アンチ・クライマックス。

2006年01月29日

JSPORTSで放送されている「フットボール・アンチ・クライマックス」という番組がある。内容をかいつまんで言うのなら、Jリーグの一試合を90分という限られた時間の中ではなく、トレーニング、ゲーム前、ゲーム後の表情から丹念に追いかけ、選手やコーチのコメントを引き出しながらその試合を再構築する番組、というところだろうか。月に一度の間隔で、一試合をピックアップして構成している。(ちなみに札幌は02年厚別での対FC東京戦を第2回に放送されている)
今回の放送(第41回)は、今までの監督の言葉を集めた「監督の言葉」。そのなかで横浜FC監督(当時)の信藤健仁氏が語っていた言葉。

「必要以上のリスクマネジメントは怯えだ」

前後の文脈を補完すると、たとえば相手が一人しか上がってきてないのに、味方の選手はいつも3人守りに行っているような戦術の型にはまった守り方しかできていない。リスクマネジメントは必要だが、フットボールはリスクを背負ってゴールを決めなければ勝てない。ときにはリスクを冒して点を取りに行くことが必要だし、必要以上のリスクマネジメントをするのは点を取りに行くという意識が低いということ≒「怯えの意識」の表れだ、ということ。
フットボールはゴールがなければ成り立たないスポーツだ。ゴールを決めなければ勝利のないスポーツだ。ゆえに、守備の場面であっても意識をゴールに向けていなければならない。ゴールのために相手のボールを奪う、そのためにマークにつく、プレスをかける、ポジショニングを保つ。すべてはゴールに向かっているべきプレー・・・ということができるのだが、すべからくリスクを冒してチャンスをものにするプレーが見られるというわけではない。札幌の例でいうと去年の最終戦、西谷選手がチャンスに横パスを選択して怒った柳下監督に交代させられたというシーンがあったのだけれど、柳下監督はまさにこのとき、「リスクを冒さないプレー」に怒りをあらわにしたのではないだろうか。先述した論に倣うのなら、西谷選手はゴールのために「パス」という確実性の高い選択をしたけれども柳下監督はそこで「シュート」というリスクを冒してほしかった、と言い換えられる。ゴールに一番近いプレー。それを求めるのがサッカーだし、そのために戦術や戦略がある。

ちなみに、横浜マリノス監督の岡田武史氏も「腰の引けたサッカーだけはしたくない」というコメントをしている。信藤氏の言葉をメンタルなニュアンスを交えて翻訳すれば、こういう言葉になるだろう。もっとニュアンスで読み替えてしまえば、元・FC東京監督の原博美氏が言う「シンプルに入れちゃえば1番いい」になるのかなと思うけど、さすがにこれは意訳しすぎか。

そして今、札幌に足りないものも「リスクマネジメントの意識」ではないかと思う。「必要以上にリスクマネジメントの意識を持ちすぎている」ところがあるんじゃないだろうかと。それは運動量とか、戦術ということではない。もっと深い、根っこのところにある、「ゴールへの意識」や「勝利への執着心」に繋がる意識だ。メンタルマネジメント、と広義に表現してもいいかもしれない。真の意味での「戦う集団」としてシーズンを戦い抜くために、キャンプで「ゴールへの意識」を十分高めてきてほしい。



post by ishimori

21:43

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