2019年11月23日
地域リーグ決勝大会(くどいようですが、この呼称で通します)の決勝ラウンド。場所は美しまふくしまのJ村スタジアム。昨年から中1日休養日を置くめっちゃやさしいでしょううっふんなレギュレーションで行われた第2節。東北王者いわきFC対関西の覇者おこしやす京都。すでに勝ち点3づつを挙げている同士。お客さんの間からも「きょうは大勝負だ」「決戦だ」の声が上がる。メディア的な興味も高いのだろう。TVカメラも多数並べられ、行きの電車内では「党首」と、広野駅からのタクシーは「徹さん」と一緒になった(笑)。 早朝の福島県いわき駅。朝はこんなにいい天気だったのに… 試合前。きれいに蘇ったJ村スタジアムを7ヶ月ぶりにながめていると、いわきFCの選手たちが通りかかった。その中に按田頼(コンサドーレ札幌U-18出身)がいた。約束通り来てやったぞ!「水曜日も来てくれてたんスか?」馬鹿言え。こちとら仕事持ちだ。きょうだって有給取って来ているんだ。 たぶん高速道路に乗ると湯本のクラブハウスから片道30分はかからないと思うんだよね。自治体は違えどやはり地元であるいわきFC。意気は高い。対するお京都も過去の対戦成績では2戦2勝。だが、今回は違う。お京都は主将であり守備の要であるCBの内田錬平(コンサドーレ旭川U-15出身)を警告累積で欠いている。試合前、れんぺーくんはいつもとは違いアップウェアを着て、用具を世話したりボール拾いしたり、戦う仲間の練習のお手伝いに回っていた。スタンドから声をかけると「仲間を信じています!」という力強い答え。その表情は硬かった。平日であるにもかかわらず、いわきは前述通り応援するサポーターはたくさん来ている、見るならお京都側。控え室から出てくる選手たちをスタッフや控え選手が一人ひとりタッチで迎える。声もよく出ている。こちらも士気は限りなく、高い。 いわき駅前の横断幕。まさに市をあげての応援体勢だ。 10時45分。試合開始。序盤から双方遠慮はない。様子見なんてことはしない。開始2分で両方ともシュートを放つ。 いわきは…この3人のユニットならばJ2なら通じると思われるほど高品質の、平岡、赤星、バスケス・バイロンの強力3トップが前線をじゃんじゃんかき回す。お京都はエチオピア人のサバンも加えて献身的なプレーをする中盤から、ガーナの五輪代表らしいトップのイブラヒムめがけてくさびを入れるプレーが目立つ。3バックの左CBで188cmのイブラヒムをマークしていたのが183cmの按田だ。ハイ・ボールにはことごとく競り勝ち、グラウンダーのボールであっても相手を自由にはさせない。相当に寒かったので手に汗は握らなかったが、緊張感の高い試合はスコアレスで50分を終える。5分ものアディショナルタイムがあったのは、お京都のGK三宅がいわき選手との交錯で2度ほど傷み治療を受けたからだった。彼の左太ももには幾重にもテーピングが施された。当然控えのGKもアップを始めていたが、果たして大丈夫だろうか。これが懸念通り後半に影を落とすことになる。 前半は感覚的に6:4でいわきが押していたように感じた。地元開催、相手の内田の欠場を加味しての評価だ。実質はやはり五分五分なのだろう。 これは説明が必要だなぁwww。映画「フラガール」を見てくんちぇ。 2日前の決勝ラウンド第1節。いわきは高知ユナイテッドを相手にやはり前半を0-0で折り返した。だがギアを上げた後半はあっと言う間に先制し、光の速さで追加点をも奪い、勝ち点3を挙げている。きょうもそうだった。いわきのシュートを三宅がクリアすると、やはり負傷の影響があったのか、三宅は体勢を立て直せない。続く増崎のシュートもなんとか防ぐが、こぼれ球を左サイドの大外で待っていた日高にねじこまれた。均衡が破れる。お京都ゴール裏にカメラを構えていたメディアたちはここぞとばかりにシャッターを切りまくる。お京都は第1ラウンドを通じ5試合目で初の失点。準優勝した全国社会人大会でも5試合でわずか2失点。後半2分。対いわきでもついに初めての失点を迎えてしまった。 結局、それが決勝点となった。 かつては原発事故対応の職員の住宅が建てられていたスタジアム。 ヒーローが日高なら、按田頼くんは守備の立役者となった。1-0のまま時間が経過するにつれ競り合いはヒートアップする。チャンスはいわきの方が多い。スタンド最前列で見ているれんぺーくんがいないお京都DF陣は、精一杯に身体を寄せてシュートミスを誘う。ハイ・ボールの競り合いも激しい。残り15分を切った頃、刹那のプレーで按田とイブラヒムが交錯し、倒れる。主審がイエローカードを手に近づいてくる。按田だったら累積2枚目。「審判がちゃんと見てくれていない」と、試合前にこぼしていた彼もピーンチ!な、場面で、カードが向けられたのはイブラヒムの方だった。彼はその2分後に交代でベンチに下がってしまう。按田が勝った。 「ひぐまさん、ウチの赤いTシャツ持っていますよね?着てこなかったんですか?」メディア向けインタビューの後、按田がスタンドのひぐまさんを見上げて声を上げる。ああそうだ、バッグの中にいわきFCのTシャツを忍ばせておいた。「昇格決めたら着てやるよ!」明日は着ていくぞ! でも出られるかな? 彼もまた右足を痛めた。 2試合合計勝ち点6とし、2位以内に与えられるJFL昇格へ果てしなき前進を示したいわきFC。彼らの歓喜の瞬間は、ここから3時間後に訪れる 按田頼。名前は「頼」と書いて「アーマー」と読む(うそ)。