた。
プロフィール
98年J1参入決定戦に敗れ涙に暮れる札幌サポを見たことで、コンサ愛に目覚めた非道民。 何の因果か札幌に居を構え、試合結果に1週間のテンションを左右される日々。 いい年こいてまだ中二病が完治していない。 思い出とコンサの試合と日常をミキサーに投げ入れて、味の素で整えた文章を提供していく。 ご笑覧いただければ幸いだ。
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