2016年01月20日
いよいよ北海道コンサドーレ札幌が本格始動した。広々とした札幌ドームに多数のサポーターが集い盛り上がったキックオフ2016。新加入選手の紹介や新背番号の発表、選手がMCとして繰り広げるトークショーに野々村社長による経営方針プレゼンなど、多岐にわたる内容で我々に飽きる暇を与えなかった。そんな大成功に終わったキックオフに水を差すわけではないが、改めて札幌ドームは「立派」だなと考えさせられてしまう。「過ぎたるは猶及ばざるが如し」という故事がある。出典は『論語・先進』にあるとされ、孔子が二人の門人子張(師)と子夏(商)を比較して言った言葉に基づく。「水準を越した師も水準に達しない商も、ともに十全ではない。人の言行には中庸が大切である」と説いたという故事から。「何事も程ほどが肝心で、やり過ぎることはやり足りないことと同じように良いこととは言えない。良いと言われることでも、やり過ぎは害になるということ。」という意味で用いられる故事だ。
なぜ長々とこの故事を引いたのか。その理由はと申せば、味の素スタジアムと札幌ドームという立派「過ぎる」スタジアムを有するJ2クラブが開幕で激突するためだ。東京ヴェルディの羽生英之社長は、Jリーグ・ディスラプション(https://newspicks.com/user/9179/ )における金子達仁氏とのインタビューで、「東京23区内に3万人以上を収容できるサッカー専用スタジアムを作る方策はあるのか」という質問に対し、このように答えている。「現在、どこかは言えませんが候補地もすでにあります。そこの首長さんやデベロッパーの方々とは、資金調達の方法などいろいろな話を進めています。今は2020年の東京五輪があり建設費が高騰してきているので、タイミング的には、東京五輪が終わったときに走りだせるような建設スケジュールでいければと思っています。そのスタジアムが手に入れば、われわれはJ1の中堅クラブ並みの収入を手にできると考えています。」東京ヴェルディが味の素スタジアムから離れたがっている理由は社長の弁を借りるとするなら、「調布と府中、三鷹エリアというのはFC東京のホームタウンになります。ですから、われわれはスタジアム周辺の営業活動ができない。サッカークラブは、スタジアムを中心に半径1キロ、3キロ、5キロ、10キロ、20キロにおけるマーケティング戦略を考えるべきだと思っていますが、それができないということが大きい。」という近隣からのサポートを受けられないというデメリットが大きいと思われる。加えて1試合約2000万円(警備費含む)に上るという高額な使用料を軽減するという経営的側面もあるだろう。
「高額のスタジアム使用料」。資金が潤沢でない両チームとも頭を悩ませるのはこの問題だ。コンサドーレ札幌の野々村芳和社長はフットボールチャンネル(http://www.footballchannel.jp/2015/12/19/post127620/ )のインタビューにおいて、自前のスタジアムを持つことのメリットについて、このように解説している。「いまと同じ売り上げしかないとしても、札幌ドームの借用料がなければ1億円以上は他のことに使える。当然今よりも売り上げを伸ばすことを考えるけど、自前のスタジアムができることはクラブを大きくしていくためには絶対必要だと思う」。また、「スタジアムだけでなく、商業施設のような多くの人が常に集えるサッカーとは別のものを用意していく必要があるんじゃないかな。ガンバのスタジアムも周りにいろいろできる。多くの人が日常的に行き来する中にあるスタジアムは面白いと思う」と認識を示し、ヨーロッパで主流となっている多機能複合型スタジアムを志向していることを窺わせた。スタジアムの使用料軽減は勿論のこと、施設として収益を上げ企業として体力を強化していく。何度も経営危機に見舞われてきた北海道コンサドーレ札幌が次のステージに進むためには、多機能複合型の新スタジアムの建設は悲願になるだろう。
また別の側面から東京ヴェルディと北海道コンサドーレ札幌の新スタジアム計画を見ると、もうひとつ共通点が見えてくる。そう、オリンピックだ。2020年東京オリンピック、2026年札幌オリンピック(?)。招致段階であるので(?)を付けさせてもらったが、成熟し切った人口100万都市が古い殻を脱ぎ捨てて更なる成長を迎えるチャンスになる。散々話題に上がり醜態を見せ付けてくれたが、国立競技場の新築はオリンピックが招致されなければ1490億円という巨額な予算は組めなかっただろう。残念ながら東京ヴェルディに対しては五輪に向けて高騰する建築費が夢実現の障害になってしまったようだが、東京オリンピックが成功すれば首都圏の景気の上昇の後押しを受けてスムーズに本拠地を移転することが叶うかもしれない。
2026年冬季五輪の招致を向けて札幌市も動いている。年明け1月4日の北海道新聞に「冬季トレセン、強化に弾み 真駒内競技場、札幌市が指定要請へ」の見出しが躍った。内容としては「札幌市が2026年の招致を目指す冬季五輪・パラリンピックのスピードスケート会場の候補地としている道立真駒内公園屋外競技場(札幌市南区)について、秋元克広市長は4日の記者会見で、「ナショナルトレーニングセンター(トレセン)の指定を国に要請したい」と表明した。指定が実現すれば、地元選手の強化に弾みがつくほか、国から運営費などの補助金を受けられるなど大きな利点がある。」。この記事で大事なことは「市は、1970年に造られた真駒内屋外競技場について、五輪で使う場合は約200億円かけて屋内型に建て替えることを想定している。五輪後はフィギュアスケート、ショートトラックでの利用も見込んでいる。」と施設の立替まで踏み込んでいる点だ。財政が逼迫している道としては難色を示しているとの報道もあるが、札幌市が積極的にスポーツ施設の改築を提案していく姿勢を見せたことは、オリンピック会場としても活用できるような複合スタジアムを検討している野々村社長の構想を後押しするものとなりそうだ。(http://www.footballchannel.jp/2015/12/19/post127620/2/)
各チーム新スタジアムの構想を持ち、現実にするためのタイミングを狙っている。東日本大震災からの復興や東京オリンピック特需など建設費用が高騰している現在。資金面や建築用地など都合が付かずなかなか実現に至らず切歯扼腕する日々を送っていることだろう。ガンバ大阪の新スタジアムが2月にこけら落としを迎える。募金により建築費を賄ったという浪漫の塊だ。俺が街のチームの顔であるスタジアム。用地や構想などまだ机上の空論とも言える段階ではあるものの、誇りを持って他チームのサポーターに自慢できるような「立派な」スタジアムが、この札幌の街に出来るであろう日を夢見たいと思う今日この頃だ。
プロフィール
98年J1参入決定戦に敗れ涙に暮れる札幌サポを見たことで、コンサ愛に目覚めた非道民。 何の因果か札幌に居を構え、試合結果に1週間のテンションを左右される日々。 いい年こいてまだ中二病が完治していない。 思い出とコンサの試合と日常をミキサーに投げ入れて、味の素で整えた文章を提供していく。 ご笑覧いただければ幸いだ。
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