ハッピー・ロンリー・ウェディング

2005年11月21日

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ドームで選手が戦っている時間に、僕はにわか写真係として親戚の結婚式に出席していた。持っているデジカメで生まれたころからの付き合いである彼女がドレス姿ではにかんだような、泣きそうなような、でも嬉しさに満ち溢れた表情をしているのを写真に収めた。親戚からは「次はお前の番だな」なんて言われる。とんでもない!っていうかほっといてくれ勘弁してください。
彼女が親に向けて手紙を読むときに、不覚にも涙腺がふと緩んでしまった。彼女の一家は素晴らしい家族だった。お嬢さん二人を立派に育て上げ新たな人生に送り出すというのは、やはり嬉しさもさびしさもあるんだろな、そんな風に思っていたらちょっと泣きそうになった。親御さんの気持ちってこんなのよりもっともっと強いんだろうな。親って強いんだな。

式が終わって控室に戻り、真っ先に携帯の電源を入れて速報を見る。清野がハット!慌ててリロードする。追いつかれている。嘘だ。嘘だ。リロードを繰り返す。しかしスコアは変わらず、引き分け。ふうっと息をついて片づけを始めた。朝と変わらず霙がぼたぼたと落ちていた寒い一日だったけど、いろんなところで体が熱くなる一日だった。

さて、「サポ婚」という俗語がある。
「サポーター同士で結婚する」ということだ。
僕の周囲でも「サポ婚」の人を何組か知っていて、昔は周囲がびっくりしたものだけど今となってはすっかり普通のことになっている。他クラブなんてスタジアムで挙式するというイベントがあるくらいだし。
昔に、ともにアウェイを駆け巡った友人が同じサポーターと結婚すると聞いたとき、僕が真っ先に思ったのは嬉しさよりも悔しさだった。なぜか知らないが、まず「悔しかった」のだ。思い返してみると、「彼とともにゴール裏で声を合わせる時間を奪われることが悔しかった」という、いわば自分とチームと友人という奇妙な三角関係に勝手に陥ってしまっていたのだ。普通なら彼の幸せを真っ先に祝ってあげるはずなのに、そのときに思ったことは「アウェイこれからどうすっかなあ・・・」ということであり、我ながら苦笑するより他はなかった。もうすぐ彼にも子供が生まれるそうだから、顔を見る機会はもっと減ってしまうだろう。
こうして結婚して、子供が生まれて、守るべきもの、戦う相手、自分とその家族を取り囲むものは確実に増えていく。生きるためのこと、将来のことが優先されるにしたがって確実にスタジアムに足を運ぶ時間は減っていく。応援や観戦のスタイルも変わっていく。でもそれでいい。まずは自分と愛する人を守るのが第一だと思う。フットボールはその次でいい。次に子供をつれてスタジアムに来てくれたときに、お前の、そしてクラブの歴史はまたひとつ齢を重ねる。こんな性格だし、もうしばらく僕は独身貴族でいることだろうから、お前の幸せそうな姿を冷やかしてやるとしよう。その間に僕もチームとともに成長して、一回り大人になった姿を見せるよ。また一緒のところでやんちゃして、戦えたら幸せだ。

そのためにもお前と、お前の愛するひとと、この世に生まれ出る新しい家族を、今は守ってやってくれ。



 



post by イシモリ

01:16

miscellany コメント(0)

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