それぞれの未来

2015年12月04日

 「前田が子供を教えたら子供も凄く喜ぶし上手くなるんだろうなあとか思っている。」意外だったのか、真偽のほどをたずねるラジオMCの質問に野々村社長は重ねてこう言った。「結構、子供に教えたりするの上手いんですよ。」
 前田俊介、ナザリト、古田寛幸、菊岡拓朗、ニウド、園田淳の6名がチームを去ることになった。その話題に触れた時に思わず洩らした本音だった。その上でかつて選手だった社長らしく、選手の気持ちを思いやって葛藤する胸のうちを明かす。「でも僕のそういう風にいったら面白いんだろうな、というのは彼らの人生の中の提案のうちの1つでしかないですからね。もっとサッカーやりたい!という想いは凄く分かるし、そこはみんな難しいところですよ!」
 前田俊介という選手はエリート中のエリートである。年代別の代表に選ばれ、恵まれない体格にも関わらず確かな足元の技術を生かしチームを渡り歩き中心選手として活躍している。年齢もまだ29歳だ。もちろんまだまだやれるという本人の自負もあるだろう。そのうえで我が儘を言えるのならば、その経験と技術を後進の指導に活かして貰いたいという所だ。子供たちは食い入る様に見ることだろう。ボールが足に吸い付くようなトラップとDFを軽々と交わしていくその独特なリズムのドリブル。決して順風満帆なプロ生活ではなかっただろう彼の口から語られる経験と教訓。その全てが子供たちを成長させるはずだ。面白いではないか。彼の門下生が札幌の両翼を担うかもしれないのだ。するするとペナルティエリアに入り込み、師匠譲りの澄ました顔でゴールの隅にボールを蹴りこみニヤリと笑う。そんな浪漫が広がる。そして僕らは呟くだろう。「前俊を諦めない」と。
 選手は決してゲームの駒ではない。面白いからといって勝手に願望を押し付けることはできない。選ぶのは彼らだ。明日、砂川誠が決断する。練習後に自身の報道についてコメントをするとのことだ。引退。このままでは試合に出られないと、断腸の思いでチームを離れ新たな勝負の世界に身を置いた。そして勝ち取った388分。やり切ったのだろうか。おそらくやり切ったのだろう。切れ味鋭いクライフターンでDFを置き去りにし、前傾姿勢で突進してくるあのドリブルはもう見られない。
 明言はしていないが、札幌としては指導者としての椅子を用意しているようだ。強化費が3年前と比較して倍増し、ユースから大量昇格した時よりもチームのレベルが上がっている現在。今後トップチームへの昇格は狭き門となることが予想される。その中で切れ味鋭いスナイフターンを武器にサイドを切り裂く「北海の荒鷲」が昇格してくる未来を夢想したいと思う。


post by kitajin26

23:09

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