2007年02月11日
TBSラジオで現在放送されている番組に「文化系トークラジオ Life」というのがあって、ここ半年ばかり毎週聴いている。とはいえ北海道の地上はラジオではネットしていないので、Podcastで聴いている。ラジオで流れたトーク部分がまるまる聴ける上に、Podcastでしか聴けない「外伝」なんかもあったりしてなかなか面白い。内容はと言えば、「戦争とサブカルチャー」のような堅いテーマから「モテる技術」なんていうユルいテーマまでを「文化的側面(体育会系とは真逆に位置する、サブカルや社会学系なところ)」から、メインパーソナリティーの鈴木謙介氏と編集者・ライター・批評家などのサブパーソナリティーがあれこれと語るというトーク番組。自分もどっぷりと文化系な人間なので、トークに共感したり笑ったりうなずいたり。ほんとうに面白いので、是非一度聴いてみてください。 で、2月3日の放送は「東京」というテーマだったのでいつもよりもじっくりと聞き耳を立てていた次第。なんで「東京」というテーマにぴんと来たのかというと、大学時代に卒論を書いたテーマが「大正政治史における関東大震災の復興計画について」なんていうものだったからだというのもあるし、東京という存在そのものが自分にとってものすごく興味を惹かれるものであると同時に、いろんな感情や思い出のある街でもあるからだ。 そもそも「東京」という存在に興味を持ったのは大学で都市論の講義を聴いたり、ゼミで江戸時代の文化や東京の近代建築について調べたりしたのが最初のことで、そこから日本政治史を専攻にしたということもあって「東京の都市計画」という話と「大正時代の政治」を組み合わせて研究(というにはおこがましいが)していたことから、というのが表向きな話になる。ただもっと個人的な話に限定していうと、高校時代にまで興味のきっかけは遡る。
高校時代、僕は大学進学を考えていたもののどこに行くかは考えていなかった。親からは「地元の北大に行け」とは言われていたものの、大学にまで北海道で過ごすのはなんだかもったいないとぼんやり思っていた。せっかく進学するのだから、首都圏か阪神圏の大学に行きたいなあと考えて調べてみると横浜の某国公立大学が自分のレベルにあてはまった。合格レベルで言うとC判定プラスくらいだったかと思う。その大学に狙いを定めて「私立には行かないんだから道外に出てもいいじゃん」と親を説得して、無事に合格できた。そのときの僕は 「あこがれのトーキョーライフ!」 という考えでいっぱいで、前途洋々とした新生活にわくわくしていたのだ。だけど、この時点で地方の人間が陥りやすい一つの罠に嵌っている。それは「1都3県みんな首都圏」という間違った思いこみである。たとえ住むのが横浜だとしても、行けば高円寺や下北沢みたいなサブカルチャーの匂いがするちょっぴり刺激的なキャンパスライフを送れるものだと信じ込んでいたのだった。後にそれはものの見事に夢と砕け散り、それゆえに「東京」という街そのものへのねじれたコンプレックスを持つことになってしまったのだけど。 そうやって無邪気にわくわくして上京して横浜での新生活を始めた僕は愕然とした。横浜は横浜でも、僕の通っていた大学はかなりの横須賀寄りに存在するのに伴い、住むところも必然的にそっちの方向に引っ張られることになった。京浜急行の「屏風浦(びょうぶがうら)」というなんだかそこどこよ(横浜のみなさんすいません)、というような小さな駅から坂を上って15分のところにある6畳一間のアパートで理想とはかなりかけ離れたうらぶれた生活だった。僕が抱いていたアーバンでクールなシティライフはどこへ行ったんだ!と思いながらもそこは学生、なおかつアウェイ遠征で常に金のない身には引っ越しなどできるはずもない。近くには横浜一荒れていると噂の高校もあり、かなり窮屈だった。東京(首都圏)ってこんな街じゃないよなあ、と万年床の上で思い続けていた。後に屏風浦はとあるロックバンドが出したアルバムの中の曲名にもなってちょっと溜飲を下げたような気もしたけれど、やっぱり東京という街への妄想的な憧れや、一方的な思いこみに近いコンプレックスは消えなかった。 その大学を卒業した後、僕は東京に勤務地のある会社に就職したのだが、そこでもまた「自分の思い描いていた東京」とはかけ離れた世界にがっかりしてしまうことになる。 一つめが職場。面接は渋谷の宮益坂(この地名だけでなんだかときめく)をちょっと登ったところにあるオフィスだったのに、いざ配属となってみると「五反田」。なんだよそれ!とひとり憤慨してしまった。東急の地下で昼ご飯を買ってきたり会社帰りにHMVに入り浸ったりとかできないじゃん!俺の思い描いていたアーバンで(略)なトーキョーライフはどこへ!そうしてさらなるがっかりを得つつ五反田のオフィスで働くことになったのだけど、ここもなかなか僕の想像とは逆方向に濃いところだった。夜遅くまでやってるのは飲食チェーン店か本屋が一軒くらいのもので、昼ご飯を食べるのは居酒屋がやってる高めなランチメニューか、もしくは古い店構えで安いけど微妙な味の料理を出す中華屋くらいしかなかった。駅の向こうにはあやしげな飲食店と風俗店ばかりがギラギラとネオンを光らせていた。せめて東京で働いてるときくらい、かっこいいトーキョーライフ……なんていうのはもはや夢物語でしかなかった。 さらに追い打ちをかけたのがその当時住んでいた借り上げ社宅で、こともあろうにアーバンとはほど遠い南武線沿線にある川崎市の某所(川崎市のみなさんすいません)にあるマンション。仕事が終わって最寄り駅に降りるとコンビニの灯り以外は真っ暗な街で、仕事で失敗した時に帰るときなんかは暗さで悲しみが増幅されて余計に落ち込んだりした。そうして落ち込んだままの何もない休日なんかには、ひとりマンションの裏にある川べりにいってため息をついていた。その僕のため息を流していたのが、多摩川だった。川の向こうは東京の狛江で、渡ってしまえば昔思い描いていた生活にちょっとだけ近づける。けれどそのわずか先にある「川向こう」へ行くだけで家賃は1万上昇し、暮らしはなんとも心許なくなる。どうしても手が届きそうで届かない東京という街。もどかしさを抱えながら僕は川向こうを見つめることしかできなかった。そのもどかしさをどうにかして抑えようと、自分は東京の町並みを散歩することがひとつの趣味になっていった。冬の日にゆりかもめでひとり有明に降り立ち、海から叩きつけてくる強風に身を任せてさまよっていたり、深夜の新宿から皇居までひたすら歩き続けてみたり、休日に用もないのに出かけては都内のビジネスホテルに泊まってみたり、そんなことを延々繰り返した挙げ句に僕はいろんな事情で仕事を辞めて札幌に帰ることになってしまった。 札幌へ帰ることになった時の気持ちを今でもよく憶えている。どうにか川向こうまで近づいた東京から、こんどは海峡ひとつ隔てた地元へ出戻りになるという惨めさ。地元へ逃げ帰るような悔しさ。僕は荷物をまとめながら、東京への憧れが一部分で逆流して心のどこかで憎しみへと変質していくのがありありと感じられた。大学へ進学を決めたあのとき、僕は確かに「故郷」を心の中からどこかへ捨てる覚悟でここまで来たはずだったのだ。どこでもない、「東京」で自分は生きていく覚悟を決めたはずだったのだ。室生犀星の言うとおりに「故郷は遠くにありて思うもの」で、盆と正月の帰省に「とらや」の羊羹なんかを手みやげにして帰り、東京の話をすることがささやかな夢だったのだ。それがただの見せびらかしであったとしても、自己満足であったとしても。東京に暮らしてもフットボールは故郷を応援するという、二律背反のような思いを持っているとしても。 それから幾星霜、今も僕はいったん捨てたはずの札幌で冬を越している。どうして僕はここにいるのだろう――そんな思いを抱きながら。今夜みたいな真冬の夜には、特にそう思う。僕は今でも、東京への思いを捨てきれずに、いつか必ず住んで、あそこで生きてやるとずっと思い続けている。その思いは、フットボールとは全く別のところにある、僕自身がどこまでも拘泥していることだ。 僕だけにとどまらず、東京について語るべき思いを持つひとはたくさんいる。それが憧れであれ、はたまたどうしようもないほどの嫌悪であれ。その街並、社会性、様々な文化の発信拠点、「東京」という街の名前を聞くとどうしてか思いを巡らせずにはいられないのは僕だけではない。ラジオでいろんな人がいろんな東京を語る声に耳を傾けつつ、なんでこんなに東京は「語りたい街」なのだろうかと思いめぐらせつつ、なんだか思っていたよりも違う愚痴っぽい方向にいってしまったこの文章に苦笑いしつつ。
はせがわ
Re:近くて遠い街。
2007-02-13 11:04
番組で紹介したかったような内容ですね。 Lifeの番組サイトにもリンクを貼らせていただきましたが、よろしかったでしょうか? http://www.tbsradio.jp/life/20070203/
ishimori
Re:近くて遠い街。
2007-02-13 17:37
>はせがわ様 プロデューサーさん直々にコメントを頂けるとは! リンクありがとうございます。拙文ではありますが、貼っていただけると嬉しいです。 今度はメールを送って読んでもらって、特製バッジをもらいます(笑)。 ちなみに、川崎時代に住んでいたのは「宿河原」でした。 高校を挟んで裏はすぐ多摩川で、そこから向こう岸の狛江を眺めていたのを思い出します。
アラブ
Re:近くて遠い街。
2007-02-13 19:59
中々上手く合致しない自分の「憧れ」と「現実」 東京はやはり何か憧れる何かがあり、それを実現するのは 決して無茶な願いでは無いはずなのに、何故か難しい気がします。 それは憧れている内容が、実は「憧れ対象の実情」に決して合致しないからなのか それともそもそも「憧れそのものが間違ってるのか」は 憧れが現実化しない以上はわからないというジレンマがあるように私などは思います。 私などは、札幌での6年、東京での6年、それぞれに凄い期待を持っていましたが 今も色々足掻きはするものの、中々「憧れ」は達成出来そうにありません。 もしかすると一生「終わらない車庫入れ」的な、 傍から見れば別にいいじゃんと言われそうなジレンマとやきもきを 抱えていくのかなと、そんな風に思います。 ど真ん中にいる筈なのに、何故か満たされない。 そんな自分が抱いてるジレンマをしんみりと思い出しました。 「東京」・・・・謎の多い言葉、対象です・・・・
はせがわ
Re:近くて遠い街。
2007-02-18 12:54
ぜひぜひ、メールをお待ちしております。 ウェブ中継もやってますので、機会があればリアルタイムで聴いてみてくださいね。
淫インモラル
Re:近くて遠い街。
2013-10-21 17:25
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Re:近くて遠い街。
2013-10-21 17:25
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プロフィール
生まれ:1978年旭川市生まれ。 育ち:道内あちこち。その後横浜、川崎を経て再び札幌。 観戦暦:1996年・対日本電装戦が初応援。翌年より道外への進学に伴いアウェー中心に応援、1998年よりアウェイコールリーダーとなる。2003年春に札幌へUターンし、現在ホームゴール裏で応援中。 サッカー以外の趣味:音楽と活字。
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