本館から出張版『読書の秋』

2007年10月21日

 サッカーにほぼ100%関係のない記事をこちらで一度書いてみたかったので。


 Zaubrerは、中途半端に読書家だったりします。プロフィールに書いていますが、基本的にミステリー好き。ホラーも好き。で、なのに何故か純文学にはまり気味。青春ものや恋愛ものはあまり読まないのですが、質さえよければけっこう読んだりもします。


 と、あまり必要のない自己紹介はこのくらいにして、本題に。

 何だかかなりいきなり寒くなってしまい、季節の移ろいをいまいち上手く知覚できませんが、いつの間にか秋になりました。まだ、秋がどうこう言ってもギリギリセーフでしょう。
 そう、秋という季節になってかなりしばらく経っている気もするのですが、皆さんはどんな秋をお過ごしでしょう?
 スポーツの秋も食欲の秋もその他の色々な秋も、既に十分に読書の秋を過ごしていた方もいらっしゃるでしょう。

 もし、まだこの秋に読書をしていないという方がいれば、残りの秋で是非、読書をして欲しいのです。

 そんなわけで、このエントリーでは、出来る限り色々なジャンルの本を紹介していきたいと思っております。紹介している人間がけっこう偏った読み方をしているので、少々心許ない部分もありますが・・・。

 大目に見てやって下さい。

 では、追記から紹介スタートです。なお、紹介は私が辛うじて紹介できるジャンルまでで、1ジャンル2~7冊(もの凄くアバウトだな・・・)を目安とさせていただきます。


 前振りが長いことも、気にしないでやって下さい・・・。



初回は得意分野「ミステリー」でいきます。


犯人に告ぐ 雫井脩介

連続児童殺人事件―姿見えぬ犯人に、警察はテレビ局と手を組んだ。史上初の、劇場型捜査が始まる

 最初は少しつまらないかも知れませんが、半ばではまったら止まらなくなる警察小説。(主人公を含む)警察同士の意地の張り合い、責任のなすりつけ合いがなかなか面白い。読み手を驚かせる特別なトリックがあるわけではなく、非常に読みやすい刑事物サスペンスに仕上がっています。人間ドラマも充実していて。
 作者の雫井脩介は、『クローズド・ノート』の作者でもあります。元々、恋愛小説よりもミステリーサスペンスの書き手のようです。こちらのジャンルの著作がほとんどなので。
 この作品も、既に映画化が決定しています。最近文庫版(上・下巻)も出版されました。


天使のナイフ 薬丸岳

殺してやりたかった。でも殺したのは俺じゃない。妻を惨殺した少年たちが死んでいく。これは天罰か、誰かが仕組んだ罠なのか。「裁かれなかった真実」と必死に向き合う男を描いた感動作!第51回江戸川乱歩賞受賞作

 テーマが「少年犯罪」というだけあって、それなりに重い内容ではあります。作者の綿密な下調べを元に書かれているため、重厚感もあります。少々書き込み不足なところもありますが、展開が早いので飽きが来ない。
 こちらも、ミステリーの要素と言うよりは人間ドラマに重きが置かれているようです。ミステリーを読み慣れていて、読みながら色々と勘ぐってしまう人なら、結末の前に犯人が分かってしまうかも。まあ、それも面白みの一つと捉えて下さい(?)。


GOTHーリストカット事件 乙一

森野が拾ってきたのは、連続殺人鬼の日記だった。学校の図書館で僕らは、次の土曜日の午後、まだ発見されていない被害者の死体を見物に行くことを決めた…。触れれば切れるようなセンシティヴ・ミステリー

 死体や殺人犯にやたらと強い興味を示す、けっこうやばい高校生2人組が何かやらかしたり巻き込まれたりするお話。一応、ミステリーです。意外と、先が読めません。主人公たちのキャラクターもいいですし、異常犯罪者などの描き方も妙にすっきりしているので、案外恐怖感はないかも(というのは私の主観らしく、知り合いには十分恐いと言われました)。
 短篇連作形式(同じ主人公が出てくる短篇集)で、一つ一つの話は短め。ささっと読んで面白い作品です。


ラッシュライフ 伊坂幸太郎

解体された神様、鉢合わせの泥棒、歩き出した轢死体、拳銃を拾った失業者、拝金主義の富豪―。バラバラに進む五つのピースが、最後の一瞬で一枚の騙し絵に組み上がる。ミステリを読む快感と醍醐味がここに!新潮ミステリー倶楽部賞受賞第一作

 文体もポップでテンポがよく、すらすら読めます。群像劇なので出てくる人物は多めですし、誰が主人公なのか解らないのですが、すらすら読んでいるうちに人物の名前も頭にはいるので問題なし。紹介に書かれているとおり、快感を得ることの出来る楽しい小説です。殺人事件は起きますが、実際のところ事件よりもピースが組上がっていく快感の方がメイン。
 伊坂幸太郎の本には、彼の書いた別の作品と共通の登場人物が出てくることがよくあります。そこも見所。もし気に入ったら、彼の別の著作も読んでみて下さい。


姑獲鳥(うぶめ)の夏 京極夏彦

この世には不思議なことなど何もないのだよ―古本屋にして陰陽師が憑物を落とし事件を解きほぐす人気シリーズ第一弾。東京・雑司ケ谷の医院に奇怪な噂が流れる。娘は二十箇月も身籠ったままで、その夫は密室から失踪したという。文士・関口や探偵・榎木津らの推理を超え噂は意外な結末へ

 妖怪話やら宗教話やらと雑学満載の昭和ミステリー、「京極堂シリーズ」の1巻。もの凄く分厚いです。『姑獲鳥…』はまだましな方。
 古本屋の店主であり、憑き物落としもするという「京極堂」なる人物が、一見魑魅魍魎の類の仕業にしか見えないような事件を解決していきます。その過程で彼が語る雑学の量は半端じゃありません。だから本が分厚くなるのですが。
 その他のキャラクターも魅力的な人物ばかり。やたらと事件に巻き込まれる貧乏作家に、華族出身の奇人探偵、強面で妙な正義感があり、常に暴走している刑事など。癖のあるキャラクターの使い方が上手いので、読みづらいのに読んでしまえる面白さがあります。


すべてがFになる 森博嗣

14歳のとき両親殺害の罪に問われ、外界との交流を拒んで孤島の研究施設に閉じこもった天才工学博士、真賀田四季。教え子の西之園萌絵とともに、島を訪ねたN大学工学部助教授、犀川創平は一週間、外部との交信を断っていた博士の部屋に入ろうとした。その瞬間、進み出てきたのはウェディングドレスを着た女の死体。そして、部屋に残されていたコンピュータのディスプレイに記されていたのは「すべてがFになる」という意味不明の言葉だった

 お嬢様学生と変わり者の助教授が理系トリックを暴いて事件を解決していく「S&Mシリーズ」第1巻。著者が工学博士であり、東野圭吾よりも理系のカラーが強く出ているミステリーです。
 この作品に関して言えば、結末はかなり衝撃的。壮大なトリックを用いています。
 犀川先生に思いを寄せる萌絵の行動も見どころ。いわゆる「キャラ萌え」をおこしやすい小説らしいです。お気に入りのキャラクターを見つけてみるのもいいかも。


ささらさや 加納朋子

事故で夫を失ったサヤは赤ん坊のユウ坊と佐佐良の街へ移住する。そこでは不思議な事件が次々に起こる。けれど、その度に亡き夫が他人の姿を借りて助けに来るのだ。そんなサヤに、義姉がユウ坊を養子にしたいと圧力をかけてくる。そしてユウ坊が誘拐された!ゴーストの夫とサヤが永遠の別れを迎えるまでの愛しく切ない日々。連作ミステリ小説。

 殺人事件の起きないミステリー。気の弱いサヤが、佐佐良の街でちょっとした事件に巻き込まれながらも元気に生きていく姿を、亡くなった夫の目線で書いています。
 サヤがおろおろする様を見かねて、他人の姿を借りて事件を解決しに来る夫。「ちょっと小ずるい」犯人を、笑って許すことの出来るサヤ。ご都合主義でも何でもいいのです。
 「ばかっサヤ」という夫の口癖は、とても心地いい響きで心に残ります。


post by zaubrer

22:51

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