後悔

2005年12月21日

選手に渡したかった、札幌を去ってしまう選手達に渡したかった、と後悔していることがある。
黄色をしたシリコンゴムのブレスレットだ。
このラバーブレスというのは「ほっとけない世界のまずしさキャンペーン」で多くの人が知ることになったものだが、渡したかったラバーブレス(「イエローブレス」とよく言われる)はそれよりも前に始まっていた。
活動を始めたのは自転車競技界の英雄、ランス・アームストロングである。

ランスは将来の自転車競技を背負って立つと期待の大きかった25歳の当時、主治医からガンを宣告されてしまう。しかも初期治療が遅れていたがために彼のガン細胞はランスの腹部や肺、脳にまで進行してしまっていたのだ。
しかし彼の強力な意思と周囲のサポートによりガンを克服し、1999年にツール・ド・フランスを制覇する。それから前人未踏の7連覇を成し遂げ、2005年に自転車界を去った。そして、今度はランスと同じようにガンに冒されている、ガンと共に生きるためにガン撲滅のための運動に身を投じたのだ。(ここまで要約した「ガンを克服した」話は、自身の著書である「ただ、マイヨ・ジョーヌのためでなく」に詳しい)

そのガン患者支援のために彼は財団を立ち上げ、前述の「イエローブレス」の売り上げをガン撲滅のための活動資金としている。そしてそのブレスには、こう文字が刻まれている。

「LIVE STRONG 」

このブレスは自転車レースやガンと戦う人たちだけでなく、彼の活動に共感する市民や他のスポーツ選手にも広まっている。それは、このブレスにこめられた思いはガンに対してだけのものでない。人々がそれぞれの人生を、困難を乗り越え、強く生きるメッセージがこの小さなブレスの中にこめられていることを感じて、共感しているからだ。
「強く生きろ」ーーみんながどこで苦しんでいても、ともに強く生きようとする思いはこのブレスを通じて共有される。そして、何よりも強い絆となる。
僕は最後の何試合かを、このブレスを身につけてゴール裏で応援した。強く生きよう、強さを手にして、勝利を掴もうーーそんな思いを持って。

フットボールの場所だけではない。どこかに出るときには、いつもこのブレスを左腕に着けている。このブレスはもはや僕にとって、お守り以上の価値がある。勝手な思いだと笑われるかもしれないが、僕は選手達にこのブレスを渡したかった。強い気持ちで戦う絆として、これを渡したかった。

「LIVE STRONG」

この気持ちで、フットボールの世界で、日常社会で、僕は生きていこうと思う。

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また、リストバンドの発送は10個単位で行われるのでご注意を。



post by ishimori

02:37

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